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私たちの監督は14歳で、かなりヤバいっ!!  作者: フムフム竜
小学生編
31/61

第31話 バレーボール対決 常盤ジュニア戦、試合開始

特訓を終えた夜、アスラは愛比売寺を訪れていた。


住職「イリーナちゃんの他の試合の映像を見せろなんて珍しいですね。いつもなら一つ見れば十分だって言うのに」


アスラ「今度は黒崎を見るわけじゃない。実は練習を見に行った時に、ほんの僅かな間だったが凄まじいほどの負のオーラを放っていたヤツを見つけたんだ。ソイツの身体から溢れる負のオーラは、あの理事長以上だ。その負のオーラが誰に向けているものだったのか色んな映像を見て確かめる必要がある」


住職「へぇ~、あのアスラくんがそこまで言うとは・・・」


アスラ「オレが思うにアイツは必ず何かの役に立つ」


アスラがその人物を注視して試合の映像を見ていたその時、突如空間が歪み、ゼラが顔を出した。


住職「な、なんじゃっ!?」


ゼラ「アスラ様、少しいいですか?」


アスラ「どうした?」


ゼラ「大変言いにくいことなんですが、近いうちにクラーチがこの世界に来るみたいなんですよ」


アスラ「なんだとっ!?クラーチがっ!?」


ゼラ「はい」


アスラ「アイツを来させるように命令したバカは一体誰だ」


ゼラ「それは・・・お母様でございます」


アスラ「!?」


アスラは一瞬言葉を失った。


なぜなら、アスラにとって母親は最も苦手とする存在だからである。


アスラ「・・・おふくろが命令した理由は何だ?」


ゼラ「ここの世界での生活について、マミ様に聞いて来いとのことで・・・」


アスラ「そういえばクラーチがマミの世話係だったな」


ゼラ「はい」


アスラ「だが、あのクラーチがこの世界に来て話を聞くだけで帰るとは思えん」


ゼラ「ええ。ですから、念のためここの世界の強化をしておこうと思いまして。我々があらかじめやっておけばクラーチが暴れた場合でも世界が崩壊するようなことはありませんから」


アスラ「いや、お前はともかく他のヤツらは手を抜く可能性がある。世界の強化に関してはオレもやる」


ゼラ「分かりました」


黒崎との一戦を前に思わぬ問題が出てきてしまった。


そして次の日・・・


黒崎はあの日以来、アスラに言われたことがずっと気になっていた。


学校の授業にも身が入らないくらいに。


休み時間でも何もせずただボ~ッと過ごしていた。


そんな時、クラスの男子生徒から声がかかる。


男子生徒A「お~い、黒崎」


黒崎「・・・何よ?」


男子生徒A「野球する人数が足りないからお前に入ってもらいたいんだ」


黒崎「ええ、いいわよ」


男子生徒B「今日はキャッチャーを守ってくれ。お前の球は速すぎて誰も捕れないからな」


黒崎「情けないわね、あんな程度のボールを捕れないなんて。あなた一応野球やってるんでしょ?」


男子生徒B「面目ない」


黒崎は普段から女子より男子と遊ぶことが多い。


というより今日のように助っ人として頼まれることがほとんどだ。


黒崎の並外れた身体能力は上級生であっても(かな)う者はおらず唯一対抗できるのは河西(かわにし)という同じクラスの生徒だけだった。


だがその河西は、ほとんど学校には来ないので黒崎は、毎日引っ張りだこ状態。


特に助っ人として頼まれることが多いのが野球だった。


男子生徒A「よ~し、満塁だ。黒崎1発頼むぞ」


黒崎「それは無理だと思うけど?」


男子生徒B「黒崎はどんな状況でも敬遠だもんな」


男子生徒A「汚ねぇぞ、ピッチャー。女子相手に敬遠なんて恥ずかしくないのか」


男子生徒C「無茶言うなよ。こんなバケモノ抑えられるわけねぇだろ。ホームラン打たれて4点取られるより敬遠して1点の方がマシだ」


黒崎は構えながら、最強の野球選手を目指していると言った5人のことを考えていた。


黒崎「(チームプレーが必要とされる競技に本格的に打ち込む際、すべてを賭けて取り組む人と楽しみながら取り組む人に分かれるけど、私はすべてを賭けて取り組む方。あの時、最強の野球選手を本気で目指しているのかを問いかけた時の5人の雰囲気を見て、私は本気で最強の野球選手を目指しているようには見えなかった。そんな口先だけの人間と興味がさほどない野球をするなんて冗談じゃないわ。私はああいう口先だけの人間が1番嫌いなのよっ!!)」


黒崎は敬遠ボールをリーチのある腕で捉えてグラウンドの外まで飛ばした。


男子生徒C「け、敬遠ボールを場外ホームランかよ・・・」


黒崎「(明日、どんな方法で私を潰すつもりか知らないけど、一流のバレーボール選手を本気で目指している者のプレーがどんなものか見せてあげるわ)」


それぞれの思惑を胸に決戦の日は来た。


黒崎「よく逃げずに来たわね。その度胸だけは褒めてあげるわ」


アスラ「お前の方こそバレーは十分楽しんだか?これからバレーが出来なくなるんだ。今の内にバレーボールの感触でも噛みしめているがいい」


黒崎「余計なお世話よ」


黒崎(母)「一応聞いておくけど、暴力行為に走るんじゃないでしょうね?」


アスラ「心配するな、そんなことをせずともちゃんとルールに沿ってやってやる」


ミハイロフ「ルールは公式と同じで3セットマッチの21点先取で行う」


黒崎(母)「でもあなた達は半分の11点先取でいいわ。どう?」


アスラ「わかった、それでいい」


アスラ以外の面々は不安に満ちていた。


真野「一応、やるだけのことはやったつもりですけど、スパイクも全然決められなかったし」


森「レシーブの方もスピードに反応は出来ても上手く拾うことが出来へんかったからな」


風谷「まぁ、2日の練習じゃあれが精一杯だ」


中山「後は本番でどれだけ実力が発揮できるか」


三崎「それとアスラ兄ちゃんのカバー次第ね」


アスラ「いいか、この試合に勝つのは当然だとしても問題はいかにこの経験を意味のあるものにするかだ。今日は試合を通してお前らの身体能力と野球に繋がる技術を磨いてもらう。だからオレは極力動かず、お前らに任せるつもりだ」


不安を助長するような発言に5人は、ため息をついた。


一方、常盤ジュニアの選手たちは5人の姿を見てクスクスと笑っていた。


選手A「見て、あの人達の腕。あんなにテーピング巻いちゃってさ」


選手B「この日のために相当練習したんだろうけど、たった2日でどうにか出来ると本当に思ってんのかしらね?」


森「何かウチらのことバカにしてるみたいやな」


風谷「この借りは試合で返させてもらうぜ」


試合前に早くも闘争心むき出しなる5人。


さらに試合開始と同時に常盤ジュニアの面々に5人はさらに闘争心を燃やした。


中山「あれ?黒崎さん以外全員正式のユニフォームじゃないんだけど・・・」


森「さすがに素人相手にレギュラーは出す必要は無いっていうことなんちゃう?」


風谷「アタシたちも舐められたもんだな」


補欠メンバーで構成された常盤ジュニアに反発するように最初のサーブ権をアスラたちは敢えて放棄し、常盤ジュニアからのサーブで試合が始まった。


サーブをするのは黒崎だ。


5人とも息をのみながら構える。


黒崎(母)「(この試合、イリーナ1人で勝つことが出来るわ。あの子たちがバレーのルールを知ってるか分からないけど、小学生には特別ルールがある。このルールがイリーナの力を存分に発揮することになるわ)」


不敵な笑みを浮かべる黒崎(母)の前で黒崎は強烈なサーブを打ち込んだ。


ボールは右端のギリギリの絶妙なコースに。


中山「来たっ!?」


中山は飛びつくように手を突き出した。


しかし、手に当てたボールは後方の場外へと飛んで行った。


中山「ご、ごめん」


風谷「何言ってんだよっ!!場外に飛んだとはいえ、あのコースに触れただけでも凄いことだろっ!!」


中山「ははは、練習よりもスピードが全然遅かったからね」


森「よっしゃっ!!とりあえず、あのサーブのスピードに困ることはあらへんってことやなっ!!」


一方の常盤ジュニアの面々は目を見開いて驚いていた。


選手A「イリーナのサーブについていくだけじゃなく、あのギリギリのコースを手に当てるなんて・・・」


選手B「で、でもマグレよ。マグレに決まっているわ」


そんな楽観的に捉えている選手たちの中で、黒崎だけは怒りに手を震わせていた。


黒崎「(私のサーブが遅い・・・遅いですって!?)」


これまで多くのバレーボール選手たちは黒崎のサーブのスピードに翻弄され苦渋を舐めてきた。


そのサーブのスピードに絶対の自信を持っていた黒崎にとって、素人集団のこの言葉はこの上ない屈辱の言葉だ。


黒崎「(ちょ、ちょっとボールが見えたぐらいでいい気にならないでよねっ!!)」


黒崎のサーブは左奥のギリギリのコースへ。


真野「(来たっ!!これは取れるっ!!)」


真野は思い切り手を伸ばす。


またしてもボールは手に当たったものの、上手く拾うことは出来なかった。


真野「う~・・・タイミングは良かったのにっ!!」


三崎「仕方がないわ。でも練習以上にボールを拾う形には出来てるみたい。これならいけるわ」


真野「スピードも練習より全然遅いですし、これなら怖くありません」


その言葉に黒崎の怒りがさらに増す。


反対に常盤ジュニアのベンチには焦りが見えていた。


黒崎(母)「ね、念のためレギュラーはいつでも試合に出れるように身体を動かしてなさい」


黒崎(母)の号令でベンチに座っていたレギュラー組は慌てて身体を作り始める。


黒崎(母)「これは甘く見ると酷い目に合うかもしれないわね」


その後も、黒崎のサーブに幾度となくボールに喰らいつく。


6対0とリードしながらも僅かな間にレシーブが上達しているのを見た黒崎は、その急成長ぶりに驚いていた。


黒崎「(どうやら最強の野球選手を目指すのは口先だけじゃないかもしれないわね。でもそんな程度で勝てるほどバレーは甘くないわよ)」


黒崎はまたしても強烈なサーブを抜群のコントロールでコートギリギリの位置に放った。


森「おっしゃっ!!今度こそ取るでっ!!」


森がレシーブしたボールは始めて真上に飛んだ。


中山「ナイスっ!!里奈っ!!」


森がレシーブで上げたボールを中山が真野にトスする。


真野「里奈先輩がレシーブしたボールは絶対に生かすっ!!」


気迫あふれる真野は思い切りジャンプしてスパイクを打つ。


だが・・・


真野「(えぇっ!?どうしてここにいるのっ!?)」


真野の前には黒崎の腕が立ちはだかった。


真野のスパイクは黒崎に見事にブロックされ、初得点とはならなかった。


真野「ど、どうして?サーブで後衛のポジションにいる人がどうして前衛に来ることができるの・・・これって」


ルール違反と言おうとした真野の言葉を黒崎が遮った。


黒崎「これが小学生のバレーボールの特別ルールよ」


真野「と、特別ルール?」


黒崎「小学生のバレーボールにはローテーションがないわ。だから前衛や後衛の制限もない。つまり私はどこの位置にいようとも、すべてのプレーで攻撃にも守備にも参加することが出来るわ」


この特別ルールの存在は、5人にとってショックがあまりにも大きかった。


当初の作戦では、黒崎が前衛にいた時のみ三崎と真野の2人で攻め、黒崎が後衛にいてブロックに参加できない時は風谷、森、中山の3人で攻めるという作戦であった。


さらに黒崎が後衛にいる時は、近距離でのスパイクを受ける心配がないので、その点も考慮して勝算を付けてきた。


だが特別ルールの存在のせいでこの作戦はすべて意味をなさなくなった。


それどころか黒崎の近距離スパイクやブロックをずっと受け続けなければならない。


アスラを除いた5人は完全に意気消沈していた。


黒崎「(特別ルールの存在で完全にこっちのペースね。だとしたら『アレ』で、一気に試合を決めてやるわ)」


黒崎はニヤリと笑みを浮かべた。



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