元号売ります
「なんでちゃんと言われたことができないんだ。だから平成生まれはいやなんだ」
俺の上司は昭和生まれである。ゆえに脳が高度経済成長期と黄金のバブル世代のままなのだ。失われた10年の責任を若者に押し付け、今の世を形作ってきた自分の失態を顧みようともしない。俺は上司が昭和生まれであることを恨んだ。自分が平成生まれであることを呪った。
俺は会社からの帰り道、とある店によった。あるものを買うためだ。
「すいません。元号売ってますか」
「ええ、今日市場から仕入れてきた採れたてのが売ってますよ。どの元号にします?」
「ええと、じゃあ大正で」
「もう少し古いのはいかがですか?慶応とか」
「いえ、あんまり古いと高いので」
翌日、私はいつも通り会社へ向かった。
「相変わらず仕事の出来が悪いな。これだから平成生まれは」
「おい、俺は今日から大正生まれだ」
「ああ、すいませんでした」
「おい店主、大正より古い元号をくれ」
「はい、でもあんまり古いとお値段が張りますよ」
「明治くらいでいい。売ってくれ」
「まいど」
翌日、わしは会社へ出社した。
「おい、態度が悪いぞ。これだから昭和育ちは」
「わしは明治生まれだ」
「申し訳ございません」
「おい、大化の元号を寄こせ」
「いつもありがとうございます」
「大正うまれだから考えが甘いのだ」
「我、大化の時代にこの世に生をうけり」
「貴殿、明治生まれより、頭がからすなり」
「ウホホホホッホ、ウホウホ」