第26話 深まる謎 宮西のマスク
藤田の様子が気になり尾行することにした3人。
藤田は、宮西と例の交差点で待ち合わせをしていた。
この時、中山は前から思っていた疑問を口にする。
中山「宮西さんってさ、ずっとマスクしてるよね」
風谷・森「たしかに」
3人は藤田の浮かない顔の原因は、宮西がマスクを外さないことにあるのではないかと思った。
2人の向かった先は今治体育館だった。
そこで宮西と藤田は、ランニングコースをひたすら走る。
もちろん宮西は走っている時も、ずっとマスクをしていた。
森「ここまで頑なにマスクを外さないのは、かなり怪しいで」
風谷「あのマスクに何か秘密があるのは間違いないな」
中山「ひょっとして宮西さんって・・・」
中山が言いかけた時、後ろから誰かに声をかけられた。
??「そんな入り口で並んで立ってられると迷惑なんだけど?」
後ろを振り返ると、ものすごく背が高い外国人少女が立っていた。
中山「えっと・・・ごめんなさい」
??「今度から気を付けてよね」
すれ違い様に見えた少女のカバンには『常盤ジュニアバレーボールクラブ』と書いてあった。
中山「今の子、凄くデカかったね。普通に170㎝以上はあるよ」
風谷「ジュニアってことはアタシ達と同じ小学生か?」
森「小学生で、あの身長はデカすぎるやろ」
風谷「それより場所を移した方がいいんじゃないか?」
森「せやな」
3人は、人の邪魔にならない場所に移って再び視線を藤田たちに戻す。
2人はランニングを終え自販機の飲み物を飲んでいた。
その時の宮西の行動に3人は驚愕した。
なんと宮西は注射器をマスクの上から刺して、飲み物を飲んでいたのだ。
藤田はその光景に慣れているようで、気にせず会話を楽しんでいる。
このマスクを頑なに外さない行為を見て、中山は確信を得た表情で風谷と森に言った。
中山「さっきも言おうと思ったんだけど、宮西さんって『口裂け女』なんじゃない?」
中山の言葉を聞いて2人は笑うことはせず、ただ静かに頷いた。
どうやら2人も同じことを考えていたようだった。
口裂け女というのは、あくまでたとえではあるがマスクの下には整形に失敗した無残な姿が隠されているのではないかと3人は思っていた。
藤田の悩みは3人の思惑通り、宮西のマスクのことだった。
付き合っていた当初は看護師の仕事をしているということもあり、感染防止のためにマスクを外さないものとばかり思っていた。
ところが、本格的に付き合い始めてデートの頻度が増えていく内に宮西の行動に違和感を覚えるようになる。
午前中にデートをする時は決まって午前中で切り上げ、昼頃からのデートの時は、夕食前に必ず切り上げる。
映画館に行ったときは、飲食を一切せずに観賞しカラオケでもマスクをしたまま熱唱する。
そして決定的だったのは、飲み物を飲むときに注射器を使って飲んだことだ。
藤田としては気になるところではあったがこれは触れてはならないものだと感じて何も聞くことができなかった。
宮西はマスクのことを除けば性格もよく気も利くとても良い女性だ。
そんな彼女を手放したくないという気持ちとマスクの下がどうしても気になるという気持ちがぶつかり合い藤田はすごく悩んでいた。
そして次の日・・・
夜に尾行したおかげで、またしても遅刻をした3人に藤田は怒り心頭だった。
3人はそれを誤魔化すように宮西のマスクのことについて聞いた。
風谷「何で宮西さんは、ずっとマスクを付けてるんだ?」
森「やっぱり整形に失敗してしもうたんか?」
中山「先生はマスクの下を見せてもらったことがあるんですか?」
自分も気になって悩んでいたことを質問攻めにされて動揺した藤田は3人の質問に素直に答えてしまう。
藤田「か、彼女は看護師なんだ。感染防止のためにマスクをするのは当然だろう」
森「でも注射器を使って飲み物を飲む必要なんかないやん」
藤田「うっ!?そ、それは・・・」
森に決定的な点を突かれて言葉が出なくなる藤田。
中山「先生、宮西さんのマスクの下がどうなってるか確認した方が良いと思いますよ」
藤田「確認ってお前なぁ・・・」
風谷「確認して、もし口裂け女みたいな口だったらどうするんだ?」
藤田「く、口裂け女・・・」
中山「とにかく、マスクの件は、今のうちにすっきりさせとかないと結婚の話になった時、困ることになりますよ」
藤田「た、たしかに・・・」
完全に3人のペースに、はまってしまい悩んでいたその時、慌てた教員が藤田の元へとやってきた。
教員「ふ、藤田先生!!お母さんの容体が!!」
藤田「!?」
藤田は血相を変えて病院へと向かった。
【松山病院】
なんとか一命は取り止めたものの、覚悟はしておくようにと医師に言われた藤田。
重い足取りで病室に向かうと中には宮西がいた。
藤田「勤務中にわざわざ抜け出してきてくれたのか?」
宮西「違うわ、今は休憩時間なの」
宮西は母親が入院していた病院の看護師だった。
藤田「そ、そうか・・・」
会話が途切れると病室は静寂に包まれる。
母の死がもうすぐそこまで迫っている。
そう考えた藤田は無我夢中で宮西の手を握った。
宮西「!?」
藤田「か、和江さん!!」
宮西「は、はい?」
藤田「こ、こんな状況で言うことではないのはわかっているんですけど・・・お、オレと結婚してください!!」
宮西「えぇっ!?」
告白の時と同様、いきなりのプロポーズ。
それに今回は状況が悪い。
死にかけている母親の前でのプロポーズだ。
宮西は驚いて目を丸くしたまま動けずにいた。
勢いで告白した後に、さすがに言うタイミングが悪すぎたと後悔する藤田。
ところが宮西は藤田の手をギュッと握り、微笑んで答えた。
宮西「こんな私でよければ、よろしくお願いします」
今度は藤田が目を丸くして動けなくなった。
どう考えてもタイミングが完全にアウトな上に付き合って、まだ日も浅い。
プロポーズをしておいてなんだが、とてもOKを貰える要素はまるでなかった。
これは夢ではないかと何度も顔をつねる藤田だったが、ようやく実感が湧き始めたのか小さくガッツポーズをする。
藤田「あ、ありがとうございます」
藤田はそう言って宮西に頭を下げた。
そして、2人で手を絡ませながら眠っている藤田(母)を見守った。
その後、藤田(母)は無事意識を取り戻した。
藤田は意識を取り戻した母親にすぐに結婚報告をすると喜びのあまり土下座して宮西に御礼を言った。
藤田は母親が生きている間にと急いで知り合いのツテで結婚式場を確保し、翌日に結婚式をすることになった。
そして、夕方・・・
結婚式の準備や段取りで忙しい中、藤田は愛比売山に来ていた。
藤田はアスラと特訓した場所を目指して森の中へ入って行く。
すると近くでたまたま山登りを始めようとした3人が藤田に声をかけた。
風谷・森・中山「先生、こんなところでどうしたんですか?」
藤田「お前らこそ、こんな時間に何をやってるんだ?」
風谷・森・中山「え、えっと、それは・・・」
思わず藤田に声をかけてしまったことを後悔する3人。
これ以上隠すのは無理だと悟った3人は藤田に、これまでのことを話した。
話を聞き終えると藤田は大きなため息をついた。
藤田「本来ならば問答無用で、お前らを家に送り返して親にすべてを話すところだ。だが、オレもアスラくんにはかなり助けてもらった。結婚することができたのもアスラくんの特訓のおかげだからな」
風谷・森・中山「えぇっ!?け、結婚って!?」
驚く3人に藤田は自分が明日結婚することを打ち明けた。
最初は3人とも温かく祝福してくれたが、すぐに複雑な表情になる。
藤田「どうした?」
森「マスクのこと・・・まだ聞いてへんのやろ?」
中山「本当にマスクのことをハッキリさせないまま、結婚しちゃっていいの?」
藤田「ああ」
藤田の即答に3人は驚いた。
藤田「たとえ、口裂け女であってもオレは彼女を受け入れる。それにオレもいい歳した40手前のオッサンだ。顔もいいわけじゃない。彼女のことをどうこう言える立場じゃないんだよ」
風谷・森・中山「先生・・・」
藤田「そういうことだから、オレは彼女と結婚する。いろいろとありがとな」
そう言って藤田は森の奥へ消えて行く。
3人は藤田を黙って見送った。
風谷「さて、アタシたちも自分の特訓を始めるか」
森「せやな」
次の日・・・
特訓が終わった3人は、アスラに藤田のことを聞いた。
森「昨日、先生が会いに来たやろ?」
アスラ「ああ」
風谷「何て言ってたんだ?」
アスラ「無事に攻略できたことに礼を言ってきた。特訓が未完成だったからアイツを攻略する可能性はかなり低いと思っていたがな」
その時、山登りを終えた三崎たちもやってきた。
森「お?成美たちも着いたみたいや」
真野「さっき攻略って言葉がチラッと聞こえましたけど、ゲームの話でもしてたんですか?」
中山が三崎と真野にこれまでのことを話した。
話を聞いている途中で真野がある疑問を口にした。
真野「ところでアスラお兄ちゃんは相手の人のことについて、すごく詳しいみたいですけど、もしかしてその人の後をつけたりしてたんですか?」
アスラ「そんなことをする必要はない。アイツは元々オレの配下のようなものだったからな」
風谷・森・中山「えぇっ!?」
三崎「それじゃあ、マスクの秘密のことも?」
アスラ「ああ。知ってる」
3人は血相を変えてアスラの方へ詰め寄った。
風谷「なんでそんな肝心なことをもっと早く教えてくれないんだよ!!」
中山「てっきり宮西さんの身体能力のことしか知らないとばかり思ってたのに!!」
森「おかげで先生はマスクの秘密を知らないまま結婚してもうたやないか!!」
アスラ「マスクの心配など不要だ。なぜならアイツは宮西を攻略したとオレにハッキリ言ったんだからな」
ここへ来てアスラと藤田の解釈のすれ違いが、仇となってしまったことに気付く3人。
焦りから3人の背中から冷や汗が滲んできていた。




