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16.16時の生徒会室


 時刻は16時。俺は硬いソファに座り、生徒会長の金村めぐみと向かい合っていた。本来乗るはずだった列車は遥か彼方に走り去っているだろう。


「……いつからいたんだよ」

「あそこの机の下に隠れてたのよ」

「……なんで?」

「しいて言うなら気分かしら」


 ちなみに長野と芋片は金村が「後のことは三好くんと決めるから」とか言って帰らされたはたして部外者の俺と何を決めるというのか。

 芋片は終始困惑していたが、なぜか長野はそれを聞いた途端に勝確じゃんとか言ってすぐに出て行った。あいつは正気なんだろうか。


「全部見てたのか」

「えぇ、見させてもらったわ。三好くんの一挙一動」

「そ、そうですか……」


 人として許されない事をした後ろめたさから敬語にならざるを得なかった。心なしかいつもより冷たい視線をひしひしと感じる。


「脅しというのは感心しないわね」

「……はい」

「そこまで遜らなくても次はやったらダメってだけよ。今回のことで咎めるつもりはないわ」

「それはなんで?」


 普通に今回のことは咎められてしかるべき行動だが、温情というか身内びいきみたいなものなんだろうか。

 金村の性格をたいして知らないせいでコレだという推測はできそうにない。


「芋片くんは生徒会選挙のとき票を操作していたみたいだからいいお灸にはなったでしょうし」

「え? アレ言いがかりのつもりだったんだけど」

「あら、勘が鋭いのね」

「え、えぇー……」


 どうなってんだよこの学校。風紀が乱れてるとかそういう次元じゃねぇだろ。

 ていうかそれがわかってんだったら剥奪しとこうよ副生徒会長の肩書。


「金村、サッカー部の臨時予算のことは……」

「その話は受けるわ」

「……いいのか?」

「何度も言う事でもないでしょう? 私は臨時予算に許可を出すって判断をした、それだけよ」

「あ、あぁそう。ありがとう」


 自惚れみたいで嫌だけど許可を出さなかったら俺と付き合う事になるんだし下りないものと思っていた。

 俺が彼女が現れた時に「来てほしくない時に来た」と言ったのもそれが理由だし。


「そんな手段で交際に至っても嬉しくないもの」

「はっ!?」

「あら、図星? 珍しいわね、私の想像が当たるなんて」

「自覚してんのかよ……」


 このやり方で付き合う気がないにしても許可を出す道理などないはずだがこれこそ温情なんだろうか。


「お礼として一つ質問にこたえてくれないかしら」

「……何ですか」

「私への気持ち、伝えて?」

「……印象は変わった、良い意味で」

「まぁ、嬉しい」


 本当に喜んでいるのか疑うほどの真顔。昔からこうなんだろうか。それともこれが学園のマドンナとしての振る舞い?

 疎い俺にはよくわからない領域の話だ。


「そういえば生徒会って他にどんな奴がいるんだ」

「書紀の葉森さん……」

「蒼夏?」

「あら、1年の子だけれど知っているのね」

「知ってるていうか……俺の体内に盗聴器埋め込んだ奴だぞ」

「へぇ、そうなの。退学処分ね」


 即断にも程がある。事実関係の証明すらされていないというのに、いや俺が嘘をつく理由もないからこう言うのも妥当ではあるが。

 しかしどちらかと言えば野に放たないで生徒会に縛りつけていてほしい。学校という枷がなくなったら何するか分かったもんじゃない。


 いやアイツ盗聴器を埋め込んだ時点でそういうラインは飛び越えてるな。


「せめて生徒会追放だけにしといてやれ。退学はさすがに……」

「優しいのね、もうちょっと厳格になってもいいぐらいだと思うけど」


 告白を断ってる時点で厳しく接している気がするが、そういう感覚は人それぞれとしか言いようがない。ただこれ以上厳しいってどういう感じだ、殴ればいいのか?


「それで会計は……」

「ごめん、やっぱ言わなくていい。なんか知りたくない事知りそう」

「坂田律という子なんだけど……」

「聞いて?」


 またなんか聞いたことある名前だし……あ、でもダメだ。とにかく嫌な目に遭わされたという思い出はあるけどそれが先行しすぎて具体的に何をされたか思い出せん。


「ウルフカットでちょっとちんちくりんの子だけどとても……」

「あぁ、思い出した。スタンガンのやつか」

「退学ね」

「……勘弁してやってくれ」


 さっきまでなんか褒めようとしてたじゃん。心変わりが早すぎるよ。

 しかし揃いも揃ってここまでなら生徒会を解散するのも視野に入れていいレベルだな。


 一人を除いて厳正な投票の結果選ばれたと考えると、この学校の行く末が心配になってきたが……ただそれよりいつになったら帰っていいのだろうか。

 金村はずっとこちらを無表情で見つめ続けている。俺も見つめ返したが特に動きはない。


 途方のないにらめっこが終わる気配は感じられなかった。

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