優等生
その道はまるでカーペットを敷いたように赤い色に染まっていた。そのカーペットの上に見たところ学生だろうか、利口そうな顔立ちをした少年が鋭い刃物を振り上げては降ろし振り上げては降ろしを繰り返している。刃物は人間のような肉塊のようなものに突き刺さり、その肉の切れ間から川の源流から水が流れるように赤い流れができていた。
ズシャグシャグチョズシャグシャグチョズシャグシャグチョズシャグシャグチョ
料理をしたことがある方ならわかるかもしれないが肉を切ってもこんな音は鳴らない。だからドラマなどで人を刺したときに鳴る音は嘘っぱちである。おそらく肉塊を刺して斬って引き裂いている少年も似たようなことを考えているのだろう。
よく目を凝らしてみるとあたりにごろごろとした小さな肉の塊のようなものが複数転がっていた。おそらく内臓だろうが赤っぽいような黒っぽいような、少なくとも学校の美術の授業では使わないような色に染まっていたためどれが心臓でどれが胃かは全くわからない。ただ内蔵で思い出したが内蔵の一つであるすい臓は癌になっても分かりにくいそうだ。がんになるにしてももう少しわかりやすい癌になりたいものである。肉を斬っている少年はそう思った。
気が済んだのか少年は肉を斬るのをやめた。赤く染まったカーペットの上は肉から血が流れる様子がまるで流水のようでごろごろ転がった内蔵はまるで川を流れに逆らう岩のようでもあった。なかなか風流な光景である。松尾芭蕉みたいな人がいたらこれで一句作るのかな、ふと頭の中にそんなことが浮かんで少年はふふっと笑った。
さて、だいぶ時間が経ってしまったな、遅刻しないようにすぐに学校へ行かないと、一応成績優秀で通ってるからな、遅刻はイメージダウンになっちゃう、ああでも白いワイシャツに赤色のシミがたくさんできてしまっているから見栄えが悪いな、まあでも人を刺していたって言ったら情状酌量の余地はあるだろうか。
少年は小走りで学校へ向かった。
「先生、遅くなりました。」
「おお、おはよう。どうしたんだ、お前にしては珍しいな。遅刻なんて。」
「すみません、人を刺していたら遅くなりました。」
「ううん、じゃあ仕方ない。でも学校外でそんなことをしても内申は上がらないぞ」
「いいんです、内申のためにやってるわけではないので。良いことは成績のためにやるのではありませんから。」
「そうか、さすがだなお前は。川のごみ拾いや清掃ばかりしている不良のあいつらとは大違いだ。」
「そんなこと言ってあげないでください。人に親切にするような不良行為もそいつらなりの考えがあってやってるんです。その自主性はきっといつか社会の役に立ちます。」