表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
42/47

三姉妹の力

 森の入り口の手前辺りから、尋常ではない瘴気が溢れている。

「一体、これだけの瘴気をどうやって広めたのよ」

カメリア姉様が

魔力を放出しながら文句を言う。


「キャルム様が見たのは魔石だって」

「それにしても多いわね。そもそもここには神聖な泉が湧いていたはずでしょう」

ローズ姉様が襲い掛かってくる魔物をなぎ倒す。


「推測でしかないけれど、泉に魔石を投げ入れたんじゃないかな?」

そうでなければ、こんな短時間で瘴気がこんなに溢れるのは考えにくい。

「なんですって!?泉を穢したの?」

「おそらくだけれど」


「それが有力ね。泉に真っ直ぐに向かうわよ」

ローズ姉様の先導で、森を突き進んで行った。



「これは……」

「酷いわね」

「うん」

やはりインファーナ司教は泉に魔石を投げたのだ。水底までくっきり見える程透き通っていた泉は、見る影もなく真っ黒なヘドロのようになっていた。次から次へと瘴気が立ち上るのが肉眼で見える。


「早くしないと私の魔力が持たなくなるわ。リリー、行ける?」

闇魔法を持っているカメリア姉様は、ここまで来るのにずうっと、魔力を放出し続けて瘴気を相殺してくれていたのだ。


「昔はこの闇魔法のせいで、悪役令嬢になってしまうって恐怖していたけれど、極めると使い勝手がいいのよねえ」

「わかったからニヤニヤしないの。悪役令嬢っぽい顔になっているわよ」

向かってくる敵に光魔法で対抗しているローズ姉様。


「いやいや、ローズ姉様は今の自分の顔をわかってないからそんな事言えるのよ。魔物をそのおっそろしいレーザーみたいな魔法で一網打尽にしている姉様、魔王もびっくりよ」


「カメリアちゃん、あんまり私を動揺させない方がいいわよ。手元が狂っちゃう」

「マジで怖いから。私、胴から真っ二つとか嫌だから」

「うふふふ、胴からかはわからないわ。首からかも」


姉様たちの軽口を聞きながら、祈りのポーズを取る。ゆっくりと循環していた私の中の魔力の動きが早くなり、全ての魔力が一気に放出されるのを感じた。


キラキラとした粒子が一直線に上空へ飛ぶ。そして、そのまま上空で雲のように広がって行き、光の雨が街全体に降り注いだ。光の雨は森の中にも降り注ぐ。ヘドロのような泉に音もなく落ちていく光の雨は、じわじわと全体に浸透していった。


やがて、瘴気は霧散して泉がみるみるうちに透明感のある水へと変化した。あんなにいた魔物もいつの間にか消え、淀んだ空気は澄み渡り、木漏れ日溢れる美しい森が戻ってきたのだった。


森にいつもの雰囲気が戻るのと同時に、魔力がほぼない事に気付く。膝から力が抜けて、その場で崩れ落ちてしまった。


「はあ、終わった」

カメリア姉様も座り込む。

「魔力、もうほとんどないわ」

ローズ姉様も座ってしまう。


「私も。もう立てないかも」


「……終わったわね」

「そうね。疲れたぁ」

「私も」

何故だか段々おかしくなってくる。


「それにしてもローズ姉様の光魔法ってえぐいわよね。あんなビームみたいなのを縦横無尽にぶっ放されたら、命がいくつあっても足りないわ」

「何を言っているの。カメリアの闇だって同じようなものじゃない。瘴気が全く効かないってある意味、魔物よりも質が悪いわよ」


「ふふふ、姉様たち二人とも怖いから」

「あ、何かしらこの子。自分の魔法はキラキラしているからって。魔力オバケのくせに」

「オバケってなによ。カメリア姉様だって普通の人の倍以上持っているくせに」


「ああ、もう面倒くさい。私たちはみんな魔力オバケなのよ。美人三姉妹な上に魔力オバケ三姉妹よ。いいじゃない」

「あははは、ローズ姉様ったら自分で美人だって」

「そうよ。だって本当の事だもの」

「凄っ!言い切った」


「……ぷっ」

「もう……」

「ふふ、ふふふ」

とうとう堪えきれなくなり、三人揃って大笑いしてしまう。


「おーい。大丈夫かー?」

そんな声が聞こえてきたことも知らずに。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ