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私たちの監督は14歳で、かなりヤバいっ!!  作者: フムフム竜
小学生編
25/61

第25話 片思いは実るのか? 藤田、運命の告白

アスラに1日考えろと言われた藤田は松山病院へ来ていた。


藤田にとっては、たとえ年齢を重ねたとしても困った時や悩み事がある時は必然的に親のところに行ってしまうようだ。


病室に入ると藤田の母親は温かく迎えてくれた。


あと1か月で、この顔も二度と見られなくなる。


そう思うだけで藤田の心はとても痛かった。


親と過ごせる時間はもうないというのに、何をすればいいのかわからない。


話したいことが山ほどあるはずなのに、いざ話そうとすると全然話が浮かんで来ない。


そんな中、1つだけハッキリとわかることがある。


それは母の望みであり自分の悲願でもある彼女を作ること。


これが自分の今できる最高の親孝行だ。


心の整理を終えると藤田は母親に言った。


藤田「母さん・・・オレ、絶対に彼女を作ってここに連れて来るから」


藤田(母)「えぇっ!?そ、そりゃ嬉しいけど急にどうしたんだい?まさか私に気を遣って無理に彼女を作ろうとしてるんじゃ・・・」


藤田「そ、そういうわけじゃないよ。ほ、本当に好きな人ができたんだ」


藤田(母)「そ、そうかい?それならいいけど・・・」


藤田「(39歳にもなって好きな人ができたことを親に報告するなんてかなり恥ずかしい気がする・・・でもこれでスッキリした。あとは宮西さんを彼女にするまで特訓を続けるだけだ!!)」


藤田の決意は新たに固まり命懸けの特訓が始まった。


仕事の方は長期休暇を取り、一日のすべてを特訓に費やす。


これには藤田の本気度が伺えた。


そしてアスラもそれに応えるべく予定よりも早く初日から格闘技の特訓を導入した。


この格闘技の特訓で藤田はアスラの異常性を垣間見えることとなる。


アスラ「これから格闘技の特訓を始める。格闘技はオレの専門だ。オレの特訓を受けたヤツは全員バケモノになっている」


藤田「ば、バケモノ?」


アスラ「だがお前の場合は時間がない。だから目標を最低限達成できるだけの技術を身に着けさせる」


藤田「あ、ああ」


藤田は意味がわからないといった感じでアスラの指導を受けた。


スパルタかと思われた格闘技の指導は以外にも丁寧で藤田の力量にちゃんと合わせた内容であった。


内容は攻撃と防御の基本的な指導。


実に普通に思われた特訓だったが・・・


アスラ「一応今後の予定について言っておくことがある」


藤田「なんだ?」


アスラ「ある程度攻撃と防御の特訓が済んだら次は『人の殺し方』についての特訓を行うつもりだ」


藤田「・・・は?」


アスラ「だがこれはあくまで最終手段の時に使う技術だ」


藤田「え?ちょ、ちょっと待てよ。さ、最終手段?い、一体何を言ってるんだ?それに技術って?」


アスラ「そうだな・・・たとえば相手の首を簡単にへし折れる技術。相手の心臓を楽に止められる技術。脳の神経を狂わせる技術などだ」


藤田「へ、へぇ・・・そ、そうなのか」


あまりにぶっ飛んだ内容に藤田はあまり本気にはせず、苦笑いをするだけだった。


だがいざ人殺しの特訓が始まると藤田はアスラの危険性に恐怖を抱くようになる。


アスラの人殺しについての解説は攻撃や防御の指導と比べて懇切丁寧に教えていた。


どこを殴れば楽に息の根を止められるか。


またどのくらい衝撃を与えればそれが可能なのかをとてもリアルなマネキンを使って説明していた。


その饒舌ぶりはアスラが殺人鬼ではないかと思えてしまうほどだ。


しかもその際に見せるアスラの生き生きとした顔はアスラの異常性を物語っていた。


自分は今、恐ろしい存在を目の前にしている。


藤田はそう思った。


このままアスラから逃げてしまおうかという考えも当然よぎったが母親の存在が藤田の想いをとどまらせた。


こうしてアスラへの恐怖心を抱きながらもプール、格闘技、首吊りの特訓をひたすら続けた。


その中で首吊りの特訓だけは未だに拒絶反応を起こしている。


この特訓に関しては慣れるものではなく、藤田に肉体的にも精神的にも相当なダメージを負わせているのは言うまでもない。


毎回特訓をする直前になるとガタガタと震えだし、絞首刑を待つ死刑囚のように(おび)えていた。


だがそれでも母親の願いのため、そして自分自身の幸せのため必死に首吊りの特訓に耐えた。


そんな特訓が続いたある日・・・


アスラ「そろそろ始めるぞ」


藤田「あ、ああ」


いつものようにアスラが藤田を担ぎ上げてロープに首を通していると宮西が青ざめた表情になって慌てて止めに入った。


宮西「ちょ、ちょっとアスラくん!!一体何をやってるの!?」


アスラ「見てわからないか?特訓だ」


宮西「と、特訓って・・・こんなのただの拷問じゃない!!」


アスラ「本人も望んでやっているんだから別に問題ないだろ」


宮西「問題大ありよ!!そもそもどうして、こんなことしなきゃいけないの!?」


アスラ「それを、お前に話す必要は・・・」


その時、アスラと宮西の会話に藤田が割って入って来た。


藤田「そ、それは・・・キミに相応(ふさわ)しい男になるため・・・だよ」


首が締まっている中、藤田は声を絞り出す。


アスラ「なぜここで話す?まだ特訓は完成していないんだぞ?」


藤田「か、完成していなくても・・・オレは正々堂々と彼女に・・・ぐぇっ!!」


そう言って藤田は嘔吐し、気を失ってしまった。


宮西「だ、大丈夫ですか!!しっかりしてください!!」


アスラ「心配するな。いつものことだ」


そう言いながら慣れた手つきで藤田の首からロープを外す。


藤田が木から降ろされると宮西は急いで呼吸を確認した。


藤田が生きていることを確認するとはぁ~とため息をついてアスラに尋ねた。


宮西「さっきこの人が言ってたけど、この特訓と私に一体なんの関係があるの?」


アスラ「どういう経緯で、お前のことを知ったか知らないがコイツはお前を攻略したいそうだ」


宮西「こ、攻略ってね、アスラくん。そういう言葉は別の意味で使うんだけど・・・」


アスラ「ということは、オレの言い方は間違っていたのか?」


宮西「そ、そういうわけでもないけど・・・」


彼女攻略という言葉があるように攻略という言葉は付き合うという意味で捉えられなくもない。


まして言っているのは、あの戦闘狂のアスラだ。


アスラのことをよく知っている宮西は、それ以上何も言うことはできなかった。


アスラ「アイツは、お前を攻略するために、この命懸けの特訓を受けることを決断したんだ。お前という人間を倒すためにここまでする男は、そうはいないだろう」


宮西は倒れている藤田を見た。


アスラ「お前はどうするつもりだ?コイツの挑戦を受けるのか?」


宮西「ちょ、挑戦って?」


アスラ「(とぼ)けるな。わざわざ説明しなくてもわかるだろ」


宮西「・・・・・・」


宮西は倒すという言葉を自分を落とすという恋愛の意味で。


そして挑戦という言葉を告白の遠い言い回しに使っているのだろうと解釈していた。


当然、ほとんど知らない人間の告白の返事を聞かれても宮西としてはすぐに答えることはできなかった。


宮西はどうこの場を切り上げればよいか考えていた。


すると藤田が意識を取り戻して起き上がる。


アスラ「起きたようだな」


藤田「あ、ああ」


アスラ「少し休んだら、もう一度やるぞ」


藤田「わ、わかった」


明らかに顔色が悪く無理をしていることは誰が見ても明らか。


宮西としては、とても放っておくことはできなかった。


宮西「もう辞めてください!!こんなこと続けたら、あなた本当に死んじゃいますよ!!」


宮西の問いかけに藤田が答えようとするとアスラが代わりに答えた。


アスラ「止めても無駄だ。コイツは、お前を攻略するまで辞めることはない。この特訓は強靭な肺活量を得ることを目的としている。なぜ強靭な肺活量が必要なのかは、お前が一番よく知ってるだろ?」


宮西「うっ!?」


アスラのこの一言で宮西の表情は、怯えたような表情にガラリと変わった。


そして、宮西は森の奥へと走り去ってしまう。


藤田は慌てて宮西の後を追った。


しばらく進むと宮西は茂みで体育座りをしながらガタガタと震えていた。


女性との付き合い方がわからない藤田は、励ましの言葉をかけるべきなのか。


それとも宮西が落ち着くまで何も言わずに傍にいるべきなのかかなり悩んだ。


そして結局、何も言わずに宮西の横に座ることにした。


しばらくすると、落ち着きを取り戻した宮西が藤田に声をかけた。


宮西「幻滅しましたよね?私のこんな情けない姿を見て」


藤田「え?」


宮西「アスラくんから全部聞きました。あなたがその・・・私のことをどう思っているのか・・・」


藤田「・・・・・・」


2人の間に長い沈黙が流れる。


先に沈黙を破ったのは藤田の方からだった。


藤田「こ、こんな時に言うのもアレなんですけど、オレ・・・交差点であなたを見た時から・・・ずっと好きだったんです!!そして、この前あなたに助けられたあの出来事が、オレの想いをさらに強くさせました!!だからオレは、そんなあなたに少しでも見合える男になりたいと思って・・・」


宮西「・・・・・・」


再び、気まずい沈黙が流れる。


すると今度は宮西が口を開いた。


宮西「あの首吊りの特訓をする理由について、強靭な肺活量を得る以外にアスラくんから何か聞いてますか?」


藤田「いえ。何度か聞こうと思ったんですけど、あんなに凄い迫力で強靭な肺活量が必要だと言われると何か聞き辛くなっちゃって・・・それにそういうことはたぶん聞いても教えてくれないだろうと思ってましたから・・・」


それを聞いた宮西は少し安堵した表情をした後、なぜか残念そうな表情を浮かべた。


その残念そうな表情を見て、自分が言った返答がマズかったと思った藤田は慌てて話題を戻す。


藤田「と、とりあえずオレの想いは伝えましたけど、その場で返事をくれとは言いません。ただ仮に付き合うのは無理だとしても、せめてオレと友人関係になってもらえないでしょうか・・・」


宮西「友人・・・ですか?」


藤田「はい」


しばらく考え込んだ宮西だが、ニッコリと微笑んだ。


宮西「私でよければ、ぜひ友達になってください」


藤田「ほ、本当ですか!?」


宮西「はい」


藤田「よ、よろしくお願いします!!」


こうして勇気を出した告白は成功したとまでは言えないが、友人関係という新たな第一歩を踏み出した。


その後、藤田は宮西に見合う男になるべくアスラとの特訓にさらに励んだ。


強靭な肺活量を必要としている理由をアスラから聞こうと思ったが、宮西とデートを重ねていく内に、その理由を藤田は理解した。


宮西は看護師を務めており、身体を動かすことがなにより好きだった。


中でも彼女が一番好きだったのはランニングで休みの日はよく愛比売(えひめ)山の登山コースを走っている。


その走る速度はマラソンランナーにも匹敵するぐらいの速さだ。


当然、藤田が宮西の速度についていけるはずもなく、情けない姿を何度も見せた。


だがそれでも藤田は宮西との距離を縮めるためにデートの時は、必ずランニングが出来るスポットを取り入れるようにしていた。


そんな努力の甲斐あって、ほんのわずかな期間で藤田は宮西と恋人関係に発展。


さらに藤田の母親の健康状態も安定しており、まさに順風満帆な生活を送っていた。


これには、3人もすごく喜んでいた。


風谷「先生もついに彼女を作ったか」


森「後は結婚の報告を待つばかりやな」


中山「とうとう彼女の完全攻略まであと一歩に迫ったね」


アスラ「完全攻略だと?」


攻略という言葉を聞いたアスラが3人の話に割って入る。


アスラ「甘いな。ヤツがそんな簡単に攻略できる相手だと本気で思ってるのか?」


3人はアスラがまだ攻略という意味を相手を倒すことと勘違いしていることに笑った。


そしてアスラを半ば、からかうつもりで敢えて攻略の種明かしをせずに含みのある言葉にして言った。


森「いやいや、攻略はもう時間の問題や」


風谷「攻略は力で相手を制することだけじゃないんだぞ?」


中山「まぁ、アスラ兄ちゃんには理解できないと思うけどね」


アスラ「理解していないのはお前らの方だ。お前らは宮西の力を理解していない」


勘違いをしているとわかっていてもアスラにそこまで断言されると不思議と嫌な予感がしてくる。


3人は念のため学校で藤田の様子をじっくり観察してみることにした。


すると藤田は時折、どこか浮かない表情をしていた。


風谷「一体どうなってるんだ?」


森「アスラ兄ちゃんの言ってることが正しいってことかいな」


中山「それはあり得ないよ。そもそもアスラ兄ちゃんは攻略の意味を間違えて解釈してるんだから」


風谷「じゃあなんで先生は浮かない顔してるんだ?」


森「これはまた先生を尾行して真相を暴くしかないやろ」


その夜、3人は藤田を尾行した。


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