盗賊団が村を襲撃! おっさんのチート農業スキルで反撃開始!
「……うん。今日の作物の出来も上々だな……」
朝日を浴びて畑を見渡す孝一。ふっくらと実った麦、キラキラ輝くトマト、根菜も土から顔をのぞかせている。
レミィは井戸のそばで水汲み、アリスは鶏の餌やりをしている。昨日の嫉妬騒動はまだ尾を引いているらしく、アリスはレミィを見るたびに口を尖らせていた。
「……レミィ、そこ水こぼれてる」
「えっ、あっ、ごめんなさい!」
「ふん……巨乳が重くてバランス取れないんじゃないの……」
「ちょっと、それ関係ないでしょ!?」
「あるもんっ!」
孝一はため息をついた。
(……平和なんだけど、うるさいなあ……)
そんな日常を壊したのは、畑に走ってきた一人の村人だった。
「た、大変です! 森の向こうから、武装した集団が……!」
「武装? まさか……」
レミィが顔をしかめる。
「……盗賊団よ。王都の指名手配にも名前があったはず。恐らく、創生の噂を聞きつけて……」
「……うわぁ……勘弁してよ……」
孝一は頭を抱えた。
「俺、戦いたくないって何度も……」
「でも……おじちゃんが狙われてるんだよ?」
アリスの声は震えていた。小さな手で孝一の服を握る。
「わたし、いやだ。おじちゃんが傷つくの……!」
孝一は一つ、深呼吸した。そして決めた。
「……わかった。やるよ」
「お、おじちゃん……!」
「でも俺は戦士じゃない。だから――畑を使う」
「畑!?」
レミィが目を見開く。
「《創生》で作ったこの畑。種も水も、地質すら操作できる。使いようによっては――戦場にもなる」
その言葉に、アリスの目が輝いた。
***
夕刻。森の入り口に現れたのは、10人程度の粗暴な男たち。鎧もボロボロ、だが手にした斧や剣は確かな殺意を帯びていた。
「へっへっへぇ……ここが“創生の英雄”の村か……」
「チート持ちをぶっ殺して、スキル奪ってやるぜ……」
彼らが進み出たとき、地面から“何か”が飛び出した。
「うおっ!? なんだこのツル!?」
足に絡みついたのは、巨大化させたジャイアントバインのツル。次の瞬間、地面が隆起し、泥の中から鶏の群れが飛び出した。
「な、なんで鶏!?」
「俺の《創生》で改良した闘鶏だ」
孝一の声が響く。
「目、突けー!」
「コケーー!!」
叫びながら飛び掛かる巨大な鶏に、盗賊たちは一斉に叫んで逃げ出した。
「お、覚えてろおおおお!!」
「ははっ、逃げ足だけは速いな……」
孝一は笑おうとしたが、そこへ現れたのは――
「ふふ、やっと見つけた」
黒衣の女。盗賊団の頭目、バラリア。凄腕の魔法剣士で、王都でも手がつけられない女傑だ。
「《創生》のスキル、渡してもらうわよ?」
「……悪いけど、断るよ」
「なら、死になさい!」
バラリアが放った火の刃が、孝一に向かって一直線に飛ぶ――その時だった。
「おじちゃんに触らないでぇぇぇ!!」
叫んだアリスの体が光に包まれた。
「こ、これは……!?」
眩しい魔力の奔流が、空を貫いた。
「まさか、精霊魔法!?」
レミィが絶句する中、アリスの背後に現れたのは――巨大な風の精霊。竜のような形をしていた。
「風よ、護れ。我が大切な人を――!」
竜が吠えた。その風が、バラリアの魔法剣をあっさりと吹き飛ばし、地面に叩きつけた。
「ぐあっ……!」
重傷を負ったバラリアは、立ち上がることもできずに退却を余儀なくされた。
アリスは震えながら、孝一の胸に飛び込む。
「……おじちゃん、無事で……よかった……」
「アリス、おまえ……精霊術師だったのか……?」
「わかんない……でも、おじちゃんを守らなきゃって思ったら……勝手に……」
孝一はアリスの頭を優しく撫でた。
「ありがとう。すごく、かっこよかったよ」
その言葉にアリスの顔は真っ赤になった。
***
その夜、村は宴に包まれた。盗賊団を撃退し、村を救った孝一は“創生の英雄”としてますます注目を浴びる。
「孝一さん、すごかったわね!」
レミィが赤ら顔で寄ってくる。
「ま、まぁ、あれは偶然というか、鶏が強かったというか……」
「違うもん! おじちゃんがかっこよかったから、わたし、力出せたんだもん!」
アリスがずいっと前に出てくる。
「ちょ、ちょっとアリスちゃん!? 近すぎ――」
「おじちゃんはわたしのなんだからね!!」
「やれやれ……」
孝一は再び空を見上げた。
(……静かに暮らしたいって言ってるのに、どんどん目立ってるよ……)
だが、内心――少しだけ誇らしい気持ちもあった。
面白いと思っていただけましたら、
感想、高評価、ブクマ登録をよろしくお願いいたします!
ブックマ登録しってっね♪
ブックマ登録しってっね♪
テイッ!