表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

3/18

第3話 風呂場は危険地帯です

 問題が発生したのは、同居生活が一週間を過ぎた頃だった。


 俺は一人暮らし用の1LDKに住んでいる。

 当然、風呂もトイレも一つしかない。

 クロハは他の人間には見えないが、物理的には存在している。


「お前が先に入れ」

「いや、クロハが先でいいよ」

「私は死神だ。入浴の必要はない」

「でも、汗はかくだろ。ウォーキングとか」

「……確かに、人間の体に近い状態で顕現しているから、多少は」


 結局、俺が先に入ることになった。


 風呂から上がると、クロハがソファに座っていた。

 ローブを脱いで、下に着ている黒いワンピースのような服だけになっている。


「……っ!」


 俺は思わず目を逸らした。


 ワンピースは肩が出ていて、白い鎖骨が眩しい。

 華奢な肩、細い腕、そしてほのかに膨らんだ胸元。

 控えめだが、確かにそこにある。


 ワンピースの裾は膝上で、すらりと伸びた足が露出している。

 白くて細い足。

 太ももから膝にかけてのライン。

 足首の細さ。


 湯上りの俺より、なぜかクロハの方が色っぽく見える。

 いや、クロハは風呂に入っていないから湯上りじゃないんだけど。


 いやいやいや。

 何を見てるんだ俺は。

 相手は死神だぞ。しかも見た目は十代後半。

 俺は三十四歳のおっさんだ。犯罪だろ、これ。


「どうした。顔が赤いぞ」

「い、いや、なんでもない……」

「風呂で熱を出したか? だから長風呂は良くないと言っただろう」

「そういうんじゃなくて……」


 クロハは首を傾げながら、俺の額に手を当てた。


 ひんやりとした手のひら。

 顔が近い。紫色の瞳が間近にある。

 吐息がかかる距離。

 いい匂いがする。花のような、少し冷たい香り。


 俺の目線が、つい下に行ってしまう。

 首筋から、鎖骨へ。

 鎖骨から、胸元へ。


 ワンピースの胸元は、少しだけ開いている。

 そこから、白い肌が覗いている。

 控えめな膨らみの、谷間のような影が、わずかに見える。


 ――だめだ。見るな。


「熱はないようだが……」

「だ、大丈夫だから! ほら、クロハも風呂入ってこいよ!」

「……? 分かった」


 クロハは不思議そうな顔をしながら、風呂場へ向かった。

 その後ろ姿を見送る。


 背中のラインが、ワンピース越しに見える。

 細い肩甲骨。くびれた腰。そして、丸みを帯びた小さなお尻。

 足の動きに合わせて、ワンピースの裾が揺れて、太ももがちらりと見える。


 俺は深呼吸した。

 落ち着け。相手は死神だ。人間じゃない。

 年齢の概念すらないかもしれない。

 そう、見た目に惑わされるな。


 ……と言っても、あの容姿で同居は刺激が強すぎる。


---


 しばらくして、風呂場から声が聞こえた。


「鈴木」

「な、なんだ?」

「背中が届かない」

「……は?」

「洗ってくれ」


 俺は固まった。


「い、いや、無理! 絶対無理!」

「なぜだ」

「だって、お前、裸だろ!?」

「人間の体を洗うのに、服を着たままでは濡れるだろう」

「そういう問題じゃなくて!」

「健康のために、背中はしっかり洗う必要がある。お前が言ったことだぞ」

「俺は自分のことを言ったんだよ!」


 風呂場の扉が少し開いた。

 クロハの顔だけが覗いている。


 銀色の髪が濡れて、頬に貼り付いている。

 水滴が、首筋を伝って流れている。

 肩が見える。白い肌に水滴が光っている。

 鎖骨のラインがくっきりと浮かび上がっている。


 湯気の向こうに、うっすらと体のシルエットが見える。

 華奢な肩。細い腕。

 そして、控えめだが確かに存在する胸の膨らみ。


 すりガラスではないから、見ようと思えば見えてしまう。

 俺は必死で視線を逸らした。


「……頼む」

「っ……!」


 その上目遣いは反則だろ。

 濡れた髪が頬に張り付いて、なんとも言えない色気がある。

 紫色の瞳が潤んでいて、まるで誘っているように見える。


 ――いや、誘ってないだろ。クロハにそんな意図はないはずだ。


 でも、俺の理性が悲鳴を上げている。


「む、無理だって! 俺、外で待ってるから!」


 俺は玄関まで逃げた。

 心臓が爆発しそうだ。

 過労死しかけた時より、確実に心拍数が上がっている。


 ……俺は何と戦っているんだ。


 風呂場からは、水音が聞こえてくる。

 シャワーの音。

 クロハが体を洗っている音。


 想像してしまう。

 あの白い肌が、湯に濡れている。

 銀髪が、背中に張り付いている。

 華奢な体が、無防備に晒されている。


 ――だめだ! 想像するな!


 俺は頭をガンガンと壁に打ち付けた。

 煩悩退散。煩悩退散。


---


【次回予告】

「監視任務だ。離れるわけにはいかない」

「一緒に寝ればいい」

クロハの寝巻き姿に、俺の理性は限界を迎える——

そして、魂の輝きの秘密とは?


【作者からのお願い】

もし、「おもしろい」「続きが気になる」と思っていただけましたら、ブックマーク登録をしていただけるとうれしいです。また「いいね」や感想もお待ちしています!

また、☆で評価していただければ大変うれしいです。

皆様の応援を励みにして頑張りますので、よろしくお願い致します!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ