第12話 俺の理性は、もう限界だ
……でも、同居生活のドキドキは相変わらずだった。
というか、日に日にエスカレートしていた。
ある夜のこと。
俺が寝室でベッドに入ろうとすると、クロハがすでに俺のベッドに入っていた。
薄いキャミソール姿で。
「!?」
「今日は寒い。一緒に寝る」
「いや、待て! お前のベッドで寝ろ!」
「そっちは一人用だ。ここの方が広い」
「いや、でも……!」
クロハは、ぬくぬくと布団に包まっている。
キャミソールの肩紐がずり落ちていて、白い肩が露出している。
髪がベッドに広がっていて、銀色の海のようだ。
……美しい。
反則的に美しい。
「来い」
「え、いや、その……」
「寒いから、早く来い。お前の体温が欲しい」
俺は固まった。
クロハは純粋な目で俺を見ている。
体温が欲しい。それだけ。変な意味はない。
分かっている。分かっているんだが。
俺は三十四歳の大人。
クロハは見た目十代後半の美少女。
これは、犯罪ではないのか。
いや、クロハは死神だ。三千歳だ。
俺の方が年下だ。
でも、見た目は……。
「早く来い」
クロハが手を伸ばしてきた。
その動きで、布団がずれて、キャミソールの胸元が大きく開いた。
控えめな膨らみの谷間が、はっきり見える。
「っ……!」
俺は天井を見上げた。
落ち着け。落ち着け。俺は大人だ。
三十四歳の、社会人だ。
こんなところで理性を失ってはいけない。
「……鈴木?」
「い、今行く……」
俺は覚悟を決めて、ベッドに入った。
すぐさま、クロハが抱きついてきた。
「!?」
「温かい……」
クロハが俺の胸に顔を埋めた。
細い腕が、俺の体を抱きしめている。
足が、俺の足に絡まってきた。
体全体が、クロハに密着している。
キャミソール越しに、胸の柔らかさが伝わってくる。
太ももの滑らかさが、俺の足に触れている。
そして、クロハの体がひんやりしていて、気持ちいい。
でも、それ以上に、柔らかくて温かい。
……これは、まずい。
俺の体が、反応してしまう。
クロハに気づかれたら、どう説明すればいいんだ。
「……鈴木」
「な、なんだ」
「お前、心臓がうるさいぞ」
「……」
「緊張しているのか?」
「い、いや、別に……」
クロハはじっと俺を見上げた。
紫色の瞳が、俺を捉えている。
「……お前の魂、すごく輝いているな」
「……」
「私と一緒に寝ると、魂が良くなるらしい」
違う。
俺がお前の体を感じて興奮してるから、輝いてるだけだ。
これは魂とか関係ない。
「これからも毎晩、一緒に寝た方がいいかもしれないな」
「それは、ちょっと……!」
「なぜだ。お前の魂のためだ」
「俺の精神衛生が持たない……」
「……よく分からないが、まあいい。眠れ」
クロハは目を閉じた。
俺は一晩中、眠れなかった。
---
また別の日。
俺がリビングでゲームをしていると、クロハが後ろから覗き込んできた。
「何をしている」
「ゲームだよ。暇つぶし」
「ふむ。私もやりたい」
「え? やったことあるのか?」
「ない。教えろ」
クロハは俺の隣に座った。
いや、隣というか、ほぼ俺の上に乗っているような位置だ。
「ちょ、近い、近い!」
「見えないから、近くに座る必要がある」
「いや、でも……!」
クロハの体が、俺の体に密着している。
太ももが、俺の太ももに触れている。
腕が、俺の腕に当たっている。
そして、体を乗り出すたびに、クロハの胸が俺の腕に当たる。
柔らかい。
控えめだけど、確かに柔らかい。
「……っ」
「どうした。続けろ」
「い、いや、ちょっと集中できなくて……」
「なぜだ」
なぜって、お前の胸が俺の腕に当たってるからだよ!
とは言えない。
クロハは教えを乞うように、顔を近づけてきた。
顔が近い。吐息がかかる。
いい匂いがする。
「……お前、顔が赤いぞ」
「え、いや、これは……」
「熱があるのか?」
クロハが俺の額に手を当てた。
顔がさらに近づく。
紫色の瞳が、俺を見つめている。
長いまつ毛が、キラキラしている。
「熱はないようだが……」
「いや、違うんだ。これは……」
「お前の魂、今すごく輝いているぞ」
「……」
「私と一緒にゲームをすると、魂が良くなるらしいな」
違う。
お前の体が密着してるから興奮してるだけだ。
「これからも毎日、一緒にゲームしよう」
「それは……ちょっと……」
俺は深呼吸した。
落ち着け。落ち着け。
俺は大人だ。平常心を心がけろ。
---
【次回予告】
「人間の服を着てみたかった」
女子高生のような恰好のクロハ。
そして、クロハの寂しげな告白——
「お前といる生活に、慣れてしまった。
任務が終わったら帰らなければならないのに」
【作者からのお願い】
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