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私たちの監督は14歳で、かなりヤバいっ!!  作者: フムフム竜
小学生編
11/61

第11話 野球対決 三崎vsアスラ

三崎とアスラの3球勝負。


ヒットゾーンとファールゾーンを書き終えた中山が戻ってきた。


中山「これで準備はOK。キャッチャーは玲奈がやってよ。キャッチャー経験があるのは玲奈だけだし、それにこのグローブも左利き用だしね」


風谷「わかった。でも左利きのアタシがキャッチャーやって大丈夫か?」


森「普通キャッチャーは右利きやもんな」


三崎「問題ないわ。ただ軽く2、3球投げさせて・・・」


三崎の投球スタイルは、右のサイドスロー。


そこから繰り出される速球は目を見張るものがあった。


森「軽く投げて、このスピードかいな!?」


中山「でも、あの肩の強さを考えると納得できるかもね」


風谷「痛ってぇ~・・・半分の距離だから、めちゃくちゃ手に響くぞ」


三崎は風谷がボールを捕ったことに少し驚いていた。


なぜならチーム内で三崎のボールを捕れる人間はいなかったからだ。


三崎「(さすがに最強の野球選手を目指してるだけはあるみたい。それよりも・・・)」


三崎の視線の先にはアスラがいた。


アスラはバットを一切振らず、ただ突っ立っているだけだった。


三崎「(勝負の前に素振りもしないなんて・・・だけど人を殴って吹き飛ばしたあの規格外のパワー。あれを考えると当たれば大きい・・・でもパワーだけで打てるほど私のボールは甘くないわ)」


アスラ「(殴る時は簡単に力の調整ができるが物を使う場合は加減がかなり難しい。どうやって3球の間に上手く調整できるかだな)」


三崎はキャッチャーの風谷とサインを確認し勝負がスタートする。


アスラは今治中央高校の時と同様、左手一本で持ってバッターボックスに立つ。


三崎「右手は?」


アスラ「使う必要はない。使ったらどれだけの被害になるかわからんからな」


三崎「・・・・・・」


勝負の第1球。


初球はインコースの高めに、わずかに外れるストレート。


これは選球眼を試すために投じた一球だ。


ボールはアスラの身体を通過する。


三崎「(思ったより選球眼は、いいみたいね)」


しかしボールがグローブに収まりかけようとした時、アスラの驚異のスイングスピードでバットがボールに当たる。


三崎「え?」


ボールはガキッという音を立てながら風谷のグローブに。


だがボールの勢いにグローブはそのまま弾き吹き飛ばされてしまう。


その光景を見て、三崎の背筋は凍った。


そしてグローブを吹き飛ばされた風谷も唖然としていた。


その様子を見て遠くにいた森がグローブを拾って風谷に届けようとすると・・・


森「な、なんやこれ!?」


森の驚いた声に全員が集まった。


風谷「うぉっ!?」


中山「こ、これは・・・」


グローブは酷くえぐれており、網目は破れて焦げたような後も残っている。


そしてボールは、どこにも見当たらなかった。


中山「今まで色々あったけど、改めてアスラ兄ちゃんのパワーには驚かされるよ」


森「せやな」


風谷「それにしてもボールが無いんじゃ続きは出来ないぞ」


アスラ「その心配はない」


振り向くとアスラが新品の硬式ボールを持っていた。


風谷「そのボールどうしたんだ?」


アスラ「アイツが持ってたんだ」


アスラの視線の先には鼻血を出しながら未だに気を失っている小学生Bがいた。


ひょいとボールをピッチャーの三崎に投げる。


受け取った三崎はそのボールを見て固まった。


三崎「これ・・・サインボールみたいだけど」


森「しかもあの山田選手のサインやん」


中山「それに『一ノ瀬くん』って名前まで書いてあるし」


風谷「これ絶対使っちゃダメなヤツだろ」


アスラ「なにをしている?早く続きをやるぞ」


完全にやる気モードになったアスラを誰も止めることはできず、一ノ瀬のことを気の毒に思いながら勝負を再開する。


一方の三崎は先程の異次元のパワーを見せつけられて完全に戦意喪失していた。


だが投手としてのプライドが高いのか降参はせず再びマウンドに戻った。


風谷「アスラ兄ちゃん。アタシ、グローブが無くなっちゃったんだけど・・・」


アスラ「もうお前は後ろに居なくてもいい。どう転んでも次で終わりだからな」


意味深な言葉を言ってギラリと目を赤く光らせるアスラ。


まるで殺人鬼が新たな獲物を見つけたような感じで、三崎が投げるボールを待っている。


直感的に身の危険を感じた三崎は一旦プレートを外した。


三崎「(な、なんだろう・・・なぜか殺される気がしてならない。投げたら打たれるじゃなくて死ぬ気がする。怖い・・・投げるのが怖い)」


表情は相変わらず無表情のままだが、冷や汗が止まらない三崎。


その時、遠くで見ている中山がアスラのバットの異常に気付いた。


中山「アスラ兄ちゃんの持ってるバットめちゃくちゃ凹んでない?」


風谷「あんな馬鹿力でボールを打てばそうなるだろ」


森「あんなバット使ってホンマに大丈夫なんやろか?」


三崎「(バッターを怖がっちゃダメ。ピッチャーは気持ちで負けたら終わり。気持ちを強く持たなくちゃ)」


アスラをキッと睨み、三崎は渾身の1球を投げる。


運命の2球目は内角ギリギリに決まるシュート。


この瞬間、三崎の中で早くマウンドから逃げなくてはという本能が働いた。


三崎の投げたボールはアスラに完璧に捉えられ、ガギギッという鈍い音とともにボールは場外へと消えて行く。


だがボールを打った衝撃で金属バットが折れ、折れた部分が猛スピードで三崎の顔面に飛んできた。


三崎「!?」


三崎は上半身を思い切りのけぞらせて、ギリギリでバットを避けた。


その軟体にアスラは感心した表情でマウンド上の三崎を見た。


心配した3人は慌ててマウンドへ駆け寄るが三崎は何事もなかったようにゆっくりと立ち上がった。


そしてアスラを思い切り睨みつける。


三崎「私を・・・殺す気だったのね」


その目には少し涙が浮かんでいた。


アスラ「だったら何だというんだ?」


風谷「おいおい、本当に殺す気だったのかよ!!」


森「仮にもその子は数少ない候補の一人やで!!それを殺そうとするなんて一体何考えとんねん!!」


中山「そもそも野球の勝負でしょ!?何で殺すなんて発想になるのよ!!」


3人の猛抗議にもアスラの態度は一向に変わらない。


アスラ「これは勝負だぞ?勝負なら、たとえ相手が数少ない逸材であろうとも敵だ。敵に情けをかけるバカがどこにいる?」


この言葉に4人はアスラを信じられないと言った表情で見る。


アスラ「今の勝負、オレは確実に勝つ方法ではなく確実に負けない方法を選んだ。その1番手っ取り早い方法がさっきやった方法というわけだ」


勝負に勝つためにはたとえスポーツであろうとも相手を殺すことを(いと)わない。


完全に倫理観がズレているアスラに対して4人とも言葉が出なかった。


アスラ「もしオレが2球目も力の加減を間違えて仕留められなかった場合、もう失敗はできなくなる。だから、そうなる前にアイツを葬って引き分けに持ち込む作戦に切り替えたというわけだ」


ついに殺人を作戦と言い始めたアスラ。


アスラにとって殺しは日常的な行為の1つに過ぎないと理解した4人。


洩矢アスラ・・・この人は本当にヤバいと4人は心からそう思った。


アスラの異常性によるインパクトが強すぎてアスラの解説などまるで耳に入らない3人。


だがその中で以外にも被害にあっている三崎だけはアスラの解説を冷静に聞いていた。


そして三崎はアスラに尋ねた。


三崎「仮に仕留められなかったとしても3球目からは空振りをしなければいいだけ。あなたほどの実力者ならボールをバットに当てることはぐらいできるはずよ」


アスラ「お前の勝負の条件はこうだ。『勝負球が3球、1球でもヒットを打てたらオレの勝ち。ボール球はカウントに入らない』だった。つまりボール以外は、どんな事情であれカウントされることになる」


この時、三崎はようやく気付いた。


普通のルールならツーストライクの後にファールを何回打ってもカウントされないが、この勝負では違う。


3球目のファールボールはノーカウントにはならず、バッターの負けとなってしまうのだ。


力の加減が完璧ではないアスラの場合、3球目もファールボールもしくはボールが破裂して敗戦という可能性がかなり高い。


それを避けるため、2球目の段階で三崎の抹殺をはかる作戦に出たのだ。


でもやはりアスラの行動に納得のいかない三崎はアスラに訴える。


三崎「あなたが私を葬ろうとした理由はわかったわ・・・でもだからといって野球で殺人を作戦の選択肢に選ぶなんて絶対に間違っているわ!!そんな発想をするのは人間じゃないあなたくらいよ!!」


初めて怒りのこもった口調で話す三崎。


そんな三崎に対してアスラは首をかしげた。


アスラ「お前は一体何を言ってるんだ?」


三崎「え?」


アスラ「殺しを作戦の選択肢にするのが人間じゃないオレだけだと本当に思っているのか?」


三崎「ど、どういう・・・こと?」


アスラ「人間は時にくだらないと思われる理由で殺人に走るヤツがいる。野球でもそうだ。コイツだけには負けたくない、コイツに負けるくらいなら殺してでも勝利を勝ち取りたい。そうやって自分の手を血に染めたヤツをオレは知っている」


三崎「・・・・・・」


アスラ「野球をする人間でもオレのような発想を持つヤツはいる。そんな考えでいたらお前はいずれ痛い目にあうことになるぞ」


三崎「・・・・・・」


アスラ「お前が本当に最強の野球選手になろうと思っているなら、野球の実力だけでなく、こういった殺人鬼に対しても勝てる技術を持たないとダメだ。オレの考えが理解できないなら最強の野球選手を目指すのは諦めた方がいい」


三崎の表情には明らかに迷いが生じていた。


アスラの考え方は間違いなく異常だ。


しかしアスラが人間じゃないという点が三崎の中で、その異常性を緩和させている。


三崎は馬越バファローズの監督とアスラを比較していた。


どちらも性格は自己中心的で人間性は最悪だ。


だがアスラの発言には、一見狂っているようにみえるが意外と的を得ている部分もある。


さらにアスラは掛け持ちに関しては、反対していないので条件としては悪くはない。


三崎は悩んだ末、一日だけ考えさせて欲しいと言って帰って行った。


風谷「三崎は・・・メンバーに入ってくれると思うか?」


アスラ「どうかな・・・それよりもあれをアイツに返してくるから持って来い」


アスラは、ボロボロになったグローブと折れたバットを指差した。


その状態を見て3人は気の毒に思う。


グローブの方はサインが書いてある部分は焼け焦げ、バットの方は折れている上にサインの部分はベッコリ凹んでいる。


アスラは倒れている一ノ瀬の身体の上にバットとグローブ、そして変形してボールかどうかもわからなくなったボロボロのボールを置いた。


その様子を見て、さすがに一ノ瀬に同情した森がアスラに提案する。


森「もういっそのこと道具は全部返さん方がええんやない?」


アスラ「ダメだ。借りると言ったからには返してやらないとな」


中山「でも起きたら絶対泣くよ」


アスラ「それがアイツの運命だ。なにせアイツは神に選ばれた人間らしいからな」


風谷「神?」


アスラ「ああ」


風谷・森・中山「(神に選ばれたのって絶対疫病神でしょ・・・)」


3人にはなぜか疫病神のイメージとアスラが重なって見えた。


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