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私たちの監督は14歳で、かなりヤバいっ!!  作者: フムフム竜
小学生編
44/61

第44話 恐れていた事態

【河川敷】


ここでは、いつものように5人の少女が特訓のために集まっている。


そんな時、1人の少年が5人のところへ向かって来た。


少年「この辺で最強の野球選手を目指してるってチームがあるって聞いたんだけど・・・」


森「一体その話、誰から聞いたんや?」


少年「妹から聞いたんだよ。自己紹介が遅れたけどボクの名前は一条(いちじょう)(しょう)。妹の名前は真央っていうんだ」


その名前を聞いて、真野がハッとした表情になった。


真野「真央ちゃんのお兄さんでしたか・・・」


一条(翔)「よろしくね」


爽やかな笑顔と整った顔立ち。


クラスでは間違いなくモテるタイプだ。


真野は一条(翔)の妹である真央について話し始めた。


真野「真央ちゃんは私と同じクラスの子で、運動神経がかなり良かったので思い切って誘ってみたんです。でも・・・」


森「ダメだったんやな?」


真野「はい。野球に興味がないからと・・・」


一条(翔)「それで妹に私の代わりに入って欲しいって頼まれたんだよ。幸いボクは妹と違って野球に興味があるし、軟式野球でも主力で活躍してた。だから足を引っ張ることは無いと思うんだけど」


思わぬ男子の加入に、困惑する風谷、森、中山。


3人にとって男子の加入は一番恐れていたことだったからだ。


だが男子は入れることは出来ないとは言えず、一条(翔)の加入を受け入れるしかなかった。


そんな中、一条(翔)がある提案を申し込んで来た。


一条(翔)「ボクも最強の野球選手を目指しているとはいえ、一番の新入りだ。だからチーム内でボクの実力を把握しておきたいから誰かボクと勝負してくれないかな?」


突然の事で動揺する5人だが、三崎が一条(翔)に言った。


三崎「得意なのは打つ方?それとも投げる方?」


一条(翔)「ボクはどっちでもいいよ。キミが得意な方を選んでよ」


三崎「じゃあ、私が投げるからあなたが打って」


一条(翔)「わかった」


一条(翔)は持っていたスポーツバッグから野球道具を取り出し、三崎たちに渡した。


ちなみにキャッチャーは風谷が務めた。


一条(翔)は2、3回軽くバットを振ったがそのスイングの鋭さに全員の目が変わった。


風谷「(コイツ・・・かなり上手いな)」


森「(どう見ても細身の身体にしか見えへんのにあのスイング音。パワー自慢の青木に匹敵するで)」


一条(翔)「それじゃ、1打席勝負ってことでいいかな?」


三崎「ええ。それでいいわ」


一条(翔)「一応聞くけど、キミがエースってことでいいのかい?」


中山「まだ正確には決まってないけど、ピッチャーの経験があるのは成美だけなんだ」


一条(翔)「そっか、じゃあ始めようか」


そう言って一条(翔)は右のバッターボックスに入った。


三崎は、第1球から内角ギリギリに決まるシュートを投げる。


一条(翔)は、このボールを打ちに行ったが当たらなかった。


しかし、物凄いスイング音にキャッチャーの風谷は目を丸くした。


一条(翔)「うわぁ~・・・凄く曲がるんだね。軟式だったから変化球打つの初めてなんだよ」


三崎「じゃあ、変化球は投げないで勝負しようか?」


一条(翔)「いや、いいよ。これぐらい打てないと最強の野球選手にはなれないからね」


三崎「(それにしても軟式のボールで変化球をコントロールさせるのは、ちょっと難しいかもしれない。やっぱりコントロールが決まらないうちは、直球主体で攻めた方がいいかも)」


風谷も考えが同じだったようで、三崎にストレートのサインを出す。


頷いた三崎は第2球を投げた。


一条(翔)「(思ったより速いけど、これなら打てる)」


思い切り振りぬいたバットは見事に三崎のストレートを完璧に捉え、軽々と向こう岸へ。


距離で言えば文句なしのホームランだ。


軟式で慣れないボールだったとはいえ、自慢の速球を軽々と運ばれ三崎もショックは隠せなかった。


そんな三崎にどう声をかけたらよいか、わからず風谷が悩んでいると一条(翔)が三崎の方へ歩み寄る。


一条(翔)「ありがとう。キミのお陰でボクの緊張がとけたよ」


三崎「・・・どういうこと?」


一条(翔)「いやぁ~・・・だって最強の野球選手を目指しているから凄くレベルが高い人しかいないと思ってたからさ。このぐらいのレベルで、本当に安心したよ」


笑顔でそう話す一条(翔)に周りの空気が一変する。


完全に一触即発な雰囲気になっている中、アスラがやって来た。


5人は、ハッとした表情になり、アスラのもとに走る。


アスラ「全員、揃ってるな」


5人の行動とアスラの話し方からこの人物が監督かコーチであると一条(翔)は判断した。


一条(翔)「(どう見ても中学生か同い年にしか見えないけど、何となく只者じゃない気がする。彼は一体・・・)」


アスラ「アイツは誰だ?」


森「ウチらのチームに入りたいんやて」


アスラ「ほう」


一条(翔)「失礼ですけど、あなたが監督ってことでいいんですか?」


アスラ「監督?オレはここのチームの支配者だぞ」


一条(翔)「し、支配者?」


アスラ「ああ」


完全にこの人の頭はどうかしていると思う一条(翔)だが、何とか切り替えて質問を続ける。


一条(翔)「あ、あの野球の経験は?」


アスラ「経験だと?そんなものあるわけないだろ」


一条(翔)「え?」


アスラ「オレにあるのは戦闘経験だけだ」


一条(翔)「えぇぇぇっ!?」


この言葉に一条(翔)は、このチームに対して不信感を抱いた。


一条(翔)「(い、一体このチームはどうなっているんだ?最強の野球選手というのはボクの聞き間違いだったのか?本当は最強の格闘選手なんじゃないのか?」


そうやって頭の中であれこれ考えている間にアスラは、いつものように一条(翔)の身体能力を見る。


一条(翔)「あ、あの・・・」


アスラ「身体能力は合格だ。今日からお前をオレの配下にしてやる」


一条(翔)「は、配下?」


アスラ「よし、今日もいつものように山登りの特訓を・・・」


その時、一条(翔)がアスラに向かって言った。


一条(翔)「ほ、本当にこのチームは最強の野球選手を目指しているんですか?」


アスラ「ああ」


一条(翔)「でしたら、ボクだけ特別メニューを組んでもらえないでしょうか?」


風谷「はぁっ!?」


森「急に何を言い出すんや」


一条(翔)「ボクはさっき、野球の勝負をしたんですけど圧勝でした。野球の実力が圧倒的に上なボクが彼女たちと同じメニューというのは納得いかないんです」


風谷「あ、あの野郎」


全員が敵意むき出しで一条(翔)を見る中、アスラはあっさりと答えた。


アスラ「野球の実力が上だから何だと言うんだ?」


一条(翔)「え?」


アスラ「オレは身体能力で判断しているんだ。身体能力で言えば、お前とコイツらの差はそこまで大きくはないぞ?」


一条(翔)「で、でも・・・」


アスラ「話が済んだんなら、さっさと始めるぞ」


一条(翔)「で、でもここは最強の野球選手になるための育成チームなんでしょ?」


アスラ「ああ」


一条(翔)「だったら、山登りなんてやってないで野球の実力を磨く方に重点を置くべきだと思います」


この意見には5人も同意見だったので、全員でアスラの返答を待った。


アスラ「この際、ハッキリと言ってやるが、小学生の段階で野球の技術なんてものは、ほとんど必要ない」


全員「えぇっ!?」


アスラ「それは中学の段階でやっていくもので今必要なのは桁外れの身体能力を身に着けることだけだ。野球の技術は必要最低限でいい」


森「そ、そんなやり方で大丈夫なんかいな」


真野「そうですよ。野球の技術だって絶対必要ですよ」


アスラ「野球の技術の場合、中学から初めても十分巻き返すことが可能だ。だが並外れた身体能力を得るのは早い段階からみっちりやっておかないと絶対に間に合わん。だからこの先も身体能力の強化を優先させる。野球の技術は二の次だ」


一条(翔)「そ、そんな・・・」


アスラ「それでも野球がやりたいと思うなら特訓の無い時にやればいい」


一条(翔)「そんなの学校での昼休みの時以外無いじゃないですか・・・」


アスラ「それが嫌なら別のチームに入って好きなだけやればいい。オレは特訓の方針を変えるつもりは一切ない」


それ以降アスラに対して反論の言葉を上げる者はいなかった。


そんな中、真野は真っ先にアスラの方へ歩み寄った。


真野「私はアスラお兄ちゃんに1億円の投資を受けました。この先、どんなことがあっても私は最後までついていきます」


アスラ「そうか」


次に風谷がアスラに聞いた。


風谷「その方法で本当に最強の野球選手になれるのか?」


アスラ「それは保証してやる。だがこの先、それ相応の厳しい特訓が待っている。それだけは覚悟しておくんだな」


風谷「そっか・・・じゃあ早く山登りの特訓を始めないとな」


アスラ「他のヤツらはどうする?目先の野球がしたいという欲に負けて中途半端な選手になるか、それとも最強の野球選手を目指すか」


他のメンバーもアスラの方へ向かう中、一条(翔)だけは唖然と立ち尽くしていた。


一条(翔)「(な、なんだ?なんで、みんなこの人の言うことを信じられるんだ?どう考えてもこんな軍隊みたいな特訓で最強の野球選手になれるわけがない。この人のやってることは最強の格闘選手になるための特訓じゃないか・・・)」


そんなことを考えている時、森が一条(翔)に言った。


森「そんなところで突っ立ってどないしたんや?別にアスラ兄ちゃんの言う事を信じられへんのやったら無理に付いていくことあらへん。他んとこで楽しくやって中途半端な選手になればええやん」


一条(翔)「むっ!?」


一条(翔)が怒りで身体を震わせている中、真野は小さな声で森に耳打ちした。


真野「な、なんであの人を煽るようなことを言うんですか?このまま黙ってればこのチームに入らないかもしれないのに・・・」


森「ウチ、アイツの事嫌いやねん。このまま何も言わないで別れるんはウチの性分に合わへんのや」


真野「で、でも・・・」


風谷「アタシも里奈に同感だ。アイツにやり返さないでバカにされたままなんて絶対ゴメンだ」


中山「その気持ちもわかるけど、これでチームの一員に加わっちゃったら、それはそれで私は嫌だな」


その時、一条(翔)もアスラのもとに歩み寄った。


一条(翔)「ぼ、ボクも最強の野球選手になりたいです」


アスラ「そうか、だったら早く始めるぞ」


そしていつものように一瞬で愛比売山まで移動した。


これには言うまでもなく一条(翔)は、かなり動揺した。


だがこれを機に一条(翔)は、他の選手たちがアスラに素直に従っている理由を理解した。


そして・・・


アスラ「ほう、一番はアイツか」


一条(翔)「思ったより他のみんなと差がつかなかったのは気に入らないけど、まぁこんなものか・・・」


風谷「くそ~、腹立つけどアイツの実力は本物だ」


一条(翔)「わかっていた結果だけど、2か月くらいずっと山を登り続けたのにボクに勝てないんじゃ、ちょっと情けないんじゃない?」


森「な、なんやと~」


一条(翔)「これならボクの知り合いと総入れ替えした方がマシだと思うな」


風谷、森、中山の背筋が凍った。


これこそ3人が、ずっと恐れていたことだったからだ。


そして一条(翔)がアスラの方へ。


一条(翔)「あの・・・」


アスラ「なんだ?」


一条(翔)「オレと同じクラスのヤツらなんですけど、彼女たちよりもずっと身体能力が高いので、ソイツらと入れ替えちゃった方がいいと思うんですけど?」


アスラ「・・・・・・」


もう終わりだと思って5人は頭を抱えた。


だが・・・


アスラ「ダメだ。入れるのは足りない2人までだ」


一条(翔)「え?」


アスラ「すでにオレはアイツら6人の育成計画を立てた。今更それを変えることはしない」


一条(翔)「でも、アイツらの育成よりもボクが連れて来るヤツらの方が身体能力は高いし育成しやすいと思うんですけど・・・」


アスラ「オレは一度配下にしたヤツを除名する気はない。アイツらが自ら除名を申し出るなら話は別だがな」


風谷・森・中山・真野・三崎「アスラ兄ちゃん・・・」


その言葉を聞いて5人は心の底から安堵した。


一条(翔)「そ、そうですか・・・」


アスラ「お前が言う身体能力が高いヤツが連れて来れるのは2人までだ。選任はお前に任せる」


一条(翔)「わかりました」


これでアスラに切り捨てられる心配が解消されて物凄く喜ぶ5人。


だが、さらなる悲劇が彼女たちを襲うことをこの時は知る由もなかった。



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