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私たちの監督は14歳で、かなりヤバいっ!!  作者: フムフム竜
小学生編
53/61

第53話 マリーとモニカの実力

試合は2回の表。


アスラ「このまま身体能力のある2人を敬遠していれば、間違いなく勝利できる・・・だが最低でもアイツから1点は取る。それがこの試合の目標だ」


全員「うん」


アスラ「アイツのボールは速いかもしれないが、黒崎と戦った時のことを思い出せ。黒崎の方が数倍速かったはずだ」


風谷「でもあれは、バレーボールの勝負であって、野球じゃないんだぞ」


アスラ「だが野球であれバレーボールであれ速さという概念は同じだ。ボールの大きさが違うだけでな」


風谷「う~ん・・・それはそうかもしれないけど・・・」


アスラ「とにかくボールをよく見ろ。打とうとしないで、まずはボールだけを見ろ」


森「ボールをよく見ろか・・・」


アスラの言われたことを頭に入れながら森が打席に入る。


マリー「(キャッチャーがモニカに代わった今、アンタ達が出塁する可能性はゼロよ)」


長身から投げ上げられる速球は外角の低めに決まるストレート。


森「(うわぁ~、ごっつ速いやん。こんなの反則やで。けどバレーボール対決でのイリーナの殺人スパイクの方がたしかに速いで)」


初めて見るマリーの速球に驚きながらも森は確かな手ごたえを見せた。


マリー「(アタシの速球に(ひる)まないなんて生意気じゃない。それにあの自信に満ちた顔も気に入らないわ。見てなさい、次のボールでその表情を変えてあげる)」


次にマリーが投じたボールは内角高めにギリギリ外れるストレートだ。


自分の胸元に飛び込んでくるボールに一瞬怯んだ森だったが、キチンと最後までボールを見送った。


マリー「(ちっ、少しは悲鳴の一つでもあげなさいよね。本当にムカつくわ)」


森「(そ、そんなビーンボールに屈するウチやないで。イリーナの時なんか顔面に向かってスパイク打ってきよったからな。それと比べたら)」


マリーの嫌な雰囲気を感じ取ったのかモニカがマウンドへ駆け寄る。


モニカ「マリー、ちょっと熱くなりすぎデ~ス」


マリー「わかってるわよ。あんなのにボール球を投げる必要なんか無かったわね。さっさと終わらせて次の攻撃に繋げましょう」


モニカ「イエ~ス」


マリー「さてと・・・」


気を入れ直して3球目を森に投じる。


森「ボールは見えてるんや。あとはバットをボールに当てるだけや」


黒崎のスパイクを拾った要領でボールに食らいつこうとする森。


だがバットはボールをすり抜け、空振り。


森「(やっぱりボールが小っこい分、バレーの時のように上手くはいかへんな)」


モニカ「(空振りこそしたけど、今のタイミングは悪くなかったデ~ス)」


マリー「(ふんっ、次で身の程を教えてあげるわ)」


森「(今度こそ、バットに当ててみせるで)」


マリー「これでトドメよ!!」


4球目が投げられた。


ボールは先程と同じ速度で内角に向かって来る。


森「(今度こそ・・・浮き上がったところを捉える!!)」


振りぬいた森のバットは、マリーの速球を完璧に捉えた・・・かに見えたが。


森「え?」


森の予想とは反対にボールは手元でスッと落ちた。


森「ぼ、ボールが落ちた・・・」


マリー「ふんっ、お遊びは終わりよ。これが私の切り札の『スプリット(SFF)』よ」


全員「す、スプリット・・・」


風谷「あ、アンダースローでスプリットなんて投げれんのかよ」


三崎「アンダースローで沈むボールが投げられるのはシンカーのはずじゃ・・・」


モニカ「確かに常人の・・・しかも小学生が投げられる球ではありまセ~ン。けどマリーは違いマ~ス。マリーは、小学生の・・・人間の常識をはるかに超えた逸材デ~ス」


マリー「この試合、ヒットは1本も打たせない。それどころかここから連続三振で取ってやるわ。アンタたちに生まれ持った格の差ってものを見せてあげる」


風谷「な、なんだと!?」


黒崎「全部三振とは随分と大きく出たわね」


森「面白い。やってもらおうやないかい!!」


このマリーの三振予告で6人の闘志に火が付いた。


その後、試合が進み2回の裏は、4番のチャックがヒットで出塁したものの、後続が倒れて無得点。


一方の3回の表の攻撃は、4、5、6番が三者連続三振に切って取られる。


そして、3回の裏。


ワンアウトランナーなしから9番のモニカが左のバッターボックスに立った。


風谷「(コイツ、体系的にかなり細身だし長打は無さそうだな)」


三崎「(それにこの人からは、闘志のようなオーラが全然感じない。打つ気があるのかどうかもわからないわ)


風谷「(とりあえず低めに放っておけばとりあえず長打は避けられるし、低めで様子を見ることにしようぜ)」


三崎「(そうね。よく知らない相手にはそれが無難かも)」


風谷は、外側から外角のストライクゾーンに入るスライダーを指示する。


三崎は指示通りのスライダーを投げる。


そのボールをモニカは振らずに見送った。


モニカ「ワォッ!!凄い変化デ~ス!!」


三崎のボールを見て嬉しそうに、はしゃぐモニカを見て違和感を覚える三崎と風谷。


風谷「(コイツ、ふざけてるのか?それとも野球を純粋に楽しんでいるだけなのか?)」


三崎「(演技ってわけじゃなさそうだけど、なんか不気味ね)」


風谷「(よし、コイツのひざ元にスライダーをお見舞いしてのけ反らせてやろうぜ)」


三崎「(わかったわ)」


2球目は、内角の低めにスライダーを投げ込んだ。


モニカ「(ワォッ!!今度もスライダーデ~ス!!)」


マリー「バカね。モニカに対して同じ変化球を・・・しかも低めに投げるなんて」


モニカ「せいっ!!」


モニカは、その細身には似合わないゴルフスイングで三崎のスライダーをすくい上げた。


風谷「なっ!?」


打球は高々と上がってセンターへと飛んで行く。


6人守備で外野がいないため、ショートを守っていた中山が打球を追う。


三崎「あ、あんなスイングでスタンドまで持っていけるわけ・・・」


しかし、三崎の予想とは裏腹に打球はセンターのしかも上段に入る大ホームランだった。


2対1とその差を1点に縮めた。


風谷「じょ、冗談だろ!?あんなゴルフスイングであそこまで持っていけるのかよ!!」


森「しかもプロ野球選手が使う球場でのセンター上段やで!?」


モニカの規格外のパワーに驚く一方で当のモニカは大喜びでバンザイしながらダイヤモンドを1周していた。


マリー「モニカは一見細身で力が無さそうに見えるけど12歳以下の全米パワーリフティング大会優勝の怪力の持ち主なのよ」


モニカ「ヘ~イ、これであと1点で同点デ~ス」


マリー「モニカ、次の打席も頼むわよ」


モニカ「オーケー。任せてくださ~い」


風谷「打たれたのは仕方ない。まだ1点あるし、切り替えて行こうぜ」


三崎「うん」


風谷の言葉通り、気持ちを切り替えた三崎は、その後は好投を続けた。


対するマリーも予告通りの全者三振を継続し、両投手とも無得点に抑える。


そして5回の裏のモニカの打席。


全員がマウンドに集まる。


風谷「どうする?あのバケモノだけど」


森「敬遠した方がええんちゃう?」


真野「成美先輩には悪いですけど、私も敬遠した方がいいと思います」


風谷「そういうわけだけど、成美はどうしたい?」


三崎「私は勝負したい。だけど・・・」


三崎は勝負したい気持ちはあるが、前のモニカの打席で今の自分では絶対に抑えられない相手だと感じていた。


三崎は振り絞るような声で敬遠することに賛成した。


風谷「よし、じゃあ敬遠するぞ」


モニカを歩かすことを決めて全員が元の守備位置に戻る。


試合が再開されたと同時にキャッチャーの風谷が立ち上がる。


モニカ「ノー、敬遠デスカ。とても残念デ~ス」


不満な表情で打席に立つモニカ。


1、2、3球とボール球がカウントされていく。


三崎「(今思えば、私ってホームランを打たれてばっかりかもね。この前の一条(翔)にも打たれちゃったし、本当は私、ピッチャーに向いてないかも・・・)」


気落ちしながら放たれた三崎の4球目。


この覇気のないボールにモニカの目がギラリと光る。


その鋭いモニカの眼光に三崎は、一瞬金縛りにあったように身体を硬直させた。


マリー「つくづくバカな連中ね。敬遠とはいえ、モニカに対してあんな棒球を投げるなんて」


モニカ「うぉりゃぁぁぁぁ!!」


今まで明るく陽気なイメージのモニカから考えられないほど、気迫に満ちた声をあげる。


そして長い腕を思い切り伸ばして、敬遠したボールを強引に打ちに行った。


誰もがその行動に目を見開いた。


片手で打った打球はフラフラと上がった。


風谷「ま、まさか」


森「嘘やろ」


真野「そ、そんな・・・」


黒崎「・・・驚いたわね。世界は本当に広いわ」


ボールを追っていた中山も途中で追うのを諦めた。


打球はそのままレフトスタンドに吸い込まれモニカに2打席連続ホームランを許してしまった。


マリー「甘く見たわね。モニカのパワーを」


モニカ「イエ~イ!!これで同点デ~ス!!」


前の打席以上に喜びながらダイヤモンドを1周するモニカをマリーは祝福する。


マリー「本当にさすがね!!相変わらずアンタのパワーには驚かされるわ!!」


モニカ「私と同じくらいのパワーがあるマリーが何を言いマ~スカ!!」


完全に虚を突かれた形で同点に追いつかれてしまい不穏な雰囲気が漂う。


その時、アスラが全員をベンチに呼んだ。


ベンチに集まった直後、三崎は全員に頭を下げた。


三崎「ごめんなさい。私が余計なことを考えてボールを投げたから・・・」


森「いやいや、そんなんは関係ないやろ。あの敬遠球をホームランにしたアイツが異常なだけや」


風谷「それにもっと外して投げるように指示しなかったキャッチャーのアタシにも責任がある。成美だけのせいじゃない」


アスラ「まぁどちらにしても、これでアイツから点を取らなければ勝てなくなったわけだ。お前らも目標達成に向けてより真剣に取り組めるし、よかったじゃないか」


風谷「いや、よくはないだろ」


森「負けたらあの山、取られるんやで。なに呑気なこと言うてんねん」


アスラ「心配するな。オレがいる以上負けることは絶対に有り得ない。アイツの攻略法はすでに見つけてある。だから安心してこの後のゴミどもを抑えて来い」


アスラの攻略法を見つけてあるという言葉に5人は闘志を取り戻して元気に自分の守備位置に戻る。


そんな中、トボトボとマウンドへ戻る三崎にアスラは声をかけた。


三崎「なに?」


アスラ「お前、さっき余計なことを考えてと言っていたが、最初の打席でアイツにあそこまで飛ばされて自信を失ってるだろ」


三崎「!?」


アスラ「その顔だと当たっているようだな」


三崎「それもあるけど今回だけのことじゃないの。私はこの前も一条(翔)にもホームラン性の当たりを打たれた。だから思ったの。私のボールはパワーのあるバッターには全然通用しないんだなって・・・」


アスラ「だったら諦めるしかないな」


三崎「え?」


アスラ「力のある相手に力で勝てないなら諦めるしかないだろ」


三崎「う、うん・・・」


アスラ「だがこれだけは覚えておけ。昨日も言ったが、全員すべての守備位置を守ってもらうことになっている。他のヤツらだって自分に向いていない守備位置につくことだって当然ある。だがそれでもやってもらう。これは強制だ。向いていないならオレが無理にでも向かせるだけだ」


三崎「!?」


アスラ「おそらく今の段階ではアイツを抑えることできんが、いずれアイツらのようなパワーバカを抑えられるようにしてやる。だから今は我慢して投げろ。どんなに打たれようがな」


三崎「わ、わかった」


アスラの言葉に気が楽になった三崎も元気よく走ってマウンドに戻る。


マクーニ「(今度こそボールに当ててみせマ~ス)」


風谷「(成美、頼むぞ)」


三崎「(現時点では私はパワーバッターには勝てないかもしれないけど、今の自分の持てる力を最大限にぶつける)」


三崎の放ったストレートはマクーニのひざ元に決まるストライク。


マクーニ「の、ノー!!前よりもさらに速いデ~ス!!」


風谷「(吹っ切れたみてぇだな。これならいける)」


マクーニ「私はメジャーリーガー・・・そう私はメジャーリーガーなんだ・・・こんなリトルガールのボールごとき・・・」


しかし、マクーニのバットは三崎の直球に触れることもできずに、三球三振。


嫌なムードを完全に断ち切った。


風谷「よっしぁ!!ナイス!!」


真野「ナイスピッチングです!!成美先輩!!」


三崎「試合はこれから」


勢いが出て来て雰囲気がよくなった中で迎えた6回の表の攻撃。


先程のピッチングで波に乗っている三崎が打席に入る。


三崎「(自分で取られた点は自分で取り返す)」


マリー「ふ~ん、感情がない鉄仮面だと思ってたけど、今ならアンタの気迫がわかるわ。ただし・・・それと打てるかは別問題よ!!」


マリーの剛速球が高めに決まってストライク。


三崎「(ボールは見えるけど・・・それでも速い。でも・・・打たないと・・・打たないと勝てない)」


マリー「ほら、どんどん行くわよ!!」


テンポよく第2球。


三崎「(ストレート・・・それともスプリット)」


ボールは手元で落ち、三崎のバットは空を切った。


三崎「(スプリットだった・・・)」


マリー「さて・・・最後ね」


モニカ「(このまま、どんどん攻めマ~ス)」


マリー「これで三振よ!!」


三崎「(絶対・・・打たないと・・・)」


絶対打つと意気込んだ三崎のバット・・・しかしバットは、無残にもボールの下を通った。


三崎「くっ!!」


マリー「は~い、ご苦労様。さ、次のバッターどうぞ」


三崎「・・・・・・」


悔しそうな表情でベンチに戻ろうとする三崎に黒崎は声をかける。


黒崎「気持ちを切り替えて。あなたは次の回を抑える役目があるんだから。私があなたの代わりに打ってみせるわ」


意気込みバッターボックスに入ろうとする黒崎をアスラが呼び寄せた。


アスラの指示を受けた黒崎は驚き、目を見開いた。



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