表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

9/10

第9話:“アイテム効果2倍”の衝撃

 静まり返った処刑場跡に、かすかな風の音だけが残っていた。


 黒焦げになった地面、爆風で転がった兵士たち。もはや反撃の意思すら見せないその姿を、

 オルテガは見下ろしていた。


「……一滴も魔力を使っていない。なのに、これか」


 彼は腰に下げた道具袋に視線を落とす。中身は変わっていないはずだ。だが、“性能”がまるで違っていた。


――いや、正確には、《引き出す力》が変わっていた。


 アイテム士の基本スキル、《使用》は、本来は定められた効果を“正確に”発動させるためのものだった。


 だが今の彼には、それ以上の情報が流れ込んできている。


 例えば、閃光石。


 本来なら目くらまし程度の効果しかないが、彼が手にした瞬間――


【効果強化:閃光石】

通常の2倍の照度。視覚遮断効果:10秒 → 20秒

付随効果:発熱性、爆風範囲拡大


「ふむ……効果が“倍加”している、ということか」


 道具の中身を理解する知性と、即応する技術。それらが、彼の中で一気に噛み合った。


 新たなスキル《アイテム効果二倍》。


 これは単なる補助能力ではない。既存の道具の枠組みを超え、効果の“限界値”を引き上げる


――言い換えれば、《道具を魔法に変える力》だ。


 そこには、かつての“荷物持ち”の影はなかった。


 夜の森を抜ける途中、彼はふと立ち止まり、道具袋の中から古びた保存食を取り出した。干し肉と硬いパン――栄養はあるが、味気ないものだ。


 ひと口かじった瞬間、スキルが発動した。


【効果強化:保存食】

回復量:2倍

腐敗耐性:強化

効果時間:30分 → 60分

一時的スタミナ上昇:+15%


「……ふむ。これは便利だ」


 地味だが、確実に“生存力”が上がっている。


 オルテガは微笑み、呟いた。


「アイテムとは、命を繋ぐ知恵の結晶。人の歴史そのものだ。……ならば」


 “アイテム士”という職業に、誰もが軽んじたその名前に――今、革命が始まる。


「この力で、道具の価値を証明しよう。“進化”は、ここからだ」


 冷たい夜風が、焚き火のように揺れる彼の心を包み込んでいた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ