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私たちの監督は14歳で、かなりヤバいっ!!  作者: フムフム竜
小学生編
33/61

第33話 波乱の第2セット

試合は進み、5人は黒崎のスパイクに幾度となく挑む。


点差はどんどん開いていくものの、レシーブの技術が格段に上がっていることに黒崎を含めた常盤ジュニアも驚きを隠せなかった。


結局1セット目は21対3で常盤ジュニアが取った。


中山「1セット目は取られちゃったけど、それ以上の収穫はあったよね」


風谷「ああ。これなら第2セットは取り返せそうだな」


第1セットを終えて5人は確かな手応えを感じていた。


そんな中、アスラは常盤ジュニアの監督でもある黒崎(母)にある提案を持ちかけた。


黒崎(母)「えぇっ!?第2セットからハンデを無くせですって!?」


アスラ「そうだ」


黒崎(母)「・・・分かったわ。第2セットからはハンデ無しでやりましょう」


黒崎(母)の承諾も得て始まった第2セット。


サーブはアスラ達からだ。


ボールは拾われ、常盤ジュニアの攻撃。


黒崎「(こんなこと思いたくないけど、ハンデ無しにしてもらって正直助かったわ)」


黒崎の容赦ないスパイクが前衛の中山を襲う。


中山「(大丈夫・・・練習じゃこれ以上のスピードで目を慣らして来たんだもん)」


黒崎「!?」


中山はチームの中で初めて黒崎のスパイクの威力に押されず、ボールをレシーブした。


ボールはネットに当たってそのまま落ちたものの、勢いを付けるには十分なプレーだった。


風谷「スゲェぞ、奈々っ!!よくアイツのスパイクを受けて倒されなかったなっ!!」


中山「へへへ、ありがとう。でも上手く上げられなかったけどね」


森「そこは気にしなくてええやん。欲張ったらキリがないで」


真野「地道に少しずつやっていきましょう」


常盤ジュニアは、この異様な盛り上がりに嫌な雰囲気を感じていた。


選手C「たまたまイリーナのスパイクに耐えたからって、ちょっと調子に乗り過ぎなんじゃない?」


選手D「でもイリーナのスピードに慣れてきたのは事実だし、次からは私たちも攻撃に参加した方がいいわね」


その提案には黒崎は内心反対だった。


黒崎「(何をバカなことを。私のスピードに慣れてきた今、先輩たちがスパイクを打ってどうなるっていうのよ)」


常盤ジュニアの次の攻撃はテンポを変える目的で黒崎でなく、別の選手を使った作戦に切り替えた。


試合は、黒崎のサーブから始まり、真野がレシーブするも失敗して相手のコートに。


常盤ジュニアは作戦を実行する。


思惑通り、完全に黒崎をマークしてブロックに来たことで他の選手への対応はワンテンポ遅れた。


選手C「よし、これなら」


選手Cは慌ててブロックに入ってガラ空きになっていたコースにスパイクを打ち込む。


だがギリギリのところで、アスラがボールを拾った。


選手C「うそっ!?」


黒崎「(ちっ、やっぱりここで出て来るわね)」


アスラの拾ったボールを真野がトスして三崎がスパイクを打ちに行く。


三崎「(ここは絶対決めるっ!!)」


意気込む三崎の前に黒崎のブロックが立ちはだかる。


三崎「(相手のブロックを避けながら、空いてるスペースを見つけて・・・そこに打ち込むっ!!)」


思い切り振りぬいた三崎のスパイクは黒崎の手に当たったものの、何とか相手のコートにポトリと落ちた。


完璧とまではいかないが、初めて黒崎のブロックから得点をもぎ取り1対1の同点に追いついた。


黒崎「くっ!!」


真野「成美先輩、やりましたねっ!!」


三崎「うんっ!!」


ハイタッチをして喜ぶ2人に覆いかぶさるように3人が入る。


それとは対照的にベンチに座っている黒崎(母)はアスラの動きに驚愕していた。


黒崎(母)「あ、有り得ないわっ!!あの子、スパイクを打つ瞬間に迷いもせず落下点に向かって行ったわ。イリーナの時もそうだったけど、あの子には未来が見えてるとでもいうのっ!?」


黒崎「キャプテン」


キャプテン「なに?」


黒崎「さっきのプレーを見て分かる通り、ガラ空きのところに打てば、彼が拾ってきます」


キャプテン「そうね。それで何か対策でもあるの?」


黒崎「いえ、ですがこうなってくると手は一つしかありません」


キャプテン「それは?」


黒崎「残りの5人のいるところに思い切りスパイクを打つしかないと思います」


キャプテン「それじゃ今までと同じじゃない」


黒崎「でも、その方法が1番確率が高いと思います。他のコースを狙うとどういうわけか彼が先回りしてボールを拾ってきます」


キャプテン「・・・・・・」


キャプテンはしばらく考え込んだ後、ニッコリと笑って黒崎の肩を叩いた。


キャプテン「仕方がないわね、この試合はあなたに任せるわ。後ろの方は私たちに任せてあなたは思い切りスパイクをぶちかましてやりなさい」


黒崎「はいっ!!」


常盤ジュニアは黒崎1人に攻撃をすべて任せる作戦に出た。


森「何か黒崎の目がちょっと怖なったきたんやけど」


中山「いよいよ本気にさせちゃったって感じかな・・・」


風谷「上等じゃんか」


試合はアスラのサーブからスタート。


アスラは選手たちの特訓のため、わざと手を抜いた弱いサーブを打っていた。それは2セット目に入っても変わらない。


案の定、サーブはあっさり拾われて黒崎がスパイクを打つ。


黒崎「行くわよっ!!」


黒崎の目に殺気のような気迫が宿る。


ブロックに向かった森と真野の2人はその迫力に気圧(きお)されてしまう。


黒崎「うぉりゃぁぁっ!!」


始めて声を上げながら打ったスパイクはブロックに来た2人の腕に当たる。


だがそのスパイクの威力に森と真野は吹っ飛ぶ形となり、ボールも2人と一緒に床に叩きつけられた。


この光景に両チームとも唖然。


黒崎イリーナが怪物と言われる所以が分かる瞬間だった。


黒崎「いつまで寝てるつもり?早く立ってちょうだい。第2セットはまだ始まったばかりよ?」


森・真野「くっ!!」


その時、アスラがタイムアウトを要求した。


そして・・・


森「はぁっ!?ウチにしばらくプレーするなってどういうことやねんっ!!」


アスラ「お前の腕はそろそろ限界に来てる。これ以上負担はかけられない」


森「でもウチ抜きでどうやって試合をするねんっ!!」


アスラ「勘違いするな。お前をベンチに下げるわけじゃない。ただお前は、ひたすらボールに触らず走ってもらう」


森「ボールはいつどこに来るか分からへんのにどうやって触れずにやるんや?」


アスラ「いいか、次からお前はオレの影になってもらうぞ」


森「は?」


タイムアウトが解けて2対1のスコアで再開。


試合は常盤ジュニアのサーブからスタート。


風谷のレシーブから真野がトスし、ボールは勢いに乗っている三崎へ渡った。


三崎「(相手の手に当たったってことはスパイクを打つ判断が遅すぎたってこと。さっきよりも空いてるスペースを探す速度を速くして・・・思い切り打ち込む)」


黒崎「なっ!?」


キャプテン「ウソでしょっ!?」


アスラ「それだ。オレの思っていた攻撃はまさにこれだ」


この時、三崎が打ったスパイクの体勢は普通なら絶対にケガをするほど上半身を斜めに傾けながら打っていた。


新体操で培ってきた三崎だからこそ出来たオリジナルスパイクだ。


ボールは無人のコースに決まり2対2の同点に追いついた。


アスラ「あんなに特訓では出来ていなかったことが、試合になるとこうも簡単に出来てしまうとはな・・・やはり本番の試合は特訓とはまるで違う」


黒崎「(分からない・・・このチームが全然分からない)」


黒崎(母)「何なのよ、このチームは」


ロマン「どうやら私の言った通りになりそうですね」


黒崎(母)「!?」


ロマン「あのチームはただの素人集団じゃない。バケモノの素人集団ですよ」


黒崎(母)「そのようね・・・でもバケモノならこっちにもいるわ。しかも素人じゃない本物のバケモノがね」


サーブを打つ側になったアスラたちの陣形は今までと変わって、アスラが左前線に。


そして中盤に3人。


後衛に2人なのだが配置が異様だった。


中盤にいる森が左端にいるアスラの真後ろに隠れるようにしており、残りの4人で真ん中から右端を守るというもので、アスラの後方が極端に空いていた。


黒崎「なによ、その陣形は・・・ふざけてんの?」


アスラ「ふざけてるかどうかは、やってみれば分かる」


黒崎「(あんな極端な陣形で、どうするつもりか知らないけど、お望み通りガラ空きのところに打たせてもらうわよ)」


黒崎は、ぽっかりと空いたアスラの後ろのスペースを狙いに行く。


ところが・・・


黒崎「なっ!?」


ブロックに入ったアスラの手が黒崎の視界を完全に塞いでいた。


黒崎「(あ、あの身長差でどうして私より上に飛ぶことが出来るのっ!?で、でもそんなの関係ないわ。さっきみたいに私のスパイクで吹き飛ばしてやるっ!!)」


黒崎の渾身のスパイクがアスラの腕に襲い掛かる。


しかし、あっさりとブロックされ黒崎は目を見開いたまま床に倒れ込んだ。


ロマン「どうやら向こうにはバケモノを超えた異次元の存在がいたようですな」


黒崎「(ば、バカな・・・私のスパイクがブロックされるなんて・・・)」


アスラ「おい、いつまで寝てるつもりだ?早く立て。第2セットは始まったばかりだぞ?」


黒崎「くっ!!」


自分の言葉をそのまま返され、黒崎は怒りで手を震わせていた。


黒崎「(上等じゃない。だったらこっちにも考えがあるわ)」


ついに3対2と勝ち越したアスラたち。


黒崎「(ブロックを避けて打つ技術を持っているのは・・・なにもあなたたちだけじゃないわよっ!!)」


黒崎は三崎のオリジナルスパイクをいとも簡単に真似てスパイクを打った。


このボールに風谷が横っ飛びで手に当てるが拾い上げることは出来ず、得点を許してしまう。


黒崎「よしっ!!試合はこれからよっ!!」


黒崎が気合を入れている中、アスラは不敵に笑っていた。


アスラ「(アイツは気付いていない。自分が重大なミスを犯していることに)」


真野「よ~し、成美先輩に続いて私もスパイクを成功させてみせるぞ」


三崎に続こうと意気込んでいるところに真野にスパイクのチャンスが訪れた。


真野「(私も一時期成美先輩と新体操をやってて柔軟性には自信があるけど、成美先輩には敵わない。でも視野の広さには自信がある。私はメイドカフェでご主人様にお給仕をしている中でも別のテーブルに座っているご主人様の様子をうかがうことが出来ていた。そうやって培ってきた視野の広さは誰にも負けないわっ!!)」


黒崎「うっ!?」


視野を極限まで開いた真野の目に黒崎は圧倒された。


アスラ「真野、最初に会ったあの時、お前はオレたちの相手をしながら別のテーブルに座っていたヤツの異変に気付いて対応していたが、アイツが座っていた位置は通常死角と呼ばれる位置だ。真野、お前の視野の広さは誰にも負けん」


真野「見えたっ!!ここよっ!!」


真野の打ったコースに誰も反応できず、4対3と再び勝ち越し。


そして真野もこの試合初めてスパイクを成功させた。


アスラ「三崎は攻撃するスペースを見つけるのに時間が掛かるのを身体の柔軟性で補い、真野は柔軟性が三崎よりもない分、視野の広さでスペースを探す時間を短縮して補っている」


真野「(なんか、今の感覚は始めてかも・・・でもこの感覚は忘れずにいられそう)」


アスラ「特訓でも何度か成功させても何も掴めなかったくせに、試合でたった1回成功させただけで掴んでしまうとはな」


改めて試合の重要性を感じたアスラであった。


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