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天使様との出会い

「マズイ!」

急いで魔力を地面に送り込む。大きな土の壁がワイルドボアの前に立ち塞がり、突進して来たワイルドボアは見事に頭を打ち付けた。突進の衝撃が跳ね返ったワイルドボアは、そのまま気絶する。


「ラッキー」

気絶したワイルドボアの頭に、氷の槍を打ち込みとどめを刺す。それからも暫く周辺を探して、もう1頭のワイルドボアを討伐。結局、4頭手に入れる事が出来た。


アイテムボックスにワイルドボアを収納し、教会の裏口から中に入る。

「司祭様、いらっしゃいますか?」

「はい」

司祭様が奥の部屋から出てきた。後ろにもう一人いる。


「合計で4頭いました。全て討伐しましたよ」

4頭分の牙を見せる。

「ありがとうございました。本当に助かりました」

「いいえ、こちらもちょうど良かったので」

ニッコリと笑うと、司祭様も笑ってくれた。

「ぼたん鍋、ですね」

「はい。それとせっかく来たので、お祈りしていっていいですか?」

「はい、是非」


すると、後ろにいた男性が声を掛けてきた。

「ではレディ、私が案内しますよ」

薄い金色の髪がふわふわしている。つぶらな瞳は鮮やかなグリーンだった。私より少しだけ高い背で華奢な彼は、司祭様とは真逆の白い服装だったせいもあって、なんだか天使のようだった。


「いえ、場所はわかっていますから。一人で行けますよ」

「それでも。是非案内をさせて頂きたいのです」

物腰柔らかな雰囲気だが、意志は強そうだ。司祭様を見れば少し困ったような表情で頷いた。


「では、お願いします」

ここは折れる事にする。すると、天使のような彼はニッコリ微笑むと、私の左手をそっとすくい上げた。そのまま、まるで花嫁を祭壇へ連れて行くかのように静々と歩く。


「あなたは貴族令嬢でありながら冒険者をしているのですか?」

「はい?」

私の事を知っているのか、こんな格好をしているのに貴族令嬢と、断言されてしまった事に驚く。


「ああ、失礼しました。学生の頃、何度か校内でお見かけしましたので」

私がポカンとしていた事に気付いた彼が、説明をしてくれた。

「そうは言っても私とは、1年程しかかぶっておりませんが。私はキャルム・インファーナと申します」

「……インファーナとは司教様の?」

この王都を含めて、周辺にあるいくつかの教会を統括している方が、インファーナ司教だ。

「はい、インファーナ司教は私の父です」

「そうなのですね」


礼拝堂へ到着する。

「ありがとうございました」

礼を述べて退散しようとする私の手を引いた彼は、笑顔のままキュッと握った手に力を込めた。


「あなたのお名前をお教えいただけませんか?そして、できればまた会う栄誉を」

「栄誉って……別に私は深窓の令嬢というわけでもないので、こうして街で偶然会う事も出来ますよ」

こんな格好で、深窓の令嬢なわけがない。


「偶然に、ではなく必然にお会いしたいのです」

天使のような微笑みを向けられる。キラキラしていて眩しい。

「私に会った所でいい事などないと思いますけれど……」

意外に積極的で戸惑ってしまう。


「あなたにお会い出来た事が、既にいい事ですよ」

キラキラオーラ全開の微笑みをする。断れない雰囲気だ。

「ええと……私の名前はリリー・アヴァティーニです。案内ありがとうございました。では、失礼いたします」


握られていた手からすり抜け、そのまま逃げるように礼拝堂の中へ入る。背後で彼が言った言葉は聞かなかった事にした。

「あなたと是非、ゆっくり話をしてみたいのです」


 礼拝堂に入ると、一人だけ老婦人が祈りを捧げていた。私も少し離れた席に座り、祈りを捧げる。しかし、頭の中は、先程のキャルム・インファーナ様の事で一杯だった。

『なんなのかしら?どうして私を知っていたの?私などと話をしたいって、一体何の話をするつもり?』


学校で1年だけかぶっていたと言っていた。

『あんな天使な先輩なんていたかしら?全然覚えてない。まあ、クラスの全員を覚えきれなかった私が、他の学年の人を覚えるなんて無理なのだけれど』


結局、祈っている間中、彼の事ばかり考えていた。神様、ごめん。


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