論理的な女、論女、婚約破棄をする王太子様を論破してしまう
「エミリア、お前との婚約は破棄だ!何故なら私はマーガレットを愛してしまったからだ!真実の愛は尊い!これを断ることは許されない!」
王太子殿下であり、私の婚約者であるチャールズ様が突然貴族学校の卒業式で宣言をされた!
「分かっているぞ屁理屈に長けるエミリアよ、お前はこんな場で言うことが相応しくないとか何とか言うことが!馬鹿め、この場でもって、お前の愚かさを粉砕し、皆から祝福されるために、あえて私は述べているのだ!その貴族的な主張など、王太子である私には通じない!」
おお?珍しくチャールズ様が頑張っているでは無いか!
私は驚いた、なるほど確かに愛は尊いのだろう!ここまで何も考えていないチャールズ様が、いつになく弁を発揮できているのだから……
「エミリア反論があるのなら言ってみろ!無いのなら、今まで口うるさい私が悪かったです、そしてマーガレットとの婚約を祝福しますと宣言したらどうだ!?」
……なるほどこれほど今まで色々なことを色々言われたことに根に持たれているのですね……
別に私も自分に関係無い範囲でしたら無視していたのに、
私にも一緒に変なことをさせようとするから断っていただけなのに……
きっとそれに乗らない私が嫌いだったのでしょうね……
まぁいいでしょう……
「分かりました、婚約破棄は結構です、どうぞ喜んで、ところで1つだけ疑問を聞いても良いですか?」
「わっはっは、構わんぞ述べてみよ!」
「王太子様は真実の愛と仰いましたが、真実の愛とは何でしょうか?」
「そのようなことも分からぬのか?意外とそちは無知な女よ!真実の愛は真実の愛である!」
「……それってパンとは何ですか?と聞かれてパンはパンですって言うようなもので、答えになっていませんよ?」
「馬鹿者!パンとはあの物体の名前であって、それ以上説明しようがないではないか!」
「なるほど、その通りですね、でも真実の愛ともなると形が無いものですから説明して下さいよ……」
「真実の愛とは感じるものである!そちのように理屈しか言えない女では分からなくて当然よ、だから私に愛されなかったのだ!」
「……なるほど、別に愛されたかったわけではないのですが、感じるものってことでいいのですね?」
「その通りだ!真実の愛とはそこにあると感じるものなのだ!分かったか!?」
「分かりました!」
「ふふ、口うるさいそちも今回ばかりは真実の愛の前に屈したようだな!わっはっは!」
「ところで質問なのですが、その感じるとは自分が感じたらいいのですか?」
「?お前は何を言っているのだ?」
なるほど、チャールズ様は、私に散々負かされているからか、慎重ですね。別にトラップをしかけたわけではないのですが……
「いや大事なことじゃないですか、自分が感じればいいのか他に条件があるのかの違いは……」
「だから感じればいいのだ!」
「つまり自分が感じたらってことですよね?」
「だから感じればいいんだと言ってる!」
「そこまで言いきるってことは自分が感じればいいってことですね?」
「くどいぞ!」
「では認められたということにします!」
「まったくなぜこだわるのか理解できんわ!」
「では自分が感じたら真実の愛だと言うのでしたら、仮に私が王太子様に真実の愛を「感じていた」としたら、王太子様はそれを受け入れるってことなんですか?」
「そんなわけないだろ馬鹿か!お前は振られたんだざまぁみろ!」
子供か!と言いたいが、まぁいいでしょう……
「では自分だけ感じればいいってものでもないじゃないですか、真実の愛ってなんですか?」
「……真実の愛とは共に愛し合うことだ!」
「なるほど、2人が同時に感じろってことですか?」
「そうだ!2人して愛し合うことが真実の愛だ!」
「恐れいりました、真実の愛とは深いものだったんですね!」
「わっはっはーついについにエミリアに勝ったぞ!これが愛の力だ!」
「おかしくないですか?」
「何がだ?負け惜しみか?」
「いや今愛の力と仰いましたけど、マーガレット嬢一切関係せずに、1人だったじゃないですか、それ愛の力なんです?」
「……愛が励みになったからこそ勝てたのだ!恐れ入ったか!」
「なるほど、では愛があれば何でも叶うのですか?」
「その通り!愛があれば世界を救うのだ!」
「なるほど!でも王太子様とマーガレット嬢が真実の愛だったとしても、他の人には関係無いですよね?」
「なぜだ?真実の愛だぞ!」
「だからそれって2人だけの世界じゃないですか、何で世界を救うんです?」
「だから真実の愛が素晴らしいから感動して救われるのだ!私達が祝福されるのだ!」
「それって、お二人の喜びってだけですよね、他の人からしたら関係無いですよ?」
「なんて冷たい女なんだ!潔く祝福したらどうだ!」
「だーかーらー、王太子様が自分とマーガレット嬢の2人が真実の愛を感じているだけって言ったじゃないですか、こんなの、2人が2人のためだけに思っていることに過ぎないんで、それ以外の人には関係無いでしょ」
「無礼者!愛は祝福されるものなのだ!」
「何で個人的な2人のことを祝福しないといけないのかって話ですよ!」
「何て貧相な女だ!強欲!ケチ女!」
「いやいや関係無いことを祝福しろって言い張る姿勢のほうが強盗ですよ」
「私は王太子だぞ!無礼者が!」
「つまり王太子様であるというのであれば、王太子として意味がある行動でしたら支持されますけど、マーガレット嬢とのお二人の事は個人の事に過ぎないから、それ持ち出しても意味ないですよね?」
「……王太子が愛したから尊いのだ!」
「あれ?最初の真実の愛の定義とはズレていますよね、別に王太子だからとか関係無く、極論そこらの平民の2人が愛し合っても真実の愛って言い方でしたよね?」
「馬鹿者!王太子と平民を同じにするな!」
「つまりそれって、王太子だから優遇されるべきっていう幼稚な主張じゃないですか」
「それがどうした!王太子だから正しいんだ!」
「お前の負けだ!」
「父上!?」
「さっきから聞いていて、お前も頑張っていたから口を出さなかったが、これ以上喋らせては王家の恥、結婚は認める、ただし王太子ははく奪だ!後は好きにせい、ただし王家の支援は無いと思え!」
「あのですねハッキリ言いたいことがあります!」
何か宣言するのはマーガレット嬢では無いか……
「何だ申してみよ、言っておくが王家から結婚式は開いてやらぬぞ」
「いえ、そんな厚かましい要求をする気はありません、そうではなく、私も100年の恋が冷めましたわ……」
「え?」チャールズ様だけでなく、私まで思わず声に出てしまった……無駄にぴったり一致するなんて嫌だなぁ……
「だって、王太子様でなくなるだけならまだしも、こんなにもエミリア様に論破されて、カッコ悪いったらありゃしない、普段のカッコよさも色あせてしまいましたわ……」
……真実の愛とは一体……




