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初めてのクエスト

異世界に転生して、2日目。俺は自分の部屋で冒険者カードを見ていた。

昨日、エレナから一通り魔法は見せてもらった。そして、すでに所持していたスキルポイントで使えそうな魔法を片っ端から取った。

一応、武器を使ったスキルも覚えたいからある程度スキルポイントは残しておくことにした。

職業が選べるとか言っていたが、何の職業にしようか。

一応、職業ごとに覚えれる限定のスキルはあるらしいが基本的にポイントが許す限りどんなスキルでも取ることが出来るらしい。

つまり、スキルポイントを集めまくればほぼ全てのスキルを覚えることも可能らしい。

ただ、かかるスキルポイントも膨大なことから基本的には自分の職業にあったスキルを取るのが最初の基本らしい。

そこは、RPGのゲームと似ているんだなと思った。


エレナから聞いた話だが、ここ数年で一気に人間側の攻勢が進んでいるらしい。

ライアとエレナの父親が先代の魔王だったらしいが、日本から送られた転生者の攻撃によって怪我を負って亡くなったらしい。

同じように上に兄弟はいたらしいが、みんな日本人の転生者達の経験値の糧にされたとか。

そして、残ったライアが暫定で魔王になっているという話らしい。

というか、先代の魔王死んだのに世代交代出来るのなら無限ループじゃねえかと思った。

まあ、どこぞの女神のせいで転生時の転送先を間違えられた俺からしたらどうでもいい話だが。

俺は、よいしょと起き上がった。

今日は、この後エレナになんちゃってギルドに連れて行ってもらう予定だ。

人間の世界の仕組みを真似たモノらしいが、俺のこれからの職業を決めることも出来るかもしれない。

魔法をいくつか覚えたから、魔法使いでもいいんだが、正直せっかくだから剣を使えるような職業でもいいなと思う。

そんなことを考えながら、俺は昨日覚えたばかりの魔法を試してみようと思った。

俺は右手をドアに向かってかざした。


「ウインドブレイク!」


風の魔法である。

俺の右手から、小さな竜巻が出現するとドアの方に向かって飛んでいく。

うん、RPGの冒険者っぽくなってきた。

そういえば、冒険者に書かれていた鍛冶師とはどんなスキルなのだろうか。

まあ、おいおい試していけばいいかな。

そんなことを考えながら、ドアの方に視線を向けた。

竜巻がドアに向かって飛んでいく。

すると、ドアがガチャリと開いた。


「おはようございます。朝ごはんはまだ食べていませんよね。」


外からエレナの声が聞こえた。

あっ、今そのまま部屋に入るとまずい予感が…。

竜巻がエレナの足元に当たった。

フワッとエレナの着ていたスカートがめくれる。そして、俺の目の前に白いパンツが露わとなる。

エレナは一瞬、何が起きたのか理解出来ていないようだった。しかし、すぐにどういう状況だったのか俺の顔を見て察したのだろう。

顔を真っ赤にして、急いでめくれたスカートを両手で隠す。


「あ…、あの。わざとじゃないんだよ。」


俺はエレナに言い訳をする。

実際、わざとじゃないのは事実だ。不慮の事故というモノだ。

これがラッキースケベというやつだろうか。

エレナの顔は真っ赤になり、そして目には涙を浮かべていた。


「さ、サイテー…。」


小さな声でエレナが俺を睨みながら言う。

そんな小さな声で言われる方が逆に傷つく…。


「いや、わざとじゃないんだって!その、試しに使ってみようと思っただけだから!」


俺は必死にエレナに対して言い訳をする。

エレナは顔をブンブンと横に振る。


「とりあえず、まずは謝ってください!わざとじゃないのは分かりましたから!」


「すみませんでした!!!」


俺は、日本にいた時に身につけた土下座を披露した。-


-エレナが口を聞いてくれなくなりました。


「ごめんって。そもそもノックもしないで入ってくるエレナにも非があるだろ。白いパンツを見たのは悪かったからさ。」


ムスッとした顔で歩くエレナに俺は弁明を繰り返す。


「分かりました、分かりましたから!パンツの色を言うのはやめてください!」


再び顔を真っ赤にしてエレナが怒る。

でも、割と朝からいいモノが見れた気がする。

見た目通りのファンシーなパンツだったのも評価高い。


「…とりあえず、町の方に案内します。」


少しは怒りが収まったのか、エレナが俺に話しかけてくれた。

城の外に出ると、1人の少女が立っていた。


「ライア様より命じられまして、ご同行しろと。」


小さく頭を下げる少女。

ライアと同じくらいの年だろうか。

茶色のショートの髪型だろうか、ライアとエレナとは顔は似ていなので姉妹とかそういう関係ではなさそうだ。


「お姉さまの侍女のユキネです。私と同い年です。」


日本人みたいな名前だなと思った。

というか、同い年とか言うけどこの子達の年齢感覚ってどんな感じなのだろうか。

魔族とかだから実は何百年も何千年も生きてたりするのだろうか?


「なあ、1つ聞きたいんだけど。魔族とかの年齢って俺みたいな人間と同じなの?」


「うーん、種族によるかと。長命の種族もいますよ、もちろん。私達は基本的には魔人族と呼ばれる種族なので人間と生きている年齢の感覚は同じですね。」


「そうなんだ。てっきり、凄い年が出て来るとかと思った。」


「今、失礼なこと考えています?」


「考えていないです。」


ジロリと睨むエレナから視線を避けて俺は答える。

俺はユキネと呼ばれた少女の方を見た。


「ユキネと申します。」


腰には鍔が付いていない刀を差していた。

そういえば、武器か。俺も何か身につけてみたい。


「ユキネは鬼人(きじん)族と呼ばれる種族の出身です。基本的に、剣を扱うスキルを覚えたいなら聞くことをオススメします。」


ちょうど、剣を扱うスキルが欲しいと思っていたところだ。あとで聞くとしよう。

一通り、説明を終えたエレナが俺とユキネの前を歩き始める。

俺とユキネの2人もその後を付いていく。


「とりあえず、町の中にあるギルドに向かいましょうか。仕事を受けるついでに。」


町の中を歩きながらエレナが案内をする。

人間らしい見た目をしているが、どれも角が生えていたりとどこか違う感じだ。

まさに異世界といった感じだ。

町の中も普通に賑わっていて、貨幣システムみたいなのもあるらしい。

物の売り買いが至る所で行われていた。


「ここですね。」


少し歩くと、酒場のような場所に着いた。

中を見ると、いくつかの長い机が並んでいた。

そして、鎧を着ていたり、武器を身につけている多くの姿が見えた。

中には酒を飲んでいる者もいた。

エレナは中に入ると、受け付けのような場所へと向かった。

途中、挨拶をしてくる者もいてそれらに軽く返す姿もあった。


「すみません。この人に、仕事の斡旋をしてあげてください。」


受付に座っている女性にエレナが言う。

俺とユキネもエレナの後ろに立つ。


「はい、お仕事の受注ですね。それでは、こちらの掲示板から選んでください。」


女性は窓口の近くに置いてある掲示板を手で示した。

そこには何枚もの貼り紙が貼られていた。


「すみません。職業的なモノって選べたりするんですか?」


俺は冒険者カードを見せる。

エレナがあっと小さな声を上げる。

あれ?何かまずかったかな?

女性はカードを見ると、少し顔を曇らせてエレナを見る。


「…すみません。こちらのカードって。」


「あっ、そうですね!色々と事情があるんです。ただ、悪い人ではないんですよ。ちなみに、このカードの使い方とか知っていたりしますか?」


必死に言い訳をするエレナ。

そういえば、俺が人間であるということは言っていなかった気がする。

確かに、魔族しかいない場所に人間の冒険者カードを持って行ったらこうなるよなと納得した。


「使い方ですか…。一応、私達はこういったカードは扱いませんので。そもそも、職業という概念自体が分からないのですが…。」


微妙そうな顔を浮かべる受付嬢が俺達に教える。

酒場の視線が一斉にこちらに向いている。

興味からの視線というよりは、何だあいつはみたいな視線に近い。

異世界に来てまでこんな視線に晒されるのは想像していなかった。

俺とエレナ、ユキネの3人は隅の机に座った。


「あの、あまりそのカードを見せない方が良さそうですね。」


申し訳なさそうなエレナが俺に言う。

エレナの隣には無表情で座るユキネ。


「うおおおおい!じゃあ、どうするんだ!これ!使い方誰も分からないじゃんかよ!」


カードの右上に載っている鍛冶スキルすらも何か分からない状態だ。

せっかく、RPGみたいな世界で冒険出来ると思ったのに災難すぎる。

俺は何か、方法はないかとカードを見つめる。


「一応、一番簡単そうな仕事は持って来ましたが。」


ユキネが俺の前に1枚の紙を置く。

紙には、“ファング5頭の狩猟”と書かれていた。

紙に描かれた絵はイノシシのようだった。


「何か、イノシシみたいだな。」


俺は紙を受け取るとつぶやく。


「…イノシシ?」


ユキネは不思議そうに首を傾げる。

そういえば、この世界には日本にいるような生き物はいないんだったな。

まあ、でもこれくらいなら何とかなるかなと思った。


「エレナ達も一緒に受けてくれるんだっけ?」


俺はエレナに尋ねる。


「そうですね。とりあえず、最初ですからね。」


「最初ですからね、って次からは1人で受けなきゃいけないの?」


俺はエレナに聞き返す。

せっかく、こういうクエストなのだ。パーティー的なモノで受けてみたい。

というか、それが目的まであるだろ。


「人間界ではそういうのがあるらしいですけど、こちらでは基本的に誰かと組むみたいなのはよっぽどのクエストじゃないとしないんですよね。そもそも、この仕組み自体が人間達に対抗して作ったモノですし。」


「いいじゃん!別に決まっていないなら、一緒に受けようぜ!」


俺はエレナに言う。

せっかく、美少女と出会えたんだ。一緒にクエストに行くとかいうお約束をしてみたい。

エレナは少し困ったような顔をする。

ヤバい、少しがっつきすぎたかなと思った。


「どうしますか?ユキネさん?」


「私はどちらでも。エレナ様がいいと言えば。」


特に表情を変えることなく言うユキネ。

どことなく、クール系の美女のような雰囲気がある。


「まあ、私はお姉さまのお仕事の合間でしたら。じゃあ、そうしましょうか。」


「よっしゃ!決定だな!」


俺はそう言うとカードを見た。

よく見ると、ステータスという表記がされている部分がある。


「なあ、これステータスって書いてあるんだが。全部50の数値で統一されているし…。」


俺はエレナとユキネにカードを見せる。

2人もあまり分からないのか、首を傾げる。

俺は適当にATKと書かれている部分に触れる。すると、ATKと書かれている部分に10という数値が記された。

他の部分を眺める。ATKの他にLV、HP、MP、DEF、INT、AGI、LUKと書かれていた。

何となく、意味は分かる。


「こういうのって魔族にはないんだね。」


俺はエレナに尋ねる。


「そうですね。私達は魔族ですから。そういう、人間界で見られる数値的なモノはありませんね。魔法を打つにしても魔力量は元々決まっていますし、筋力的なモノも元々決まっていますから。多少は食事であったり魔獣を倒したりで増えたりはしますけど。」


ふーんと俺は言いながらカードを見つめた。

浮かび上がった数値に200と書かれている数値を見つけた。

今のところ持っている経験値的なモノがこれくらいなのだろうか。多分、あの女神が言っていた転生特典とやらに関係があるかもしれない。

俺は、とりあえずATKとMPに振ろうと思った。

最高値がよく分からないのでキリよく100にするかと思った。

2つで計100ポイント消費だからまだ100ある。

俺は、ポチポチと押していく。

エレナとユキネが興味津々にそれを見る。

ATKとMPが無事100になった。


「何だか不思議な感じですね。こうして、人間はスキルを振るんですね。」


感心しながらエレナが言う。


「これ、あと残り100ポイントあるけどどう割り振ればいいと思う?」


俺はエレナとユキネに尋ねる。


「残り100なら20ずつに分けたらどうでしょうか?」


ユキネが言う。

確かにそれが一番無難な気がする。ただ、俺は割と特殊なスキルポイントを振ってゲームを楽しんでいたような男だ。

無難にATKとMPを100にして残りを70にしてもいいモノかと考える。


「…それじゃ面白くなくない?」


「面白くない、と言われましても…。」


ユキネがどう答えようか迷ったように俺に言う。


「でしたら、もうATKとMPに全振りしたらどうですか?見た感じ、レベルが上がればこのポイントも貯まる仕組みでしょうし。」


エレナが提案する。


「いいね、それ!」


俺は指をパチンと鳴らして、ATKとMPに全振りにした構成にする。

ATKとMPが150ずつになった。

我ながら、中々に偏ったステータスだと思う。


「あれ?ちょっと待ってください。」


ユキネがカードのHPとLUKと書かれている部分を指で示す。

俺とエレナがそれを見る。

HPとLUKの部分が0になっていた。


「…あれ?これもしかしたらミスった?」


異世界転生、2日目。ステータス振りをミスりました。

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― 新着の感想 ―
> 「うおおおおい!じゃあ、どうするんだ!これ!使い方誰も分からないじゃんかよ!」 カードの右上に載っている鍛冶スキルすらも何か分からない状態だ。 < まで読みましたが、どうにも素直に読み進めて行け…
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