2話 センス剪定の儀は始まりますか? 分かりません
ついに『センス剪定の儀』当日。
俺と幼馴染のロドリゴとミラは、勇者パーティーになれる事を信じてカバナ領中央街の大聖堂へと向かった。
早朝に村を出て、中央街の大聖堂に着いたのは昼頃。
中央街の大聖堂は、今迄見たどんな建物よりも大きくて立派で、田舎育ちの俺たちは圧倒された。
白を基調とした大聖堂の屋根は高くて、下から見上げると、まるで空に屋根が突き刺さっているみたいだ。
暫く口を開けて大聖堂を見上げていると、正面の大きな扉から、父ちゃんに慰められている泣き顔の女の子が出て来た。
どうやらハズレのセンスを授かったらしい。
俺たちは期待と不安が入り混じりながら大聖堂のメインホールに入った。
正面奥の祭壇に向かって20人くらいの行列が出来ている。
俺たちは少し離れた所から『センス剪定の儀』の様子を見て、流れを確認した。
1人ずつ祭壇で創造神様にお祈りをして、祭壇の隣に置いてある、大きな八角形の箱の前に行く。
八角形の箱の前に置いてある水晶に触ると、箱が回転して、箱の側面に付いている穴から、『センスの宝玉』が出て来るという流れみたいだ。
出てきたセンスの宝玉は、水晶に吸い込まれて、水晶に触れている子供にセンスを与えるようだ。
丁度今、男の子が水晶に手を当てている。八角形の箱が止まって周りの人がザワザワしている。
男の子は体が一瞬光に包まれて、天井から吊るしてある大きな魔導盤に、授かったセンスと適正ジョブが表示された。
名前:ペップ
年齢:12歳
レベル:1
センス:【調理(中)】【物乞い(小)】
適正ジョブ:料理長
あんな風に表示されるのか。ペップという子とその母ちゃんっぽい人が喜んでる。
料理屋さんの子供なのかな?
俺たちも列の後ろに並んで、緊張しながら順番を待った。
俺たちの前に並んでいる子たちで、戦闘系のジョブになった子はまだ出ていないみたい。
逸る気持ちを抑えて大きく深呼吸をした。創造神様は俺たちを勇者パーティーに選ぶに決まってる。
ロドリゴの前の男の子のジョブが魔導盤に表示された。適正ジョブに『ヒモ』という言葉が表示されている。
男の子の父ちゃんは何とも言えない表情をしているので、あまり良い職業では無いのかも。
さて、いよいよロドリゴの番だ。祭壇でお祈りをして、水晶に手を触れる。
大きな八角形の箱が回転して止まった。
銀色のセンスの宝玉が出て来た。
「おっ!SR宝玉じゃん!」
水晶の近くに立っている、30歳くらいのチャラい感じの司祭様が大きな声を上げた。
でも、言葉の意味が良く分からない。
銀色の宝玉が水晶に吸い込まれて、それに触れているロドリゴの体が眩い光に包まれる。
俺たちは魔導盤の表示を見上げた。
名前:ロドリゴ
年齢:12歳
レベル:1
センス:【剣術(中)】【加速(中)】【身体能力強化(中)】【物理防御(小)】【金魚掬い(小)】
適正ジョブ:遊撃剣士
ロドリゴは適正ジョブが剣聖では無かった事がショックだったようで、その場で項垂れている。
俺もとても残念で仕方ない。たぶんミラも同じ気持ちだと思う。
「戦闘系ジョブキターーー!」
落ち込んでいる俺たちとは対照的に、チャラい司祭様が興奮気味に叫び出した。
「君、ロドリゴ君と言ったね!来年から王都の冒険者学院に特待生で行けるよ!
凄いよ君!さ、お父さんもあちらの別室で説明が有りますんで!」
そう言うと、チャラい司祭様はロドリゴと、ロドリゴの父ちゃんをホール奥の扉の方へ案内した。
どうやらロドリゴは、戦闘系でも結構良いジョブだったみたいだ。
少し間が空いて、ミラが祭壇へと向かう。ロドリゴと同じように、創造神様にお祈りをして、水晶に手を乗せた。
すると、八角形の箱がロドリゴの時と逆回りで回転し出した。
「うお〜っ!SSR以上確定演出キターーー!!」
チャラい司祭様はまたよく分からない事を叫んでいる。大聖堂の司祭様がこんな人で大丈夫なんだろうか?
そう思っていると、回転が止まって金色のセンス宝玉が出て来た。
「あ〜、金か〜!まっ、良いんじゃね?」
チャラ司祭様は少しガッカリした感じだけど、悪くは無いらしい。
金色の宝玉が水晶に吸い込まれて、ミラの体が金色の光に包まれた。
俺とミラが魔導盤を見上げると…
名前:ミラ
年齢:12歳
レベル:1
センス:【魔力増大(大)】【火魔法(大)】【風魔法(中)】【治癒魔法(小)】【ビー玉遊び(小)】【房中術(小)】
適正ジョブ:上級魔導師
最後のセンスは良く分からないけど、かなり良いんじゃないだろうか?
チラっとミラの方を見ると、大魔導師じゃなかった事にガッカリしているみたいだ。
「エ、エロ魔導師キターーー!!!」
何か急にチャラ司祭がけしからん雰囲気の言葉を叫び出した。それで良いのか?大聖堂。
やはりミラも冒険者学院の入学決定者と言われて、ミラはミラの父ちゃんと一緒に、さっきロドリゴたちが入って行った部屋へ通される。
良し!いよいよ俺の番だな!