3話 どんなセンスですか? 分かりません
いよいよ俺の番が回って来た。
ロドリゴの適正ジョブは遊撃剣士という強そうなジョブだ。
ミラの適正ジョブは上級魔導師。
どちらのジョブもチャラい司祭様が驚いていた。
俺も気持ちを引き締めないと。
先ずは、気合いを入れて祭壇で祈りを捧げる。
『創造神様、どうか俺を最強の勇者にして下さい!お願いします!』
これで祈りが通じたハズ。勇者ラミエに憧れてから毎日朝と夜に創造神様に祈って来たんだ。
さて、水晶に手を当てるか。
水晶に手を当てたけど、八角形の箱の回転方向はロドリゴと同じだ。
回転が止まると、虹色に輝く宝玉が落ちた。
「ヤベェ!UR玉キターーーー!!!」
チャラ司祭は背中を反らせながら今日イチの大声を張り上げた。
虹色の宝玉が、俺が触れている水晶に吸い込まれて行く。
うわっ、体の奥から炎が吹き出すように凄い力が溢れて来る。体を包む光も凄いぞ。
光が収まるのに少し時間がかかった感じがする。
慌てて魔導盤を見てみると…
名前:フリオ
年齢:12歳
レベル:1
センス:【トレード(極)】【我慢(極)】【鎖縛術(大)】【抜刀術(大)】【s△ユkt△(大)】【聖魔法(大)】
適正ジョブ:t△ー十y卯ぅm●ノノノ
く、くそう…勇者になれなかったみたいだ…
でもなんだろう…良く分からない最上級センスが2つ…上級センスが4つも有るけど…?
でも、抜刀術っていうのは強そうだぞ。
それよりも変な文字が書いてある。
俺の適正ジョブが分からない…
「シックスセンシズキターーー!!!って、何だコレ?
何のジョブだ?ちょっと、エラい人来て〜!」
チャラ司祭にも良く分からない表示らしい。
何かゾロゾロと年配の偉いっぽい人達が集まって来て、魔導板を見て唖然としている。
「何だアレは?見た事の無いセンスが有る。」
「トレード?はて…聞いた事も無い。しかもあの表記は故障か?」
「しかし、上級の戦闘センスが有るぞ。恐らくジョブは戦闘職の何かだろう。」
「ほう…【抜刀術(大)】とは珍しい。」
「ちょい待て!【聖魔法(大)】だと!」
「という事は、彼も冒険者学院で良いですかね。」
「盾術系や騎馬術系も無いようだな。騎士ではないだろう。」
偉いっぽい人が何やら話し合っている。
でも、どうやら俺は勇者じゃなかったみたいだ…ハァ…死にたい…
ま、でもロドリゴやミラと一緒に冒険者学院に行けるみたいだから良いか。
アレ…?ちょっとおかしいぞ?
「あぁ、フリオ君、もう水晶から手を離して良いよ。
ユーもお母さんと一緒に、別室で冒険者学院の説明聞いちゃいなよ」
「そ、それが…水晶から手が離れない…!」
チャラ司祭に手を離せと言われたけど、水晶から手が離れない!何だコレ?
思いっきり後ろに体重をかけて、手を引き離そうとしていると、偉い人っぽい人が騒ぎ出した。
魔導盤を見るとそこには…
『もう1回!!!』
何だ?この表示は?
不思議に思っていたら、八角形の箱が再び回り出した。
「うぉぉっ!マズいぞ!2回も宝玉を取り入れたら激痛に襲われて死んでしまう!」
「オイ!魔導具士!早く止めろ!」
「で、でも、逆回転キタこれ!SSR以上確定演出キター!」
「アホな事を言うな!フリオ君が死んでしまうぞ!」
「フリオっ!早く手を離しなさい!」
偉っぽい人達の物騒な言葉が飛び交い、母ちゃんが血相を変えて俺の手を引き離しにかかった。
でも、水晶に引っ付いた手は離れない。
そうこうしている内に箱の回転が止まって、金色の宝玉が落ちた。
焦った俺は、母ちゃんと一緒に目一杯体重を後ろにかける。
ヤバイよ。このままじゃ死んじゃうよ。
金色の宝玉が水晶に吸い込まれる直前、俺の着ていたシャツの袖が破れて、母ちゃんが後ろに倒れた。
その直後、金色の宝玉が水晶に吸い込まれて、全身に槍で突き刺されたような、もの凄い痛みが走った。
「グガァァア!!痛えぇぇっ!!」
「フリオ〜!嫌ぁぁぁ!」
あまりの痛みに大声を張り上げると、母ちゃんは涙聲で俺の名を叫んだ。
周りの偉い人らもパニックになっているようだけど、ものすごい痛みが全身を駆け巡って、それどころじゃ無い。
5分くらい経っただろうか?何とか激痛が治まった時に、後ろからどよめく声が聞こえて来た。
ふと、魔導盤を見上げると、何か表示が変わっている。
名前:フリオ
年齢:12歳
レベル1
センス:【小鳥の世話(大)】【掃除(大)】【空間魔法(中)】【成長率上昇(中)】【s*鄭十b☆△カ(中)】【双刀術(小)】
適正ジョブ:t△ー十y卯ぅm●ノノノ
アレ?何だかさっきよりショボくなってない?
ダメだコレ…もう死にたい…
水晶からやっと手が離れて、俺はショックのあまり四つん這いになった。
母ちゃんが駆け寄って来て、何か俺に声をかけてくれているけど、ショックが大き過ぎて耳に入らない。
「どういう事だ、コレは?」
「フリオ君は無事みたいだが…コレはセンスが入れ替わったのか?」
「【小鳥の世話(大)】…むぅ…ペットショップとかが最適ジョブか?」
「盛大なる爆死で草」
「だが、下級とは言え戦闘系センスが有る。ジョブも先程と変わってないような…」
「謎の中級センスも有る。」
「貴重な戦闘センスを授かったのだ。冒険者学院で良いだろう。」
何とかショックから立ち直った時に、偉い人達の話が耳に入って来る。
結局、俺と母ちゃんも別部屋に案内されて、来年からの冒険者学院特待生について説明を受けた。
説明係の爺さんが言うには、王国全体でも戦闘系のセンスを授かる人が圧倒的に少ないみたいだ。
大魔王の復活が5年後に迫っている中で、稀少な戦闘系センスを授かった人を戦力として育てるため、冒険者学院や騎士学院の学費や寮の費用を全て王国が負担する特待生制度を行なっている。
戦闘系のセンスを授かった人は、頭の中で『ステータス』と念じると、本人にしか見えない情報表示のウィンドウが目の前に出て来るようだ。
早速『ステータス』と念じてみた。
名前:フリオ
年齢:12歳
レベル:1
HP:720
魔力:512
物理攻撃力:804
魔法攻撃力:484
物理防御力:308
魔法防御力:460
腕力:646
脚力:534
瞬発力:472
知力:496
敏捷性:500
頑強さ:618
器用さ:702
センス:【小鳥の世話(大)】【掃除(大)】【空間魔法(中)】【成長率上昇(中)】【s*鄭十b☆△カ(中)】【双刀術(小)】
2/2
適正ジョブ:t△ー十y卯ぅm●ノノノ
ジョブ固有センス:【m*蘇ー(極)】【g¥ン加△とppp☆(極)】
ジョブ固有センスはそれぞれのジョブによって与えられる特殊センスみたいだけど、変な記号になって良く分からない。
うーん…このステータスが高いのか低いのか分からないぞ。
説明係の爺さんに目安を聞いてみるか。
「あ、大体の人のステータスってどれくらいなのかな?」
「うーむ、そのジョブやセンスにもよるが、戦闘系でレベル1じゃと下は50、上は150くらいじゃな。」
爺さんの言葉に耳を疑った。
え…俺のステータスおかしくない?
思わず声に出かかったけど、ステータス説明の時、他人に自分のステータスを明かさないよう言われた事を思い出して何とか止まった。
やっぱアレかな?【小鳥の世話(大)】が思いの外強力なのかな?
母ちゃんは隣で落ち着かない様子だし、ロドリゴとミラは外で待ってるみたいなので、冒険者学院の特待入学証明書を貰ってさっさと大聖堂を後にした。
「よぉ、遅かったじゃんか」
「フリオだけ何か有ったんじゃないかって心配してたんだよ?」
外で待っててくれたロドリゴとミラが声をかけて来た。やっぱ心配させてたみたいだ。
「ゴメン、ゴメン。何だか変なトラブルが有ってさ。
残念だけど勇者じゃないみたいだ…
でも、戦闘系のジョブっぽいから、俺も2人と一緒に冒険者学院に行けるぞ!」
「何だよそのぽいって。まぁ、良く分かんねえけど来年も3人一緒だな!」
「そうだね。3人で冒険者学院だね!」
俺のハッキリしない言い方に少し不思議な顔をされたけど、ロドリゴもミラも明るい笑顔で応えてくれた。
多分2人も俺と同じように、目標のジョブじゃなかった事がショックだろうに…ワザと明るく接してくれているんだ。
帰りの馬車の中で、俺のセンスを2人に教えた。【小鳥の世話(大)】のセンスをロドリゴに馬鹿にされたけど、細かい事は気にしない。
家に帰ったのは夜遅かったけど、起きて待っててくれた父ちゃんにセンスの事と、冒険者学院への特待生での入学を伝えた。
最初は凄く驚いていたけど、冒険者学院の特待生はエリートコースだととても喜んでくれた。
年が明けたら家族と離れ離れになるのは正直寂しい。
それに、憧れの勇者になれなかったのは正直悔しくてしょうがない。
でも、ロドリゴとミラの3人で、最強の冒険者パーティーになるんだ!
新たな決意を胸に眠りに就いた。
◇◇◇◇
何だろう?見た事の無い部屋にいる…
おかしな服を着て首から何かぶら下げてる人が多い…凄く明るい部屋で天井が光っている…
急に背が伸びたのかな?目線が高くなっている。
隣に座っている大人の人が俺に何かを話しかけ来るけど、何を言っているのか分からない。
っていうか、俺も周りの人と同じような変な形の服を着ているぞ?
隣の男の人が誰なのか分からない。20歳くらいに見えるけど、何処かで会ったことが有る気がする。
何でこの人は悲しそうな顔をしているんだろう?
ハッとなって体を起こした。
夢だったのか…
夢にしては妙な感覚だった。何だか頭の中に色々な光景が浮かんで来て訳が分からない。
でも、あの光景は絶対に何処かで見た事があるんだ。
夢の内容を思い返していると、母ちゃんが部屋にお越しに来た。
もう朝飯の時間か。でもあの夢は何だったんだろう…?