表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

10/10

おっさんよ、神話になれ


王都・深夜。


アリスはひとり、王宮中庭の小道を歩いていた。


「……おじちゃん、最近ノワールさんとばっかり……」


寂しげに下を向いた、その瞬間。


──カシャ。


背後の空間が“裂けた”。


「……っ!」


アリスの体が浮く。透明な触手のような魔力の網に絡め取られる。


「動かないことをおすすめします。聖巫女候補は、なるべく無傷で搬送したいので」


漆黒の仮面をつけた、異様に細身の暗殺者。目は人間とは思えない光を放っていた。


「離して……おじちゃ──っ!」


その叫びに、反応する声があった。


「……俺の家族に、手ぇ出してんじゃねぇよ」


ズン──!!


次の瞬間、空間ごと“割れた”。


真夜中の空に、金と蒼の光が“創られる”。


──孝一がいた。


***


「へぇ……これが、あんたのチート能力ってやつか」


仮面の男は不敵に笑いながら手を構える。


「“創生魔法”、その解析と再現のために、巫女を頂こうと思ったが……予定変更だ」


刹那、殺気。


仮面の男の背後から、十数本の“闇の刃”が展開され、孝一に向けて発射される。


「アリスは返してもらう!」


孝一が叫び、右手を振る。


その瞬間、空間が「書き換えられた」。


バリバリッッッッ!!!


まるで刃が“生まれる前”に戻されたように、影の魔法が蒸発する。


(あれは……創生じゃない……)


アリスは目を見開いた。


──孝一の背中から放たれる魔力は、命の“上位”にある概念そのもの。


「……創生式・神代発展術式、第零番──“始原の記述”」


孝一の足元に、淡い白金の紋章が浮かぶ。


「無から、有を記す。存在を、構成する基礎を作り直す……これが、俺の新しい力だ」


──創生から、創造へ。

神の記述領域に踏み込む、絶対的な“創造力”。


仮面の男が怯んだ瞬間、孝一は飛び込む。


拳に力をこめ、魔力を“凝縮”させる。


「さっさと消えろ。お前にこの世界は、記す価値もない!!」


ドゴォッッ!!


次の瞬間、王宮の壁ごと吹き飛ばされて仮面の男は消えた。


(完全には倒せなかったが……データは取らせなかった)


孝一は息を吐き、地面に降りる。


震えるアリスをそっと抱きしめた。


「怖かったな……もう、大丈夫だ」


アリスはぼろぼろと涙をこぼす。


「おじちゃん……ありがとう……ありがとう……!」


その様子を、建物の影からノワールが静かに見ていた。


唇をきゅっと噛み、呟く。


「……勝てません。あの感情には、今の私じゃ」


だがその瞳には、ほんのり熱が宿っていた。


(でも、想いを伝えることは、やめません)


***


数時間後、騒ぎも収まり、ミルフィリアが大浴場で暴れていた。


「またそなた! そなたばかりヒロインと抱き合って! ちゅーしそうになって!」


「いや、してないって言ってんだろ!?」


「ノワールに先越されて我は満足できぬ! ……キスイベント早く用意せよ!!」


「なんでイベント管理者みたいなこと言ってんだよ王女様!!」


その横で、レミィがぼそっと呟いた。


「……でも、今の孝一さん、ほんとに英雄っぽくなってきたね」


レオナも、口元に微笑を浮かべる。


「だけど、あいつの“静かに生きたい”って夢、ますます遠ざかったな」


ヒロインたちがそれぞれに思いを抱くなか、王都の空に、まだ誰も気づかぬ“黒い影”が広がっていた――。




面白いと思っていただけましたら、


感想、高評価、ブクマ登録をよろしくお願いいたします!



ブックマ登録しってっね♪

ブックマ登録しってっね♪


テイッ!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ