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おっさん、異世界で幼女を拾う

「……ふぁい……お疲れさまです……」


口癖のように呟いたあと、日向孝一(46歳)は書類を抱えたまま意識を手放した。


長年勤めた営業会社。激務とパワハラと、休む間もないスケジュール。その日も夜11時の退社で、会社を出たときには足元もふらついていた。気づいたときには、真っ白な空間に立っていた。


「……まさか、これが……地獄?」


『違います。こちらは【次元管理局】です』


目の前に現れたローブの少女――いや、よく見ると下半身が浮いている。いわゆる女神っぽい存在だろうか。


『あなたは過労によって死亡しました。しかし、あなたの魂は非常に安定しており、次の世界へと転移が許可されました』


「……転移、って……ああ、よくあるアレですか……」


『そうです。あなたには特別に一つだけスキルを与えます。』


──提示されたスキルは《創生ジェネシス》。


あらゆるものを生み出す力。それは、農作物や動物、鉱石ですら生成できるという万能チートだった。


「……できれば、静かに暮らせる場所でお願いします……目立つのは苦手なので……」


その願いが通じたのか、転移先は辺境の小さな村の近く、誰も来ない深い森の中だった。


***


「……ん……あれ? ここ……森?」


小鳥のさえずりと冷たい空気。足元には柔らかな草。見上げれば、木々の間から差し込む朝日。


そして……かすかに、すすり泣く声が聞こえた。


「……?」


音のするほうへ歩いていくと、木陰に小さな少女が座っていた。銀色の髪、尖った耳。ぼろぼろの服。エルフだろうか?


「どうしたんだ……お嬢ちゃん」


「ひっ……こ、来ないでっ!」


怯えた瞳。腕に傷。痩せ細った体。


「俺は怪しい者じゃないよ。……いや、怪しいか。おじさん、こう見えて社畜上がりなんだ」


「しゃちく……?」


「まぁ、気にしなくていい。……お腹、空いてるだろ」


そう言って、手を広げる。念じれば、空間からホカホカのパンとスープが現れた。スキル《創生》の力だ。


少女はしばらくためらった後、震える手でパンを掴み、むさぼり食べた。


「……うまい……」


「そりゃ良かった」


「……わたし、アリス。……捨てられたの。父さまも、母さまも……もう、いないの」


涙をこぼす幼い頬に、孝一は静かにハンカチを差し出した。


「……じゃあ、しばらく一緒にいるか? 俺は一人暮らしに慣れてるからな」


「……ほんとに? おじちゃん、わたしを捨てない?」


「捨てるわけないだろ。……ああ、でもな。俺、あんまり頼りにならないおっさんなんだ。地味で、声もボソボソで……」


「そんなの、ぜんぜんいいよ!」


にっこり笑うアリス。その笑顔に、少しだけ孝一の心がほぐれるのを感じた。


***


こうして始まった、46歳のおっさんとハーフエルフの幼女との静かな異世界生活。最初は畑を耕し、動物を育て、村の人々に作物を配った。すると「奇跡の農作物」と噂され、少しずつ人が集まってくる。


そんなある日、村を訪れた一人の少女――豊満な胸を揺らす赤髪の魔法使い・レミィが言った。


「……あなたが“創生の英雄”ですか? お願いです、私を、あなたの元で働かせてください!」


その日から、アリスの嫉妬の日々が始まるとは、孝一はまだ知らなかった。




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