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私たちの監督は14歳で、かなりヤバいっ!!  作者: フムフム竜
小学生編
55/61

第55話 大きな落とし穴

突然顔を青ざめ言葉を詰まらせたマリーにモニカは首を傾げる。


モニカ「ま、マリー?」


マリー「アイツ・・・」


マリーはベンチに座っているアスラを睨んだ。


アスラ「どうやらアイツは、気付いてしまったようだな」


風谷「何が?」


アスラ「まぁ見ていろ。中山が答えを出せるかわからんがな」


プレーがかかり試合が再開される。


モニカ「(さっきの人でスプリットを必要以上に使ってしまいました。ここはツーストライクに追い込むまではストレート一本デ~ス)」


マリー「わかったわ」


モニカのサインに頷いたものの、なかなかボールを投げようとしないマリー。


マリーの表情は明らかに投げづらそうだった。


アスラ「今度はアイツが妙な雑念を持ち始めたな。ただ三振を取ることだけ考えていればよかったものを」


かなり間を置いた後、マリーが投げた2球目は外角高めのストレート。


中山「(あ、当たれ!!)」


中山のバットはボールの上を擦り、カキッと力のない音を立てる。


そして打球はコロコロとサードのライン際へ転がった。


中山「(うぐっ!!て、手がメチャクチャ痛い!!)」


手を押さえながらも中山は懸命に走った。


ビジーマン「オーライデ~ス!!落ち着いて取れればなんてことはありまセ~ン」


サードのビジーマンはあらかじめ前進守備で守っていたため、すぐにボールに追いついた。


そして、慎重にボールを拾う。


ビジーマン「これから私の強肩を見せてあげマ~ス!!」


マリー「ば、バカッ!!投げんじゃないわよ!!」


しかし、マリーの制止も一足遅く。


ビジーマン「ほ、ホワイッ!?み、ミーの腕に!!ミーの腕に!!全然力が入りまセ~ン!!」


1塁に投げたはずのビジーマンの送球はあらぬ方向へと飛んで行く。


ビジーマン「オォォォッ!!ノォォォォォッ!!」


送球を見て中山は1塁を蹴って2塁へ。


とうとうマリーの三振予告を打ち砕いた。


風谷「そうか!!最初から無理に打ち返す必要なんかなかったんだ!!」


アスラ「そうだ。ボールを前に転がすことさえできれば、ほぼ確実に出塁できる。それに黒崎のおかげでボールのキレも悪くなってるし、しかも3打席目だ。目も慣れてきている。ボールに当てることに専念さえすれば、間違いなく当てられる球だ」


風谷「それにしても、アイツの三振予告に熱くなってたせいで守備の酷さのことをすっかり忘れていたぜ」


森「ひょっとして、ウチらにそのことを悟らせないためにわざと三振予告したんやない?」


アスラ「いや、あれはアイツの本心だろう。現にさっき自身の守備の酷さに気付いた時、かなり動揺していたからな」


真野「でも最初からそのことに気付いていたなら、もっと早く教えてくれてもよかったんじゃないですか?」


アスラ「たとえ教えたところで、あの時のお前らでは、かすることすらできなかっただろう。アイツのボールに目が慣れていなかったわけだしな」


真野「なるほど」


アスラ「なんにしてもこれでアイツは今までのようにただ三振を取ることだけに集中することはできなくなったわけだ」


アスラの視線の先のマリーは俯いたまま何も言わず、ただ足でマウンドをならしている。


モニカ「マリー・・・」


モニカはマリーのもとに駆け寄ったはいいが、どう声をかけるべきかわからなかった。


打順が下位である6番の中山に出塁され全員を三振で取る目標も打ち砕かれた。


その上、ボールがフェアゾーンに転がれば、ほぼ確実に出塁されてしまう。


今後マリーが点を取られないためには絶対に三振で抑えなければならない。


マリーのボールに目が慣れて来た相手に、この条件はあまりにも酷だ。


しかし絶望的な状況に追い込まれる中、マリーの目はまだ死んではいなかった。


マリー「モニカ・・・」


モニカ「な、何デスカ?」


マリー「もう決め球なんて言ってられないわ。初球からどんどんスプリットを使っていくわよ」


モニカ「しょ、正気デ~スか!?あの5番バッター1人にスプリットを30球近く投げてたっていうのに!!」


マリー「アイツらにボールに触れさせないようにするには、これしかないのよ!!」


モニカ「で、でもマリーの握力にも限界がありマ~ス。マリーが投げられるスプリットの球数はあと6、7球が限度のはずデ~ス」


マリー「ここまでくれば気力の勝負よ。限界なんて関係ないわ」


モニカ「マリー・・・」


マリー「いいわね?それでいくわよ。いや・・・いくしかないのよ」


モニカ「お、オーケー、それじゃあそれでいきしょう」


マリー「それからアンタたちはボールが来ても何もしないでちょうだい。ボールは全部アタシが処理するわ。いい?アンタたちは定位置で突っ立ってりゃいいんだからね」


守備陣「お、オーケー」


森「よっしゃ~、攻略法がわかれば、あんな奴どうってことあらへん」


アスラ「いや、今のお前では攻略は難しいな」


森「なんでやねん!!さっきボールのキレが悪くなってるって言うてたやん!!それにウチらもボールに目が慣れて来てる言うてたし」


アスラ「さっきも言ったが、ボールを当てようと意識するだけではダメだ。そんなのじゃ絶対にアイツのボールを空振りする」


森「心配あらへん。奈々がやったみたいにイリーナのフォームを真似て打つから安心してや」


アスラ「お前はオレの言ってることがわかっていないようだな。黒崎のフォームを真似るだけでは当たらんと言っているんだ」


森「じゃあどうしたらええねん?」


アスラ「いいか?よく聞け」


アスラは森の耳元でボソボソと呟いた。


すると森の顔がどんどん紅潮していく。


森「な、なんでそれを早く言わんのや!!そんなんのは奈々が打席に立っていた時に言うもんやで!!」


アスラ「別にここでもいいだろ。何か問題があるのか?」


森「問題大ありや!!とりあえず、タイムや!!」


森はそそくさとベンチ裏へと走り去って行った。


森の行動に全員が首を傾げた。


風谷「里奈のヤツ、一体どうしたんだ?」


アスラ「ちょうどいい機会だから、お前らにも言っておこう。打席が回って来たら全員これを付けて打席に立つんだ」


アスラは腰痛バンドを全員に見せた。


全員「えぇぇぇっ!?なんでそんなもの付けなきゃいけないの!?」


アスラ「これが黒崎のフォームに近づくもっとも簡単な方法だからだ」


全員「はぁ?」


アスラ「言っておくがこれは普通の腰痛バンドより固定する力は強いぞ。お前らに使ったギブスと同じぐらいにな」


全員「あ、あれか・・・」


全員がギブスを付けていた時の辛い日常生活のことを思い出す。


その間、腰痛バンドを付け終わった森が慌てて戻って来た。


森「こ、これで準備完了や」


アスラ「相手は落ちるボールを多く放ってくるから普段より少し低く構えていた方がいいぞ」


森「了解や」


打席に立つ森にキャッチャーのモニカが話しかけて来る。


モニカ「随分遅かったデスね」


森「ちょっとあのピッチャーを攻略するための下準備に遅くなったんや」


モニカ「ホワッツ?」


マリー「一体何の準備をしてたか知らないけど、前の打席までかすりもしなかったくせに自信に満ちた顔なんかしちゃって。アタシのスプリットに当てられるものなら当ててみなさいよ!!」


森「(うぉっ、ホンマにこのバンドの力はえげつないで。こんなん嫌でも打ち返そうなんて思えへんわ)」


森も黒崎と同様のフォームでスイングをする。


するとモニカのミットに収まったものの森のバットはボールの上をこすった。


前に飛ばなかったにしろ初球からマリーのスプリットに触れただけでも手応えは十分だ。


モニカ「ま、前の打席までかすりもしなかったはずなのに・・・」


マリー「い、今のはマグレにすぎないわ。それに、かすったとしてもアタシの守備範囲に転がればそれでお終いよ」


森「(痛ったぁ~・・・奈々が打った瞬間、手を押さえてたのも頷けるで。ボールの球威がハンパない。こんなん当たっても内野の頭は絶対越せんやろな。でも当てて前に転がせばええだけやから、かなり楽やで)」


マリー「こすっただけで随分得意げな顔するじゃない。前に飛ばせるもんなら飛ばしてみなさいよ!!」


続く2球目も同様のスプリット。


森「スプリットの軌道に慣れたウチにはもう通用せんで!!」


森のバットはまたしてもボールの上をこすったが、先程よりも、しっかりとした金属音が鳴り響いた。


だが・・・


森「痛ったぁぁぁぁ!!手が・・・手が痺れるで!!」


マリーの球威に完全に押され、中山の時よりも弱々しくサードのライン際にボールが転がった。


手の痛みを堪えながら必死に走る森。


中山「このコースなら里奈の足ならセーフだ!!」


打球の位置を見て内野安打を確信した2塁ランナーの中山の走る速度はさらに増す。


しかし、その中山の予想を裏切るかのようにマリーが物凄いスピードでボールを捕りに行った。


風谷「あ、あのピッチャーメチャクチャ足速ぇぇ!!」


真野「あのピッチャーの送球ならアウトになっちゃいます!!」


マリー「さぁ、これでチェンジよ!!」


マリーの矢のような送球が1塁へ投げられた。


この時、誰もがチェンジになると思っていた。


だが・・・


アランサ「ま、マリーの送球が速すぎマ~ス!!このボールを捕れば、『バーチャルシュート』さんのようになってしまいマ~ス!!ひ、ひぃぃぃぃっ!!」


マリーのボールで手が潰れて交代したキャッチャーのバーチャルシュートのことを思い出したファーストのアランサはマリーの送球から逃げてしまった。


マリー「はぁぁぁぁっ!?」


モニカ「ノォォォッ!!」


信じられないアランサの行動に愕然とするマリーとモニカ。


ボールはライトの前へ転がっていく。


2塁の中山は一気にホームへ。


打った森は、1塁を回ったところで止まった。


思わぬ相手のエラーで勝ち越し点を取り、アスラベンチは歓喜に溢れかえった。


一方のマリーは鬼の形相でズカズカとアランサの方へ歩み寄った。


マリー「ちょっとアンタ!!なに逃げてんのよ!!バッカじゃないの!!ドッジボールでもしてるつもり!?」


アランサ「そ、ソーリー。送球があまりにも速すぎてつい・・・」


マリー「なにがついよ!!アンタ来月からメジャーで試合でしょうが!!小学生の送球になにビビってんのよ!!」


アランサ「そ、ソーリー・・・」


マリー「謝って済む問題じゃないわよ!!せっかくモニカが同点に追いついてくれたのに!!今のアタシたちの置かれている状況が本当にわかってんの!?バッティングでは打てない!!守備ではエラーの連続!!もういい加減にしてちょうだい!!もうアンタたちの力なんか一切借りないわ!!これからはアタシとモニカの2人で守るわ!!」


モニカ「マリー、それはいくらなんでも・・・」


マリー「じゃあ、どうしろっていうのよ!!」


モニカ「そ、それは・・・」


マリー「これから打球の処理はモニカがやってちょうだい!!アタシが1塁に入るから!!」


モニカ「お、オーケー」


アスラ「さて、向こうが2人で守備をするつもりならこっちも好き放題やらせてもらおう」


トドメを刺すべくアスラは動いた。


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