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私たちの監督は14歳で、かなりヤバいっ!!  作者: フムフム竜
小学生編
36/61

第36話 自殺を決意する黒崎

アスラとの死闘の末、今治中央病院へと緊急搬送された黒崎。


黒崎(母)は、医師から残酷な診断を下された。


医者「これは腰椎椎間板ヘルニアですね」


黒崎母「腰椎椎間板ヘルニア?」


医者「そんなに珍しい病気じゃありませんよ。基本的に安静にしていれば問題ありません」


黒崎母「じゃ、じゃあしばらく安静にしていれば、イリーナはまたバレーが出来るようになるんですね?」


医者「ただ、娘さんの場合、症状は深刻です」


黒崎(母)「え?」


医者「娘さんは下肢の運動麻痺が起きています」


黒崎(母)「そ、それは手術すれば治るんですか?」


医者「ええ。ですが後遺症が残らないという保証はありません」


黒崎(母)「そ、そんな・・・」


そして緊急手術は行われた。


だが、(しび)れの後遺症は残ったままになってしまい、黒崎は以前のようにバレーボールをすることは出来ない身体になってしまった。


ショックを受けた黒崎は1日中、病室で茫然としていた。


その間、黒崎(母)は必死に後遺症を治す名医を探していた。


そんな時、意外な人物が黒崎の病室を訪ねた。


それは新聞記者であるロマンだった。


ロマン「失礼しますよ、イリーナちゃん」


黒崎「・・・私はもうバレーは2度と出来ない。もう私に付きまとっても記事にはならないわ」


茫然としているものの意外にも受け答えをしっかりしている黒崎にロマンは内心驚いていた。


ロマン「お、落ち込んでるキミには悪いんだが、いずれ本人たちの口から語られるだろうから、その前にこれを渡そうと思ってね」


ロマンはそう言ってボイスレコーダーを黒崎に渡した。


内容は常盤ジュニア選手たちの会話が録音されており、黒崎に対する恨みや妬みでいっぱいだった。


妬みの理由は、世間が黒崎に対して異常に注目していたことやコーチであるミハイロフが黒崎に対してのみ特別な練習メニューを課すなどの特別扱いを受けていることにあった。


ロマン「先月の大会、相手は全国準優勝の西条だったとはいえ、キミが負けるのが信じられなくてね。チーム内で何かあるんじゃないかと思って犯罪覚悟で盗聴器を仕掛けてみたんだ。記者の領域を超えた所業ではあるけど、それほどキミには入れ込んでいたということかな」


黒崎は無表情で、そのボイスレコーダーから流れて来る音声をただただ聞いていた。


その空気に気まずくなったロマンは、病室から出ようとする。


だが、それを黒崎に止められた。


黒崎「すみません、ちょっとお願いしたいことが」


ロマン「お願い?」


黒崎「私を今すぐ、愛比売山に連れて行ってください」


その言葉にロマンの目は見開いた。


今はもう夜だ。


この時間に愛比売山へ行くのは黒崎が自殺を決めたことを意味する。


黒崎の目に生気は無かった。


ロマンは、ゆっくりと頷き、黒崎を病院から連れ出した。


そして・・・


ロマン「本当にいいのかい?あそこは未知の領域だ。警察だってあの山には捜査に立ち入ることが出来ず、真相を突き止めようと取材に行った記者も2度と帰って来ないという噂まである」


黒崎は何も答えず、車の窓の景色を眺めるだけだ。


ロマンはそれ以上何も言わず、車を運転していると道路のど真ん中に(たたず)んでいる人がいた。


ロマンの脳裏に幽霊の文字が浮かんでくる。


なぜなら場所はちょうど山道で、愛比売山まであとわずかといったところだ。


ロマンは恐る恐る車のヘッドライトで、その人物を照らすと露出度の高い忍び装束を着た美少女だった。


これにはロマンも思わずニヤリとしてしまったが、すぐにそのいやらしい笑みは消えた。


その少女はニコニコというよりはヘラヘラといった笑みで、こちらに走って向かって来る。


慌てたロマンは操作ミスで、アクセルを踏んでその少女に突っ込んでしまう。


何とか急ハンドルで少女を避け、そのまま140㎞/hまでスピードを上げて山道を走った。


ホッとしてバックミラーを見ると、そこには先程の少女が笑いながら猛スピードで走って追いかけて来る。


ロマン「ひっ!?」


ロマンは情けない声を出しながら必死に限界までスピードを上げる。


しかし距離は離れるどころかどんどん縮まっていく。


ロマン「な、なんだよ・・・なんなんだよ、アイツはっ!!」


焦るロマンは後ろに座っている黒崎を見たが、ただ黙って車に揺られるだけ。


ブルブル震えながら神に祈るロマンだが願いは届かず、とうとう横一列に並ばれてしまった。


ヘラヘラしながらロマンの顔を見る少女。


ロマンは心の底から大声を出して悲鳴を上げた。


今までこんなに叫んだのは人生で初めてのことだったかもしれない。


一番の要因は笑いながら横一列で走っている少女の不気味さもそうだが、何より少女が手にしている物にあった。


少女は男の生首を持ちながら走っているのだ。


少女は走っているので腕の振りでブレて見えにくいはずなのにロマンには生首がハッキリと見えていた。


その上その首は、目を見開いており、運転するロマンと目が合うとこちらに向かって笑みを浮かべているように見えた。


ロマンは、顔面蒼白になりながら恐怖で精神が崩壊寸前だった。


ところが少女は突然ヘラヘラした笑いを辞め、一気に速度を落とす。


ロマン「え?」


一瞬呆気に取られたロマンだが、すぐに気を引き締め運転に集中する。


その反面、すぐさまバックミラーを見て少女の様子を確認するが、少女は立ち止まりどんどん姿が小さくなっていった。


道路の真ん中で残された少女は、がっかりした表情で遠ざかるロマンの車を眺めていた。


??「あ~あ、1人だったら躊躇なく殺したのに残念だったな。2人殺したら5人までっていう命令を破っちゃうことになるもんね。私としては1人殺して1人残すくらいなら1人になっているヤツを狙った方がスッキリするよ。しょうがない・・・最後の1人は強いヤツと殺り合ってこの鬱憤(うっぷん)を晴らすとしようっと」


少女は手に持っていた首を握りつぶして、不敵な笑みを浮かべた。


一方、なんとか気持ちを落ち着かせたロマンはその後、無事に愛比売山まで辿り着くことが出来た。


すると黒崎は車をすぐに降りる。


そんな黒崎にロマンは最後の言葉をかけた。


ロマン「イリーナちゃん・・・さっきのバケモノのこともあるし、くれぐれも気を付けるんだよ」


黒崎「バケモノ?」


ロマン「い、いや・・・いいんだ」


黒崎「それに気を付けても仕方がないですよ」


これから自殺をしようとする人間に気を付けるというのは間違いだと気付いたロマンはただ苦笑いを浮かべるだけだった。


ロマン「それじゃあ、私は行くよ」


黒崎「すみません、ありがとうございました」


ロマン「いいんだよ、それにキミをここまで追い詰めてしまったのも私の持ってきたボイスレコーダーも原因なんだから」


黒崎「いえ、あれが無くてもいずれこの道を辿っていたと思います。母さんには、ごめんなさいと言っておいてください」


ロマン「わ、分かった」


ロマンは黒崎に見送られながら車を走らせるが、すぐに顔面を強張らせた。


愛比売山までの山道は1本道で、その先は行き止まりだ。


帰りはUターンして戻らなければならない。


つまりあの少女と遭遇した道をもう一度通らなければ帰れない。


ロマンは真っ青になりながら、車を走らせた。


ロマンが帰るのを確認すると黒崎は痺れて感覚が鈍くなった片足を引きずりながら森の奥へと歩き出す。


真夜中の森の中は黒崎にとっては初の体験だ。


静まり返る中で、突然バサバサと草木をかき分けてる音や風の音が黒崎にこの上ない恐怖心を与えた。


そんな(おび)える自分に黒崎は疑問に思った。


黒崎「(私は何をそんなに怖がっているの?これから死ぬ人間がどうしてこんなにも怯えているのよ)」


黒崎はその場で座り込んだ後、やはり引き返そうと意を決して戻ろうとする。


その時、突然後ろから誰かに声をかけられた。


??「なぜ戻る?自殺の地まではもう少しだぞ?」


ビクッと身体を震わせながら振り返るとアスラが立っていた。


あまりにも予想外の人物の登場に言葉を出せず黙っているとアスラが先に喋る。


アスラ「ここからしばらく歩くと首吊りには持って来いの大きな木がある。これまで多くの人間がそこで首を吊って死んできた。他にもかなり歩くことになるが飛び降りの場所もある。今まであそこで飛び降りて助かったヤツはいない」


まるで地獄の案内人のように死ぬ場所を勧めて来るアスラに黒崎は信じられないといった表情でゆっくりと後ずさった。


アスラ「どうした?死にに来たんだろ?だったら、そんな顔をしてないで喜んだらどうだ?」


黒崎「わ、私がどこで死のうと勝手でしょ。あなたの指図は受けないわよ」


つい意地になって自殺をすると言ってしまったことに黒崎は内心後悔した。


アスラ「そうか。だったら好きにすればいい。どっちにしてもオレが勧めた場所以外にも死ぬ場所はたくさんあるんだからな」


そう言って森の奥へ消えて行くアスラを黒崎が呼び止めた。


アスラ「どうした?もし気が変わったのなら、さっさと帰れ。ここは自殺しに来たヤツが来る場所だ」


黒崎「その前に、あなたに言いたいことがあるわ」


アスラ「なんだ?」


黒崎はアスラを睨んで言った。


黒崎「あなたの予言通り私は二度とバレーが出来ない身体になってしまったわ」


アスラ「オレのせいだとでも言いたいようだな。だがオレがあんなことしなくてもいずれお前はこうなっていた。痛みもオレとの試合で起きたことじゃない。前の大会から出てたはずだ。それはお前自身が一番よく知ってるはずだろ」


黒崎は目を丸くして驚いた後、少し笑った。


黒崎「そうね。たしかに痛みは前からあったわ。でもその痛みがまさかこんな結果になっちゃうなんてね。それにチームメイトのみんなも私をあんな風に見てたなんて思いもしなかったわ」


アスラ「お前がどう思われていたのか知らんが、やはりよく思われていなかったようだな。アイツらが勝つ気が無い動きをしていたのもそれが理由だろう。ともあれ、あんな動きをしていれば、ある程度見る目があるヤツなら気付くレベルだがな」


黒崎「それもそうね。そんなことも気付けないなんて私って本当にバカ。あのメンバーで全国優勝を本気で目指してたりして・・・それに勝手な思い込みであなたの選手たちにあんなことを言ったりして・・・」


アスラ「思い込み?」


黒崎「私は口先だけの人間が一番嫌いなの。だから最強の野球選手を本気で目指しているか聞いた時の彼女たちの反応を見て、私が最も嫌いな人種だと思ったわ。そんな人達とまして興味のない野球をやるなんて・・・だから彼女たちを突き放すために女子野球をバカにしたのよ」


アスラ「ほう」


黒崎「でも彼女たちの試合での動きを見てそれが間違いだって気付いたわ。あんなに必死になってプレーできる人たちが口先だけで最強の野球選手を目指すわけないって」


アスラ「正直お前が本気だと思える基準はよく分からん。だが一つ言えることは今のお前は嫌いな人種とさえスポーツをすることは出来なくなったということだ」


黒崎は下を向いて俯いた。


黒崎「・・・そうね。私は・・・もう二度とスポーツは・・・バレーボールをすることは二度と・・・出来ないんだわ」


黒崎は涙を流してその場で崩れ落ちた。


アスラ「そうだ。お前は二度とバレーどころかスポーツをすることは出来ない。この先のお前の未来は闇だ」


黒崎「でも私は・・・死にたくない・・・それにまたバレーが・・・いや、そんな高望みもしない。でもせめて普通に歩けるようにはなりたい。そのためなら・・・私は何でもするわ」


アスラ「何でもだと?」


その言葉を聞いたアスラは黒崎の方へと近づいた。


アスラ「何でもすると言ったな。だったら、オレの配下になれ」


黒崎「えっ!?」


アスラ「オレの配下になれば、お前の望みを叶えてやる」


黒崎「は、配下って・・・一体私にどんなことをさせる気なの?」


アスラ「簡単だ。お前には最強の野球選手と最強のバレーボール選手を目指してもらう」


黒崎「!?」


アスラ「それが配下であるお前に与える使命だ。やるもやらないも決めるのは、お前自身だ。だがオレの特訓はかなり厳しい。命懸けの特訓も待っている。そのことをよく考えて決めることだな」


そう言われた黒崎だったが不思議と迷いは無かった。


今の自分に、生きる希望の選択肢はアスラの条件をのむ以外に無かったからだ。


黒崎は、頷いてアスラの申し出を受けようとした。


その時だった。


??「あはっ、あはははは」


狂ったように笑いながら山道で遭遇した少女が黒崎に襲い掛かって来た。


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