第40話 アスラとマミ、遊園地へ
【今治遊園地】
アスラとマミは2人で遊園地に来ていた。
マミが友達の『一条真央』という子から遊園地のフリーパスを貰ったのだ。
本当はマミと真央の2人で行く予定だったがフリーパスの有効期限は平日で切れてしまうため、真央の代わりにアスラが行くことになった。
ちなみにマミは学校をサボって遊園地に来ている。
マミ「それじゃ、お兄ちゃん。今日は遊園地の楽しみ方について教えてあげるよ」
アスラ「ほう」
マミ「まずは、あれに乗ろう。これは私のイチオシだよ」
マミが最初に選んだのはジェットコースターだった。
アスラ「これはそんなに面白いのか?」
マミ「うん。すごく面白いよ」
アスラとマミはジェットコースターに乗るため列に並んだ。
アスラ「それで一体どんな風に面白いんだ?」
マミ「う~ん・・・これは、座る位置によって面白さが決まるんだよね」
アスラ「座る位置?」
マミ「そうだよ。理想なのは一番前の席。最悪なのは一番後ろの席なの」
アスラ「それはなぜだ?」
マミ「それは座ってから説明するよ」
そして、いよいよアスラたちの順番が回ってきた。
アスラたちは運よく一番前の席を確保することができた。
アスラ「さぁ座ったぞ。それでこれからどうするんだ?」
マミ「まずは、後ろの人たちの顔をよく覚えておいてね」
アスラ「ああ」
言われた通り後ろを振り返るアスラ。
今回後ろに座っていたのは、ほとんどがカップルだった。
しかも割とイケメンと美少女の組み合わせが多い。
アスラ「その後はどうするんだ?」
マミ「いい?私が合図したらお兄ちゃんは、私と同じ動きをしてね」
アスラ「わかった」
程なくしてジェットコースターが発車する。
そして、ジェットコースターは頂上まで上がり一気にスピードが上がって下降する。
マミ「今だよ!!お兄ちゃん!!」
「きゃぁぁぁ」という絶叫と同時にマミはグルンと首を180度回転させる。
アスラもそれにならって首を180度回転させた。
すると「きゃぁぁぁ」という絶叫と「ぎゃぁぁぁ」という悲鳴を上げる者に分かれ始める。
悲鳴を上げた人々は全員目を見開いてアスラたちを凝視していた。
アスラはその面々を興味深そうに見た。
アスラ「先程の顔とはまるで別人だな。髪の毛は逆立っているし、顔も恐怖に満ちている。これはなかなか見てて面白いな」
マミ「でしょ?」
ジェットコースターが終わった後は、多くの人々がアスラとマミのことを指差したり悲鳴を上げて逃げ出したりした。
そんな周りの反応など気にせずアスラたちは、次のアトラクションへと向かう。
次に向かったのは、お化け屋敷だ。
アスラ「ここは、何が面白いんだ?」
マミ「ここもジェットコースターと同じで顔の変化を見て楽しむんだよ」
アスラ「ほう」
さっそく、お化け屋敷に入ったアスラとマミ。
マミは自分たちのすぐ後ろにいる高校生の男女2人に目を付けた。
マミ「じゃあ狙いは、あのカップルで」
男はイケメンでスラッとした体型。
一方で、女はブスで太った凸凹コンビだ。
マミ「それでは、驚かしに行くとしますか」
マミとアスラは瞬時に2人の後ろに回り込んだ。
ところが、マミが目を付けたこの2人はカップルでもなんでも無かった。
ただ友達ぐるみで集まった男女がくじ引きで決めた組み合わせだっただけである。
男は不機嫌な顔で女を見ていた。
男「(くそ、何でオレがこんなデブとお化け屋敷に入んないといけねぇんだ。本当は目を付けてた子と一緒に入りたかったのによ)」
だが女の方はというとイケメンの男とペアを組めて大興奮。
隙を見て腕を組もうと画策していた。
そんな時、女の肩をマミがポンポンと叩いた。
女「ぎゃぁぁぁ!!」
これはチャンスと言わんばかりに女は、女性とは思えない低い声で悲鳴を上げて男にしがみついた。
男「ひっ!?」
女の太い腕が男の身体に絡みつき男の背筋が凍る。
男「いぎゃぁぁぁぁ!!」
男は髪の毛を逆立て、女を突き飛ばして一目散に逃げ出した。
女はそんな男を追いかけるべく走って行った。
その光景を見てマミは喜んでいた。
マミ「これは想像以上に凄い反応だったよ。これは大成功だね」
アスラ「ああ、女よりも男の方に顔の変化があったのは意外だったけどな」
お化け屋敷を出ると先程の男女を見つけるアスラとマミ。
男の方は他の女たちに軽蔑した目で見られていた。
マミ「どうしたんだろうね?」
アスラ「さあな」
マミ「まぁいいや。さて次はあそこにしよう」
次に選んだのはコーヒーカップだ。
アスラ「これはどうやって楽しむものなんだ?」
マミ「これは景色を楽しむものだよ」
アスラ「景色?」
マミ「見てれば、わかるよ」
アスラはコーヒーカップが動くまでの間、他の客の様子を観察することにした。
するとあるカップルに目が止まった。
男「こう見えてもボクは三半規管が強い方なんだ」
女「へぇ~、実は私もなんだよね」
男「じゃあ、思いっきり回すから覚悟しておいてね」
女「望むところよ」
男「あははは、コーヒーカップの選手権でもあればボクたちの右に出るカップルはいないよね」
女「そうよね~」
アスラ「・・・・・・」
マミ「どうしたの?お兄ちゃん」
アスラ「マミ」
マミ「なに?」
アスラ「そのコーヒーカップとやらを限界まで回せ」
マミ「急にどうしたの?もともとそのつもりだったけどさ」
そしてコーヒーカップが動き出す。
マミ「それじゃ行くよ」
マミは勢いよくコーヒーカップを回し始めた。
アスラ「ほう、これは新鮮な景色だな。戦いでも回転しながら戦うことなんて無かったからな」
マミ「でしょ?」
マミは回転速度をどんどん上げていく。
それを見た先程のカップルの男の方がアスラとマミに対抗意識を持ち始めた。
男「(ぐぬぬ、あんなに勢いよくコーヒーカップを回してボクと勝負するつもりか?さてはボクに恥をかかせようってんじゃ・・・よ~し、見てろ)」
男も対抗して回転速度をどんどん上げていく。
アスラも男の様子を見てマミに言った。
アスラ「マミ、もっと回せ。最悪壊れても構わん」
マミ「それはダメだと思うけど、とにかくもっと回すね」
さらに勢いよく回すマミ。
男「くそ!!どこまでもボクに対抗するつもりだな!!」
女「ちょっ、ちょっと待って。私、結構ヤバくなってきたんだけど」
女の言葉が耳に入っていない男は、ひたすらコーヒーカップを回す。
男「ボクは負けない、負けないぞぉぉぉ!!」
完全に戦場と化したコーヒーカップ。
何の戦いか分からないが2つのコーヒーカップが火花を散らしている。
そして痺れを切らしたアスラがついに動いた。
アスラ「マミ、代われ。今度はオレが回す」
マミ「いいけど、壊さないように軽くやってよ?」
アスラ「わかっている」
アスラはさらにコーヒーカップを回した。
男「オエップ・・・ま、負けないぞ」
アスラに負けまいと男もコーヒーカップを回そうとするがついに女の方に限界が来た。
女「おぇぇぇぇ!!」
女は汚らしい声を上げながら男の顔面に向かって思い切り嘔吐した。
男「うっ!?」
女の嘔吐に男の方も一気に限界点に達する。
男「げぇぇぇぇ!!」
男も勢いよく女の顔に向かって思い切り嘔吐した。
互いにゲロまみれになったカップルは、コーヒーカップの中で力尽きた。
その様子をアスラはジッと見ていた。
その後、一時閉鎖になったコーヒーカップを背にアスラたちは次の場所へと向かう。
次に向かったのはヒーローショーだった。
マミ曰く、ここが一番の娯楽ポイントらしい。
アスラとマミは最前列に座った。
ショーが進んで、ついにヒーローが登場。
歓喜して子供たちは喜んだ。
そして怪人と戦うヒーローに子供たちは大興奮だ。
その時、アスラとマミが動く。
まずマミが怪人にアドバイスを送った。
マミ「そこで防御に入っちゃダメだよ!!相手の足を狙って!!足!!」
すると今度はアスラがヒーローに向かってアドバイスを送る。
アスラ「そこで一気にトドメを刺せ!!相手に反撃をする隙を与えるな!!おそらく相手は、お前の弱っている脇腹辺りを狙って来るぞ!!」
その言葉にヒーローは思わず動きを止めた。
ヒーロー「(なんであの子、オレが脇腹を痛めてること知ってるんだ?)」
怪人「(動きを止めてないで早く攻撃して進めてくれよ。こっちは暑くて仕方がねぇんだからよ)」
アスラとマミはその後もアドバイスを送り続けた。
子供たちに混じって声を張り上げてアドバイスするアスラとマミを見て周りの大人たちは、かなりドン引きしていた。
ところが、この行為が次第に子供たちを巻き込んでいく。
アスラ「そこで逃げに入るな!!脇腹の弱点を逆手にとれ!!」
マミ「脇腹をわざわざ狙う必要は無いよ!!打ち合いなったらこっちが有利なんだから!!」
子供A「そうだ!!そこで打ち合いを挑むんだ!!○○怪人!!」
子供B「頑張れ!!弱点を逆手にとって怪人をやっつけるんだ!!」
子供たちもアスラとマミの言葉を真似して声援を送る。
そのせいで、ヒーロー派と怪人派に分かれてしまっていた。
その様子に親を始め、ステージのスタッフも困惑していた。
ステージに立っている2人もどうしてよいか分からず、次第にアスラとマミの言われた通りに動く操り人形と化した。
そんな異様な雰囲気の中、最後はヒーローが勝利というシナリオ通りに終わる形となった。
この結果にマミはとても悔しそうに嘆いていた。
マミ「あの最後の一撃が避けていれば・・・勝ってたのに・・・」
マミに呼応するように周りの一部からも落胆の声が上がる。
すると隣に座っていた男の子がマミに話しかけて来た。
男の子「お姉ちゃん、○○怪人はよくやったよ。だから最後は拍手してあげようよ」
マミ「それもそうだね。○○怪人、よくやった!!頑張ったよ!!」
拍手して○○怪人の健闘を称えるマミ。
すると他の子供たちもマミに続いて○○怪人を称えた。
アスラとマミ、2人の存在でヒーローショーは、始まって以来の異例の雰囲気での幕引きとなった。




