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序
それは、見事な夕暮れが空を彩った日のこと。雪乃の孫たちが行方知れずになった。
近年、村には得体の知れない集団が入り込んできていた。彼らは正体の知れない偶像を崇め、この有難い神を信仰しておれば願い通りに数々の奇跡が起きるのだと、尤もらしく説いて回っていた。
結果、この数年のうちに村人の半数が彼らの掲げる神とやらに寝返ったらしい。
そんなものは、太古から良くあることだ。有難いと説かれればヒトの心は揺らぐのだし、信仰は全て人々の心一つだ。それでその者が救われるというのならば構わないと比売は思っているのだが、雪乃は何故か当初から彼らを毛嫌いしていた。
そして同時に、よく不安を口にしていたのだ。
彼女の孫たち、特に末の孫娘は、雪乃以上の正確さで先の出来事を予見していたから。孫娘が怖がるその者たちに、何かを感じていたのだろう。
この日見た夕映えを、比売は忘れることはないだろう。毒々しいまでに赤く赤く染まったあの見事な夕映えを。あたかも、血で染め上げたようなその空を。




