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21.地獄の自室


 熱で朦朧としていた意識も時間が経つことでマシになってきたが、今の状況は熱でしんどいほうがよっぽどよかった。


 謎に怒りながら仁王立ちの幼なじみの菱原。見舞いに来た妹の友達、三嶋由香里は正座。俺は仰向けで寝っ転がっている謎の空間。空気は最悪だった。


「お兄さん、どうしましょうか……」

「……」


 耳打ちされたが何も答えることが出来ない。なにしろあいつが怒っている理由がわからないうえに、変に話すと誤解もさらに深まりかねないという懸念があった。


 そして菱原の方はこちらに来たかと思うとおもむろにベッドに腰掛ける。結構な勢いだったので俺の身体は軽く跳ねた。


「まずさ、そいつ誰?」

「い、妹の友達……」

「なんで妹の友達が見舞いに来るの?」

「それは……」

「なんで詰まるんですか! 普通に話していいことですよね!?」


 いくら悠衣來に世話になっているとはいえここまでするのは普通じゃないからだよ、とはさすがに言えなかった。だめだな、変な奴らと関わりすぎて善意に対して警戒するようになってしまった。


「その、妹さんに頼まれてきたんです。どうせ授業サボるなら世話してくれって」

「へぇ」

「な、なんですかその反応」


 さっき言った話とは内容が違うが、おそらく自分で勝手に来たという事実を話すよりかは信じてもらえると考えたからだろう。


 けれども菱原の反応は芳しくない。女を連れ込んでいたと勘違いしている以上そんな話信じられないのだろう。


「仮にそれがホントだったとしてさ、

「下心なんざあるわけね……ないですよ! 悠衣來がお兄さんのこと話す時の顔見てるの……に……」


 徐々にトーンダウンしていくと一緒に顔も青くなっていく。三嶋さんはやってしまったというように頭を抱えた。


「悠衣來……妹ちゃんがどうかしたの?」

「違います、何でもありません」

「じゃあ何で頭抱えてんの。なんかないとしないでしょソレ」

「う、うぅー……」


 俺は正直驚いていた。悠衣來の感情ってバレてたのか。ずっと近くにいたのにあの日まで知らなかった俺とは対照的で……本当に俺ってダメだな。


「ぐぅ……」


 気分が落ち込むといっしょに回復してきた体調も逆戻りしてきた。だが意識を失うようなものでもなく頭がガンガンするだけだったのでこの地獄から逃れることは出来そうになかった。


「お、お兄さんからも何か……顔色わっる!」

「あー……やっぱシャワー浴びてきたほうがよかったかな……」

「いや、なんの話ですか!?」

「いやめんどくさくて一週間ぐらいサボっちゃってたからさ、さすがにニオイやばかったかなって」

「ここ一週間真夏日だったろ!? 正気かよお前!」


 三嶋さんはあまりの衝撃で言葉づかいが素に戻ってしまっている。いつも汗の匂いすんの気になってたけど原因がそれだったとは見抜けなかった。

 ていうか衛生的にどうなんだよそれは、ただでさえ運動部なのに。


「さっさとベッドから降りろよ! 菌の塊じゃねぇかテメェ!」

「ふ、服は洗ってるし!」

「テメェそのものが不潔つってんだよ! 事情あんならわかるけどなんだその理由、面倒臭がってんじゃねぇよ!」


 三嶋さんは菱原を力ずくで引き剥がそうとしているがびくともしていない。ベッドに足をかけてテコの原理を使ってるというのに。

 だが彼女の言葉自体はダメージを与えているようで菱原を涙声にさせ始めていた。


「不潔って……うぅ……」

「違わねぇだろうが! 今からでも風呂入ってこい!」

「わ、わかった……ぐすっ……」

「いや何の権利があって泣いてんだよ。風呂ぐらい入れよ……」


 三嶋さんは理解出来ないものを見る目でドン引きしていた。一方菱原は涙ぐみながら部屋を出ていく、学生カバンを俺の部屋に残して。


「……あの人左に曲がっていきましたけどあっちって玄関じゃないですよね」

「あぁ、風呂場がある方だな」

「え、えぇー……普通自分の家に帰りませんか?」


 思い返すと中学の時たまに風呂借りに来てたな。あの頃はまだ衛生観念あったんだなぁ。


「……あー」

「どうしたんだ」

「また足音です……」


 たしかにまた足音がしたが、今度は警戒はする必要はない。浮かない顔の三嶋さんと対照的に俺はその主の登場を心待ちにしていた。


「たっだいまーお兄ちゃん!」


 満面の笑みで妹が部屋に飛んで入ってきた。今すぐにでも抱きしめたい気分だが風邪をひいてる以上は出来ない。


「早かったな」

「なんか台風来ちまって帰らされたんだよ、それより……」


 悠衣來は冷たい目で三嶋さんを睨んだ。三嶋さんは菱原の時の比じゃないぐらい顔色が悪くなっていた。


「由香里、テメーなんのつもりだ?」

「あっ……いや、その……」

「ったく冗談だよ、親友の考えてることぐらいわかる。ありがとな由香里」


 悠衣來は三嶋さんの頭をわしゃわしゃと撫でた。妹のこういう姿、初めて見たけどなんかすげー嬉しいな。


「……あれ?」

「どうしたんだ悠衣來」

「いや……靴の数おかしくねって思ってさ」

「あっ」

「やば……」

「は?」


 俺たちの反応を見て悠衣來の表情は険しいものになった。しまった、菱原のことを完全に忘れてた。

 絶対に悠衣來はダメだよな、アイツが家にいるの。


「あーさっぱりした。やっぱ風呂は入んないとダメだわ」

「あ、最悪」


 最悪のタイミングで帰ってきやがった。この先の惨劇が容易に想像できる……頭は割れるように痛む。

 あーもういいや、めんどくさいし寝よう。全部三嶋さんに押し付けて寝よう。


「ど、どうしましょうお兄さ……」

「ぐー……」

「は!? ちょっと寝ないでくださいお兄さん! 寝るなァーー!!」


 個人的に気になったのでそれぞれの登場話数を集計しました。


・7話 菱原

・5話 悠衣來

・4話 金村

・3話 琴梨、葉森、白水

・2話 新嶋

・1話 坂田


 体感では悠衣來が一番だと思っていたのでちょっと驚きました。

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