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私たちの監督は14歳で、かなりヤバいっ!!  作者: フムフム竜
小学生編
16/61

第16話 メイドカフェの看板娘

【今治体育館】


コーチ「そこの3人!!足が全然開いてないわよ!!」


森「す、すんまへん」


風谷「こ、これ以上・・・足なんか開けっこねぇよ」


中山「も、もう限界」


3人は三崎と共に新体操の練習に励んでいた。


風谷・森・中山「(な、なんでこんなことに・・・)」


前日・・・


アスラ「お前ら3人も三崎と一緒に新体操をやってもらう」


風谷・中山・森「えぇっ!?」


風谷「な、なんで新体操を!?」


森「意味がわからへん!!」


中山「ちゃんと説明してよ!!」


アスラ「オレは新体操を見てきたが、あれは今後の特訓のためにも絶対に必要だ。だから、お前たち3人にも新体操をやってもらうことにした」


風谷「新体操のどこが今後の特訓に必要なんだ?」


アスラ「この新体操での狙いは身体の柔軟性の強化だ。それに手首で回す道具も手首の強化に役立つだろうしな」


三崎「リボンのことね」


中山「この新体操で養った柔軟性で一体どんな特訓をするの?」


アスラ「今の段階で言うことはできんが、かなりキツい特訓とだけは言っておこう」


アスラの提案によって強制的に新体操をやらされる羽目になった3人。


3人は初心者ということで柔軟トレーニングを軽めのものにしてもらっているが、身体が固いため、かなりキツかった。


コーチ「ちょっと、ここで休憩にしましょう」


森「ひぃ~・・・こ、股関節に激痛が走るで」


風谷「こ、これで初心者向けとか冗談じゃないぞ」


中山「ほ、本当にこれって野球と関係あるのかなぁ・・・」


三崎「・・・・・・」


三崎は何か言い辛そうな表情をしながら、ぐったりする3人を見ていた。


それを察した森が、ほふく前進で近づきながら三崎に聞く。


森「なんや成美?言いたいことがあるなら言うた方がスッキリするで」


三崎「(そんな格好で近づかれたら言うに言えない・・・というかそもそもこれは今、絶対に言っちゃいけない)」


そんな三崎の心の声も知らずに中山と風谷がさらに追い打ちをかける。


中山「悩み事があるなら私たちに言ってよ」


風谷「アタシたち、もうそんな遠慮する間柄じゃないだろ?」


三崎「・・・・・・」


もう言うしかないと決断した時、どこからかやって来たアスラが話に割って入って来た。


アスラ「新体操の特訓に関して、お前らに言い忘れたことがある」


3人とも明らかに嫌な顔をしながらアスラを見た。


アスラ「お前らは最初の段階で脱落寸前だが最終的には三崎と同じことをやってもらうからな」


そう言い残してアスラは去って行った。


3人の顔は一気に真っ青になり、その場で倒れた。


三崎の行っていたのは強制柔軟のトレーニング。


三崎は平然な顔をして強制柔軟をこなしていたが、ほとんどの人は悲鳴を上げたり、泣き叫んだりしていた。


3人は頭を抱えて叫んだ。


森「あんなの無理や!!あんなのやったら、ウチら死んでしまうで!!」


風谷「新体操の経験者でさえ、悲鳴を上げたり泣き叫んだりしてるんだぞ!!」


中山「私たちだったら絶対大ケガしちゃうよ!!」


三崎は絶叫する3人を複雑な気持ちで見ていた。


森「そういえば成美の悩みをまだ聞いてへんかったな」


中山「そうそう、一体何の悩み?」


三崎「もういいの。アスラ兄ちゃんが代わりに言ってくれたから・・・」


風谷・森・中山「え?」


三崎「私、知ってたの。強制柔軟をやらせるって・・・」


風谷・森・中山「そうなの?」


三崎「アスラ兄ちゃんが私の家にご飯を届けに来た時、新体操の練習について詳しく聞いて来たの。その時に強制柔軟を全員にやらせるって言ってて・・・」


風谷・森・中山「・・・なるほどね」


三崎「みんなのあんな辛そうな顔を見てたら強制柔軟が待ってるなんて言うに言えなくて・・・」


風谷・森・中山「は、はははは」


3人は苦笑いをするだけだった。


風谷「それにしても山登りの次は新体操か・・・一体野球の練習はいつやるつもりなんだろうな」


中山「しばらくは無いと思うよ?未だに野球入門書を熱心に読んでるくらいだからさ」


森「この先どうなるか不安やで」


中山「そういえば選手の方だって、どうにかしないと・・・」


風谷「野球関係は全部あたっちゃったし、違う運動クラブにターゲットを変えるしかないよな」


森「誰かおらへんかな、女子で身体能力が優れた隠れた名選手・・・」


その時、三崎の手が上がった。


三崎「一応・・・1人だけ心当たりある」


風谷・森・中山「本当!?」


三崎「私が馬越(うまごえ)バファローズにいた時のチームメイトで真野美沙(まのみさ)っていう子なの。私と同じ小学校に通ってて1個下の小学4年生なんだけど・・・」


三崎はそれ以上何も言わず、黙り込んでしまった。


中山「どうしたの?」


森「何か問題でもあるみたいやな」


三崎「家庭環境にちょっと問題があって・・・」


風谷・森・中山「家庭環境?」


三崎は小さく頷いた。


三崎「お父さんは交通事故で亡くなっちゃって、お母さんもその後を追うように行方不明になったの」


この時、3人の空気が一気に重くなった。


三崎「そして両親を失って身寄りが無くなった美沙を叔母が引き取って、今はその叔母と2人で暮らしているの」


この話を聞いて、もはや野球どころではないと3人は思った。


三崎「でも経営が上手くいっていれば、メンバーに入ってくれる可能性はあると思うの」


風谷・森・中山「経営?」


新体操の練習が予想よりも早く終わったため、4人は真野がいるとされる店にやってきた。


三崎「ここよ」


風谷・森・中山「・・・・・・」


店の店員と思われる人物は全員メイド服。


そして来店した客には、『お帰りなさいませ、ご主人様』と言って出迎える。


そう、ここの店はメイドカフェである。


予想とは、まったく違った店に3人は唖然としていた。


風谷「ここで・・・間違いないのか?」


三崎「うん」


中山「隣の店じゃなくて?」


三崎「うん」


森「この店の中におるんか?」


三崎「うん」


顔を見合わせる3人を余所(よそ)に三崎は店の裏口に回ってインターホンを鳴らした。


しばらくすると店員が出てきた。


店員「はい、どちら様ですか?」


三崎「あの・・・真野美沙の友達なんですけど・・・」


店員「美沙なら今、お客様の接待中だけど?」


三崎「そうですか・・・」


店員「でも今のお客様の接待が終われば休憩になると思うから、それまで休憩室で待ってちょうだい」


4人は店員に休憩室へ案内される。


店員が部屋からいなくなると3人は思っていた疑問を三崎にぶつけた。


森「美沙って子は店長の娘ってことでええんか?」


中山「まだ小学生なのに働いて大丈夫なの?」


風谷「この店ってどういうシステムなんだ?」


一気に質問攻めにされて困惑する三崎。


その時、紅茶を持ってきた先程の店員が三崎の代わりに質問に答えた。


店員「ここのメイドカフェは、美沙の叔母が経営している店で、美沙はその手伝いをしてるだけ。ただ美沙のメイド姿がお客さんに大人気になっちゃって、今ではこの店の人気ナンバーワン。おかげで閉店まで、あの子は家に帰れないし休憩時間の合間は2階の部屋で学校の宿題や勉強。たまに友達と宿題をすることもあるわ。あの子にとって、ここが家のようなものなのよ」


予想以上に野球への勧誘は難しいと判断した3人。


経営次第では勧誘も可能だと考えていた三崎も(うつむ)いていた。


店員「それじゃ、私はそろそろ交代の時間だから」


そう言って店員は部屋から出て行くと森が不敵な笑みを浮かべた。


森「ちょっと店の中、覗いて見ぃへんか?」


風谷・中山「え?」


森「こういう時に言うのもあれやけどな。なかなかこういう店の中って見る機会ないやん」


風谷「でも見つかったらヤバいだろ」


中山「そうだよ、絶対怒られるよ」


その時、三崎が部屋から出て行き店の奥へと入って行く。


風谷「ちょっ、ちょっと一体どこ行くんだ!?」


三崎「店の中が見たいなら私についてきて。とっておきの秘密の場所があるから」


意外と協力的だった三崎に驚きながらも3人は後についていく。


風谷「成美って、ここの店の内部構造に詳しいんだな」


三崎「うん。前に美沙に教えてもらったから」


そして、4人は店の中や裏方が一目でわかる見渡しのいい場所に来た。


初めて見るメイドカフェの景色に森の目は輝いていた。


森「おぉっ!?これがメイドカフェの中かいな!?」


中山「それより、どの子が美沙って子なのかな?」


三崎が指差した方向にメイドの中でひと際、小さい『真野美沙』の姿があった。


真野は裏方に行けば、テキパキとした動きを見せ、年上の同僚にも頼られている様子。


また一方で客に対しては上目遣いになりながら甘えた声で話し、男性の庇護(ひご)(よく)をかきたてる仕草を見せる。


そのギャップには、ドン引きというより凄いという印象の方が強かった。


そしてチェキ撮影での指名では引っ張りだこ状態。


まさに店の看板娘といった感じの子だ。


三崎は、ひと仕事終えて休憩室に戻ってくる真野を引き止めた。


三崎「美沙、久しぶりね」


真野「あっ、成美先輩お久しぶりです!!」


素の真野は、三崎とは正反対で大きな声でハキハキと話す体育会系の女の子だった。


厨房での姿が本来の真野の姿であることに3人は内心安堵していた。


視線に気付いた真野は3人の方へと向き直る。


真野「え~と・・・こちらの人たちは成美先輩の?」


三崎「うん。友達」


真野「はじめまして!!成美先輩の後輩で真野美沙って言います!!美沙と呼び捨てにしてください!!」


風谷「お、おう」


森「な、なんか、ごっつ元気のある子やな」


中山「よ、よろしくね、美沙」


軽い自己紹介を終えた後、三崎が本題に入る。


三崎「美沙・・・野球をまたやるつもりはない?」


精一杯絞り出した声で真野に尋ねる三崎。


しかし、真野の表情でそれは無理だということが一瞬でわかった。


真野「経営が安定してきている中、私が抜けるわけにはいきません。それに身寄りのなかった私を引き取ってくれた叔母にも恩返しがしたいので」


三崎「そうね・・・変なこと聞いてごめん」


真野「私よりも成美先輩はどうなんですか?野球を辞めさせられたって聞きましたけど?」


三崎「私、新体操と野球を両立するってことでママに許可をもらったの」


真野「本当ですか!?」


三崎「うん」


真野「良かったじゃないですか!!私、成美先輩が新体操より野球が好きなこと知ってましたから辞めさせられたって聞いた時は凄く心配してたんですよ!!」


まるで親友のように三崎の手を握って喜ぶ真野の姿を見て、三崎との仲の良さを感じる。


真野「私、今度手伝いが休みの日に応援に行きますね!!私の分まで野球頑張ってください!!」


三崎「ありがとう・・・美沙」


真野に見送られ、いつもの河川敷へと向かう4人。


選手集めはまた振り出しに戻る形となった。


【愛比売山】


アスラ「さて、今日もいつものように山登りだ」


全員「は~い」


いつものようにスタート地点へ向かおうとすると突然、空間が歪み出す。


全員が揃ってアスラを見た。


アスラ「どうした?」


森「怒ってへんよな?」


アスラ「ああ」


中山「じゃあ、この空気が歪んだ現象はどうして起きてるの?」


風谷「今度は機嫌が良すぎるのが原因とか言わないよな?」


三崎「それとも心霊現象?」


4人が疑問に思っている間にも歪みがどんどん進み次第に亀裂が生じ始める。


そして、その亀裂の中から人が出てきた。


中から現れたのは黒マントを羽織った魔王のような格好をした高校生くらいの青年だった。



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