表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
私たちの監督は14歳で、かなりヤバいっ!!  作者: フムフム竜
小学生編
15/61

第15話 前代未聞の二刀流

三崎は走りながら必死にアスラを探した。


三崎「はぁ、はぁ、はぁ・・・み、見つけた」


アスラは自販機のところで座っていた。


三崎は息を切らしながらアスラの方へと向かう。


するとアスラは、スポーツドリンクを三崎に差し出した。


三崎「あ、ありがとう・・・」


三崎はもらったスポーツドリンクを勢いよく飲み干すとゴミ箱へ放り投げた。


その時、三崎は自分の手に血が付いていることに気付いた。


驚いた三崎はアスラの方を見る。


アスラの座っているベンチをよく見ると、ところどころに血が飛び散っていた。


三崎はアスラが何をしたのか想像できたが考えないようにした。


そのまま少しの間沈黙が続くとアスラが口を開いた。


アスラ「走って息切れする時みたいに演技の時も、そのぐらい全力でやったらどうなんだ?」


三崎「!?・・・やっぱり私の演技が手を抜いてるって言ったのは・・・」


アスラ「オレだ。実際そうだったろ?」


三崎「・・・別に手を抜いていたわけじゃないわ」


アスラ「だが全力でやっているわけでもないんだろ?」


三崎「・・・・・・」


アスラ「お前、昨日オレに言ったこと覚えているか?」


三崎「・・・・・・」


【回想】


三崎「私の本当に望んでることは・・・野球と新体操の両立」


アスラ「・・・・・・」


三崎「私は・・・最強の野球選手と最強の新体操の選手になりたい!!」


アスラ「ほう・・・大きく出たな」


三崎「!?」


三崎は急に恥ずかしくなったのか、頬を赤くしながら下を向いた。


アスラはそんな三崎の頬を触り、顔をグイッと上げた。


三崎「!?」


アスラ「なぜ下を向く?お前の目標は決して不可能ではない。オレはまだ野球も新体操のこともわからんが、必ず両方の最強の選手に必要な身体能力を身につけさせると約束してやる。だから自信を持って顔を上げろ」


三崎「う、うん!!」


三崎は、顔を赤くしながら大きく頷いた。


【回想終】


アスラ「理由があるとはいえ最強の新体操の選手を目指してるヤツが練習で全力を出せないようではいつまでたっても平凡な選手なままだ」


三崎「・・・・・・」


アスラ「お前が全力を出せないのは、おそらくケガを恐れているからじゃないのか?」


三崎「!?」


アスラ「ケガを恐れているからこそ無理な動きができない。だから自然と全力を出すことができなくなってる。そんなところじゃないか?」


三崎「・・・・・・」


三崎は、コクリと頷いた。


三崎「たしかにあなたの言う通り私はケガを恐れて全力を出していなかった。でもそれと手を抜いているのはまったくの別問題よ」


アスラ「ほう」


三崎「今の私の技量じゃ自分の身体能力を100%生かす演技をすることはできないわ。もし無理をして全力を出して失敗するようなことになれば絶対に大きなケガをしてしまう。だから私は自分の技量に合った演技を精一杯やっているわ。決して手を抜いているわけじゃない」


アスラ「お前の手抜き否定理論はオレにはさっぱりわからん。だがオレに言わせれば、どんな理由であれ意図的に全力を出さないことは手抜きと同じだ」


三崎「・・・・・・」


アスラ「お前は自分の技量をわかっているつもりなのだろうが、実際はまったくわかっていない」


三崎「どういうこと?」


アスラ「今のお前の技量なら全力を出しても絶対に失敗したりはしない。オレが保証してやる」


三崎「え?」


アスラ「何を驚いている?このオレを誰だと思ってるんだ?お前のことは誰よりもオレが理解している。そのオレが保証したんだ。お前は何も心配せず安心して周りの人間どもに、お前の真の力を見せてやるんだ。いいか、オレを信じろ。わかったな」


三崎「・・・わかったわ、やってみる!!」


その後、三崎はアスラの言う通りケガを恐れず全力で演技をした。


その演技は今までとは比べ物にならないほど、華麗で美しく誰もが魅了される素晴らしいものだった。


これには三崎(母)も感動を通り越して唖然としていた。


アスラ「どうだ?オレの言った通りアイツは手を抜いていただろ?」


三崎(母)「ひっ!?」


後ろから突然声をかけられ三崎(母)は情けない声を出した。


三崎(母)「きゅ、急に声をかけないでちょうだい」


アスラ「アイツは新体操と野球を両立させることを目標にしている」


三崎(母)「ば、バカな・・・そんなことできる訳ないじゃない。だいたい野球はもうやらないと約束したはずよ」


アスラ「その約束は、なかったことになった」


三崎(母)「なんであなたがそんなことを勝手に決めるのよ。部外者のあなたには、そんなことを言う権利はないわ」


アスラ「そういうお前こそアイツの野球に関してどうこういう資格があるのか?」


三崎(母)「親なんだから当たり前じゃない」


アスラ「野球を辞めさせるために馬越(うまごえ)バファローズの監督に金を渡してもまだそんなことが言えるのか?」


三崎(母)「なっ!?」


驚きのあまり目を見開いたまま声が出せなくなる三崎(母)。


しかし、すぐさま表情を戻して殺気に近い鋭い眼光でアスラを睨んだ。


三崎(母)「目的はなんなの?お金?欲しい物があるならいいなさい」


アスラ「三崎は、お前がやってきたことをすべて知ってる」


三崎(母)「!?」


その言葉を聞いて三崎(母)の顔からどんどん血の気が引いていった。


三崎(母)「そ、そんな嘘に私が騙されると思ってるのかしら!!あ、有り得ないわよ!!だって、あの子はそんな素振り少しも見せなかったわよ!!」


アスラ「当然だ。アイツは、お前のことを全く恨んではいなかった。アイツは、お前のやったことをすべて知った上で新体操を捨てず、野球との両立を選んだ。しかもただ両立するだけでなく、最強の野球選手と最強の新体操の選手を目指すと言ってな」


三崎(母)「そ、そんなの・・・そんなの嘘よ。あの子が私のしたことを知ってるはずは・・・」


アスラ「いつまでも現実から目を背けるのはいいが、お前はアイツの意見を尊重するかしないかを決めなければならない。だがアイツから野球を奪う方を選んだ時は今度こそアイツはお前を見限る。どういう選択をするか、よく考えて決めるんだな」


アスラが去ったのと同時に三崎の演技が終わった。


結果はアスラの言った通りミスは一つもしなかった。


持っているもののすべてを出し切った三崎の表情は、とても晴れやかで輝いていた。


練習が終わった後、三崎はいつもと違い軽い足取りで休憩室に向かった。


そこには、三崎(母)が待っていた。


三崎(母)「成美・・・」


三崎「なに?」


三崎(母)「最後の演技・・・とても良かったわ。素晴らしかったわよ」


三崎「・・・ありがとう」


三崎(母)「それから・・・」


かなりの間を置いた後、三崎(母)は三崎に言った。


三崎(母)「野球がやりたいなら好きにやりなさい。新体操は犠牲にしても構わないわ」


三崎「え?」


三崎(母)から出た以外な言葉に三崎は目を丸くした。


三崎(母)は、涙を流しながら三崎を強く抱きしめた。


三崎(母)「本当にごめんなさい!!私は自分の夢を叶えることばかり考えて、あなたのことなんか、ちっとも考えてなくて!!」


泣きながら謝る母親の背中を三崎は優しくなでた。


三崎「もういいよ、気にしてないから。それに馬越バファローズを辞めたおかげで、すごい監督と会うことができたし」


三崎(母)「す、すごい監督?」


三崎「私の演技を手抜きだって言った人よ」


三崎(母)の頭にアスラの顔が浮かぶ。


三崎(母)「あ、あの子が・・・監督なの?」


三崎「うん。態度はかなり偉そうだし性格もよくないけどね。でも・・・私のために色々やってくれた最高の監督なの」


三崎(母)「・・・・・・」


三崎「私はあの監督の指導の下で最強の野球選手、そして最強の新体操の選手を目指すわ」


三崎(母)は、自分の娘のやる気に満ちた表情を見て笑みを浮かべた。


三崎(母)「昔の私もあなたみたいだったらね」


三崎「どういうこと?」


三崎(母)は椅子に腰かけ自分の昔話を始めた。


三崎(母)「私もあなたぐらいの時にね、お母さんに無理やり新体操をやらされてたの」


三崎「おばあちゃんに?」


三崎(母)「お母さんは、新体操の日本代表選手でね。代表のコーチもやってた人なのよ?」


三崎「そ、そうだったの?」


三崎(母)「そんなお母さんから生まれた私は当然、新体操をやらされたわ。本当は、サッカー選手になりたかったけどね」


三崎「ま、ママがサッカー選手に!?」


三崎(母)「お母さんは日本代表の選手ではあったけど、金メダルを取ることはできなかった。だからその夢を私に叶えてもらいたい一心で毎日新体操の英才教育をしたわ。ちょうど私が成美にしてることと同じね」


三崎「・・・・・・」


三崎(母)「でもお母さんのような才能は私には無かった。結局なんの結果も出せずに引退。私はお母さんの期待を裏切ってしまったわ」


三崎「ママ・・・」


三崎(母)「だから、自分の子には絶対に好きな事をさせようって思ってたけど・・・結局私もお母さんと同じ。子供のことを考えずに、自分の夢を押し付ける最低の親だわ」


三崎(母)は、自虐的になりながらガックリと肩を落とした。


だが三崎はそんな母親の肩をグッと掴んで言った。


三崎「ママは最低なんかじゃない。ママは私に新体操を犠牲にしても野球をしていいって言ってくれた。私はママの夢を絶対叶えてみせる。必ず最強の野球選手と新体操の選手になるわ」


三崎(母)は微笑みながら三崎の頭をなでた。


三崎(母)「気持ちだけは受け取っておくわ。でも両立できるほど新体操も野球も・・・スポーツは甘くないのよ。やるなら一つに絞りなさい。絞った選択肢が野球でも私は構わないわ」


三崎「ママ、私は新体操の天才児よ。両立は必ずやってみせるわ」


そう言って三崎は、ほほ笑んだ。


何年も見ていなかった娘の笑顔に三崎(母)は、ものすごく驚いた。


三崎「監督は両立できるって言ってた。私はそれを信じる」


三崎(母)「(ここ最近ずっと笑わなかった成美が笑うなんて・・・本当にあの子、いや監督は色んな意味で奇跡を起こしてくれるわ。もしかしたら本当に両立させちゃうかもしれないわね)」


三崎「それから・・・」


三崎は言い辛そうに三崎(母)の顔を見た。


三崎「練習が泊まり込みになっちゃうんだけど・・・」


その瞬間、三崎(母)の目が丸くなったがすぐ笑顔に戻る。


三崎(母)「ダメだって言いたいけど、今まであなたにやったことのお詫びも兼ねて許すわ。正直あの子にあなたを託すのは気が引けるけどね」


三崎「ありがとう、ママ」


三崎は、母親に抱きついて喜んだ。


【河川敷】


中山「三崎ちゃん遅いね」


森「まぁ、親を説得することは簡単なことやない。なにせ泊まり込みの特訓なんて今の時代じゃ考えられへんことやからな」


風谷「そろそろ集合時間の5時を過ぎるぞ」


アスラ「・・・・・・」


3人が半ば諦めムードになり始めたその時、三崎が走りながらやってきた。


三崎「遅くなって・・・ごめん」


森「親の許可はもらえたん?」


三崎「・・・うん」


中山「本当!?それは、よかったよ!!」


風谷「これで今度こそ1人目だな!!」


三崎は大喜びする3人をかき分けて気恥ずかしそうにアスラに近づいた。


三崎「あの・・・監督」


アスラ「監督って・・・オレのことを言ってるのか?」


三崎「え?」


アスラの返答に困惑する三崎。


すかさず中山が割って入った。


中山「私たちは監督のことをアスラ兄ちゃんって呼ぶことにしてるの」


三崎「どうして?」


中山は、この呼び方になった経緯について詳しく話した。


あまりに有り得ない理由に三崎は驚くばかりであった。


中山「そういう訳だから、アスラ兄ちゃんって呼び方で呼ばないとアスラ様って呼ばなきゃいけなくなったってわけ」


三崎「アスラ様・・・」


アスラ「その呼び方の方が、主従関係がしっかりしていてオレはいいと思うがな」


三崎は、即答でアスラ兄ちゃんという呼び名を選択する。


呼び方が決まったところで再び三崎はアスラに話しかける。


三崎「あ、アスラ兄ちゃん」


アスラ「なんだ?」


三崎「その・・・色々ありがとう」


アスラ「礼はいらん。オレはお前の支配者だからな」


それを聞いて三崎はニッコリと微笑んだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ