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私たちの監督は14歳で、かなりヤバいっ!!  作者: フムフム竜
小学生編
12/61

第12話 三崎の本心

【三崎の家】


三崎「最強の野球選手・・・」


三崎の手は震えていた。


それは恐怖によるものではなく武者震いだ。


初めての強敵との全力勝負。


三崎の野球への情熱は完全に蘇っていた。


あの場で答えを出すことはできなかったが、今ならはっきり言える。


自分は最強の野球選手を目指したいと。


しかし三崎は頭を抱える。


その理由は・・・


三崎(母)「成美(なるみ)、入るわよ?」


三崎「なに?」


三崎(母)「あなた、また野球の練習を見てるんですって?」


三崎「・・・・・・」


三崎(母)「あなたに言ったわよね?野球のことは忘れなさいって」


三崎「・・・うん」


三崎(母)「あなたは将来、新体操の日本代表になる選手なのよ?わかってる?」


三崎「・・・わかってるわ」


三崎の母は昔、新体操の選手だったが芽が出ないまま日本代表を夢見て引退。


その夢を娘である三崎で果たそうとしていた。


そのため、新体操の妨げになる野球をかなり毛嫌いしている。


三崎「・・・ねぇ、ママ?」


三崎(母)「なに?」


三崎「野球と新体操の両立って・・・」


三崎(母)「ダメに決まってるでしょ!!」


三崎「・・・・・・」


三崎(母)「そんなに体を動かしたいなら新体操の練習時間を増やした方がマシだわ!!」


三崎「・・・・・・」


三崎(母)「いい?野球なんて男の子のするスポーツなのよ?わかるでしょ?」


三崎「違うわ・・・女の子もやる」


三崎(母)「そうだとしても、あなたに才能があるのは新体操の方よ。持って生まれた才能を生かさないなんて才能がない子に失礼よ」


三崎「・・・・・・」


三崎(母)「あなたは新体操の日本代表の選手になって金メダルを取るの。それがあなたに課せられた使命なのよ」


三崎「・・・・・・」


三崎(母)「これからは野球とは一切関わらないでちょうだい。わかったわね?」


三崎「・・・わかった」


次の日・・・


中山「三崎ちゃん遅いね」


森「せやな」


アスラ「・・・・・・」


風谷「あっ、来たぞ」


三崎「・・・・・・」


三崎の雰囲気から3人は察した。


森「やっぱり無理やったん?」


三崎「私には・・・新体操しかないから」


三崎は誰とも目を合わさず、そのまま走り去って行った。


3人の視線がアスラに注がれる。


森「なぁ・・・あんな逸材絶対おらんで。あっさり諦めてええんか?」


アスラ「本人がやらないと言っているのに、無理に言っても仕方がないだろ」


風谷「でも少しは引き止めても良かったんじゃないのか?」


アスラ「だったらお前らで勝手にやればいいだろ」


風谷・森・中山「・・・・・・」


説得する自信がない3人は後を追わず、走り去る三崎の姿を眺めることしかできなかった。


【今治体育館】


ここでは愛媛新体操クラブが練習を行っていた。


愛媛新体操クラブは、全国でも名の知れた新体操クラブだ。


コーチ「今日はここまでにしましょう」


選手たち「はい!!」


コーチ「三崎さん、ちょっといいかしら?」


三崎「なんですか?」


コーチ「あなた・・・演技は完璧なんだけど表情が固いわね。表情も点数の対象になるんだからしっかり頼むわよ」


三崎「はい」


コーチ「新体操に専念して1ヶ月。あなたの成長ぶりには本当に驚かされるわ。表情が完璧になったら間違いなくあなたに敵はいないと思うわ。頑張ってね」


三崎「ありがとうございます」


コーチが帰った後も1人で黙々と練習する三崎。


身体を動かしていないと心の中がモヤモヤして、いてもたってもいられなかったからだ。


三崎「(こんなこと思ってたら新体操にすべてをかけている人には失礼になるけど、私は新体操を必死にやってるつもりはない。コーチは私の演技は完璧だと褒めてくれるけど、完璧なんかじゃない)」


三崎(母)「成美、いるの?」


迎えに来た三崎の母親が体育館へ入ってくる。


三崎(母)「あら?みんなが帰った後でも自主練に励むなんて感心ね」


三崎「(私は昔から口数が少なく感情を表に出さない。だから周りは誰も私の本心に気付いてくれない。コーチも新体操のみんなも馬越バファローズの監督も・・・)」


三崎(母)「成美、そろそろ終わりにしなさい」


三崎「(あの時、監督に野球か新体操かどちらかにしろと言われた時、私は野球を取ると言うつもりだった。でも隣にいたママが新体操を選ぶと監督に言った)」


三崎(母)「私の声も聞こえないなんて、すごい集中力だわ」


三崎「(たしかに野球を続けても監督に怒鳴られてばかり。けど私はそれでもよかった。たとえ新体操の方が野球より向いていたとしても私は野球がやりたかった・・・野球がやりたかった)」


何度声をかけても答えない三崎を見かねた三崎(母)は、ポンッと三崎の肩を叩いた。


そこでようやく我に返る三崎。


三崎(母)「自主練もいいけど、無理して身体を壊したら大変よ」


三崎「・・・ごめんなさい」


体育館を出て夜空を眺める三崎。


三崎「(このまま自分の気持ちを偽りながらずっと生きていくことになるのかな・・・)」


次の日・・・


三崎は再び河川敷へとやって来た。


3人とも驚いた様子で三崎を見た。


三崎「やっぱり・・・最強の野球選手を目指そうと思って」


3人は大喜びで三崎を歓迎した。


アスラ「これで、お前も今日からオレの配下だ」


三崎「配下?」


中山「アスラ兄ちゃんは、選手のことを配下って呼んでるの」


三崎「・・・・・・」


かなり独特の呼び方だと思った三崎だったが、アスラのことを考えれば別におかしくないと思った。


アスラ「4人になったから今日から2組に分かれて山登りをやってもらう」


三崎「ところで、この近くに山なんて無いけど・・・」


アスラ「すぐにわかる」


アスラの言葉に不思議に思っていると河川敷の景色が徐々に変わり始める。


三崎「え?」


気付いた時には、すでに辺りは木々で覆われた森になっていた。


驚いた三崎はキョロキョロと辺りを見渡す。


三崎「嘘?何をしたの?ここはどこ?」


アスラ「ここは愛比売(えひめ)山だ」


三崎「え?あの有名な自殺スポットの?」


アスラ「そうだ」


三崎「ここで・・・山登りをするの?」


アスラ「そうだ」


三崎「・・・・・・」


三崎は、ゆっくりと登山コースのスタート地点へ向かおうとする。


すると案の定、森に止められて三崎は固まった。


森「スタート地点はそこやのうて・・・ここやで」


三崎「・・・・・・」


最初の3人と同様、三崎は言葉を失った。


アスラ「嫌になったのなら帰ってもいいぞ?」


三崎「・・・いいえ、最高のタイムで登り切るわ」


言葉とは裏腹に三崎の目には生気がなかった。


三崎が挑む最初のコースは、湿気の多い足場が最悪のコースだ。


それでも持ち前の身体能力の高さで一緒に組むことになった森よりも先に頂上に到着。


タイムは3時間20分と宣言通り最高のタイムでのゴールだった。


三崎「足が・・・もう上がらない・・・」


森「ま、まぁ、初日は誰でもこうなるで」


三崎「(私は・・・こんなにバテてるのに・・・みんなは全然疲れてない・・・私もまだまだみたい)」


三崎は息切れしながら、ほんの少し笑みを浮かべた。


風谷・森・中山「(今・・・笑った?)」


アスラ「今日は、これで解散だ」


今日は学校が休みのため、日が明るいうちに解散ということで足早に帰る3人。


それとは対照的に三崎はフラフラで家に帰って行った。


【河川敷】


特訓が終わった後、アスラは馬越(うまごえ)バファローズの練習を見ていた。


理由は妹のマミに誘われたからだ。


マミは、アスラが野球の監督をすると知ってからアスラに野球の面白さを教えるために色々調べ回っていたらしい。


そして、マミの中で馬越バファローズの練習が一番面白かったようだ。


監督「よ~し、ショート行くぞ!!」


選手A「お、お願いしましゅ!!」


監督「こらぁ!!なにがお願いしましゅだ!!ちゃんとお願いしますって言え!!」


選手A「は、はい!!」


監督「いくぞ!!」


勢いよく打った打球は、宣言したショートではなくピッチャーの方へ。


選手B「うわっ!?」


危なくぶつかるところだったが、ギリギリで避けることに成功。


しかし、これに監督は大激怒する。


監督「なぜ避けるんだ!!なぜきちんと捕らない!!」


選手B「そ、そんな・・・でも監督はショートって・・・」


監督「貴様は監督であるオレに口答えするのか!!」


選手B「す、すみません!!」


監督「いいか!!私の言葉に惑わされるな!!言葉でなく身体で通じるんだ!!その考え方でやっていけ!!」


選手たち「は、はい!!」


監督「それから分からないことがあった時は私にいちいち聞きに来るな!!自分で見て盗め!!最近の若い者は全然それができておらん!!」


自分の持論を選手に押し付ける監督。


その監督に選手たちは怯えていた。


それが原因で選手は動きが固くなり守備やバッティングは壊滅的になっている。


見ているマミにとっては、その選手たちの姿と監督の怒った表情が面白かったようだ。


アスラもマミと観点は似ているため、同じように楽しみながら練習を見ていた。


アスラ「しかし本当に酷いものだな」


マミ「そこが面白いんだけどね」


??「こんなの・・・こんなの本当の馬越バファローズじゃない!!」


声がする方を向くと1人の小学生がアスラたちの後ろにいた。


マミが興味本位でその小学生に話しかける。


マミ「そんなに怒ってどうしたの?」


小学生「オレは馬越バファローズで4番を打ってたんだ!!それを監督と親父のせいで辞める羽目になっちまったんだ!!」


アスラはその小学生の身体能力を見る。


アスラ「(ハッキリ言って身体能力は良くないが、あそこにいるヤツらよりはマシといったところだな)」


小学生「そもそも馬越バファローズは、弱小チームじゃなかったんだ。間違いなく中堅クラスの実力はあった。それが監督のせいで・・・」


アスラ「まぁ、あんな指導方法じゃな」


小学生「そうじゃないんだ」


マミ「どういうこと?」


小学生「みんな・・・誰も知らないんだ。監督の・・・馬越バファローズの裏の素顔を」


小学生は怒りを抑えるように口を震わせていた。


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