第43話 影梨の復讐2
アスラの目に入ったのは交番勤務をしている警察官だった。
アスラ「おい」
影梨「こ、今度は何?」
アスラ「今度の標的はアイツだ」
標的となった警察官を見て影梨は驚愕する。
影梨「ちょ、ちょっと待ってくれ!!キミはエスパーか?どうしてオレの知り合いをピンポイントで当ててくるんだよ!!」
アスラ「知り合いということは、お前にとっては復讐の対象者ということだな」
影梨「あ、アイツは宮野って言って大学生までオレのことをイジメてたヤツだよ。昔から腕っぷしが強くて高校の頃はよく殴られてたんだ。警察官になってることは知ってたけど、よりにもよってここで勤務してるなんて・・・」
アスラ「そうか。だったら早速今までの仕返しをしなければな。今日はお前にとって最高の日になるぞ」
影梨「こ、今度もまた殴れっていうんじゃ・・・」
マミ「待ってよ、お兄ちゃん。復讐もいいけど、あくまでこの人を認識してくれる人を探すのが先でしょ?」
アスラ「そんなことはわかっている。だからアイツを選んだんだ。アイツは他のヤツには持っていない変わったオーラを持っていたからな」
影梨「変わったオーラ?」
アスラ「お前に言っても理解できない話だ。とにかくアイツの特殊な潜在パワーを強制的に引き出すには強いショックを与えることが必要だ」
マミ「なるほどね・・・だったら今度は私にやらせてよ。肉体的と精神的の両方にショックを与える方法でやってみるからさ」
アスラ「そうか。ならばここはお前に任せてみるとしよう」
マミ「いい?今からあの人にね・・・」
マミのやり方を聞いて影梨は、首を大きく横に振った。
影梨「お、オレにはそんな勇気ないよ!!演技だって下手だ!!それに下手したら死ぬよ!!」
マミ「その辺は大丈夫。私がちゃんと守ってあげるからさ。それに声を小さくして自分の本音をぶちまければいいんだから簡単だよ」
影梨「そ、それに・・・ひ、人を刺すなんて、オレには出来ないよ・・・」
マミ「お兄ちゃんと違って殺すわけじゃないだからいいでしょ?」
影梨「で、でも・・・」
アスラ「ならば、刺すのはオレがやってやろう。それで文句ないな?」
影梨「お、お願いします」
マミ「お兄ちゃんだけズルいよ。刺すなら私が刺したい」
アスラ「お前には友達の父親の首をはねるという重要な役割があるだろ」
マミ「あっ、そういえばそうだったね」
影梨「(オレは、とんでもない2人に姿を認識されてしまったようだ・・・)」
アスラ「それより、お前はもう服なんか着るな。ピンク一色の服よりその方が目立つ」
影梨「ちょっと待ってくれ!!もしそれで見える人に見られたらオレの人生終わっちゃうよ」
アスラ「もともと自殺をして人生を終わらそうとしていたんだからそんなもの関係ないだろ」
影梨「そ、そんな・・・」
そして、影梨が全裸になったまま作戦が決行された。
交番の入り口に立って勤務している宮野は暇そうに立っていた。
宮野「ふわぁ~・・・暇だな。なんかスリルある事件とか起きねぇかな」
まぶたが半分閉じ欠けていたその時、両足に激痛が走る。
宮野「痛ぇぇぇっ!?な、何だ!?」
足を見るとおびただしい血が流れていた。
宮野「ど、どうなってるんだよ!!なんでオレの足が!!」
すると今度は腕に激痛が走る。
宮野「うぎゃぁぁぁっ!!だ、だれか助けてくれ!!」
気が付くと宮野の周りはたくさんの木々に覆われていた。
周りは真っ暗で宮野の悲鳴は森の中へ消えて行った。
宮野「な、何だよ・・・どこなんだよここは・・・お、オレはたしかにさっきまで交番で勤務してて・・・お、オレは・・・」
状況がまったく読み込めず、宮野は激しく動揺した。
宮野「お、おい。誰かいないのかよ・・・誰か助けてくれよ・・・お、オレ、こんなところで死にたくねぇよ・・・誰か助けてくれよ!!誰か・・・誰かぁぁぁ!!」
両足が刃物で刺されているため、宮野は動くことができず、ただ叫ぶばかりだった。
その時、かすかな声が宮野の耳に入った。
宮野「だ、誰だ?」
影梨「宮野・・・聞こえるか?」
宮野「だ、誰だ!!どこにいる!!」
影梨「オレだよ。お前によく殴られていた影梨だよ」
宮野「か、影梨だと!?」
影梨「よかった。本当によかった。宮野だけだよ。オレの声を聞きとってくれたのは・・・」
宮野「な、何言ってやがるんだ!!どうでもいいが姿を見せろよ!!隠れるのはなしだぜ!!」
影梨「何を言ってるんだ宮野。オレはずっとここにいるよ。宮野の横にずっと・・・」
宮野の耳元で影梨が話す。
恐る恐る宮野は横を見るがそこには誰もいなかった。
だが確実に声はしていた。
この瞬間、宮野の背筋が凍る。
影梨はもうこの世にいないものだと宮野は思った。
影梨「オレ、ずっと孤独だったよ。誰にも気づいてもらえなくてさ。どんなに声を上げても誰も振り返ってくれなくてさ」
宮野「や、やめろ・・・」
影梨「宮野・・・オレ決めたよ。これからずっとお前の傍にいるよ。死ぬまでお前にずっと付きまとってやる」
宮野「や、やめろ!!やめろぉぉぉぉ!!」
宮野は持っていた拳銃を四方八方に撃ちまくる。
宮野「ど、どこだぁぁぁ!!どこだ影梨ぃぃぃ!!」
影梨「宮野・・・オレはここだよ・・・『お前の目の前にいる』」
宮野「う、うわぁぁぁぁ!!」
この時、初めて宮野は影梨の姿を認識できた。
しかしそのタイミングはあまりにも悪かった。
突然、目の前に影梨が現れたように見えた宮野はその場で気を失ってしまった。
そして・・・
宮野「こ、ここは・・・痛っ!!」
影梨「病院だよ。宮野」
宮野「影梨・・・そこにいやがったか。さっきはよくもオレをビビらせてくれたな」
影梨「相変わらずだな宮野」
宮野「覚悟しろよ、影梨。お、オレにいつまでも付きまとうつもりらしいが、そうはいかねぇぞ。お、オレに近寄ったことを後悔させてやる」
宮野はパイプ椅子を手に持ち、それをブンブン振り回してきた。
宮野「くたばれ!!くたばれ影梨!!」
宮野がパイプ椅子を振り回しながら影梨の方に近づいてくる。
影梨「あ、危ねぇ!!落ち着け宮野」
宮野「お、お前がオレの傍にいる限りなぁ・・・お、オレは・・・オレは一生安心して眠ることができねぇんだよ。早くオレの前から失せろ!!失せろ影梨!!うわぁぁぁぁぁ!!」
宮野は一心不乱にパイプ椅子を振り回した。
アスラ「よかったな。どんな形であれ、お前の事を認識してくれるヤツが現れたぞ。『永遠』にな」
影梨は何も言わず、ただ俯いたままだ。
マミは首を傾げて影梨の顔を覗き込む。
マミ「どうしたの?嬉しそうじゃないね」
影梨「そりゃ・・・嬉しいわけないだろ・・・」
宮野「オラ、どうした!!まだ立ち上がるか影梨!!高校の時みたいにサンドバックにしてやるぜ!!オレは、いるかいねぇんだかわかんねぇ空気のようなてめぇが前から気に入らなかったんだよ!!オラッ!!オラッ!!」
宮野は影梨のいるところとはまったく違う方に向かって罵声を浴びせながらパイプ椅子を振り回していた。
騒ぎを聞きつけた看護師と医者が部屋に入って来る。
看護師「宮野さん、落ち着いてください!!」
医者「早く麻酔を!!」
宮野「死ね、死ね、死ねぇぇぇぇ!!影梨ぃぃぃぃぃ!!あははははははは!!」
狂った宮野をアスラたちは一通り眺めた後、病院を後にした。
復讐としては成功したものの、認識という点では失敗に終わったマミの作戦。
3人は公園で今後のことについて考えていた。
マミ「う~ん・・・肉体的なショックを与えすぎると気を失っちゃうし、かといって精神的なショックを与えすぎると頭がおかしくなっちゃうし・・・」
影梨「やっぱりオレを認知してくれる人間は、どこにもいないんだ」
落ち込んでいる影梨にアスラは言った。
アスラ「心配するな。自殺する時はオレとマミが見送ってやる。最悪、孤独死だけは避けられるぞ」
マミ「明日は、用事があるから無理だけど、また今度探してみてダメだった時は、この人には死んでもらうことにしよう」
アスラ「そうだな。その方がいい」
影梨「え、えぇっ!?」
なぜか生死の決定権を2人に握られていることになっている影梨。
気付かぬうちにタイムリミットが刻一刻と迫っている影梨は、よろよろとおぼつかない足取りで家に帰って行った。




