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加藤良介 エッセイ集

サクラ大戦の考察と妄想

作者: 加藤 良介

 2020年春にサクラ大戦の新シリーズアニメが始まりましたね。

 一ファンとして新シリーズには頑張っていただきたい今日この頃。いかがお過ごしでしょうか。加藤 良介でございます。


 私がサクラ大戦と出会ったのはもう何十年も前。セガサターン版「サクラ大戦」でございます。

 スーパーファミコン全盛時のドット絵になれていた私はえらい衝撃を受けましたね。

 「ほとんどTVアニメじゃん。すげー」

 そして、一面をクリアした後に流れる次回予告。

 正直。

 「やられた」

 という感想しか出ませんでした。

 ゲームもコントローラー捌きを必要とされない戦術シミレーションでアクション苦手民の私も安心。

 私の中ではセガサターンのゲームの中では最高傑作であります。


 さて。絶賛しているサクラ大戦ですが、私はゲーム開始直後から違和感というか同情というか首をかしげる箇所がございまして。

 それは。

 「大神君。まじ可哀そう」

 であります。

 何を言っとるんだ。とおっしゃる方も多いとは存じますが、まぁ、聞いてください。

 大神君は太正13年に任官したばかりの海軍少尉。

 希望と誇りを胸に配属されるのが帝国歌劇団。

 はぁ。歌劇団? 何言ってんの。なんで海軍入って宝塚にいかにゃならんの。

 しかも、上司は陸軍米田中将。ふざけんな。俺は海軍軍人だぞ。

 米田さんが言うには、ここは帝国陸軍の外郭団体だそうな。

 ゲーム内でも大神君は戸惑いますが、戸惑うのレベルじゃないでしょ。

 何度も書きますが大神君は海軍軍人。何が悲しゅうて陸サンの指揮下に入らにゃいかんのだ。

 どこの国でもそうですが、陸軍と海軍は犬猿の仲。予算。人事。権益を巡って対立する半分敵国みたいなものです。

 よく国家存亡の危機に何をやっているんだ。みたいなことをおっしゃる方がおられますが、セクト闘争を甘く見すぎだと思います。第二次世界大戦でも同盟国ドイツから戦闘機のエンジンの設計図を買うときに陸軍と海軍は同じエンジンを別々に購入。さすがのヒトラーも呆れるという快挙を成し遂げた実績があります。

 もちろん。こんなことではいかんと、両者の融和に努める良識派というのも存在しますが、いつの時代も良識派はマイノリティー。根本的な解決には至りませんでした。

 大神君は任官したての新米少尉でありますから、そこまで反感が強いとは思いませんが、反感ゼロは当時の常識から言って無いと思います。

 そんななか陸軍のしかも外郭団体。

 まさに。

 「俺。何かやっちゃいました」

 を地でいくスタイル。すげー。

 任官早々に左遷人事食らうとか何したらそんな目に合うんでしょうか。

 私はこの時点で大神君、よく辞めなかったなと当時思いましたね。

 普通ならぶちぎれて海軍の人事局に殴りこむでしょうが。私なら絶対そうする。

 陸だよ。陸。とりあえず実家と友人の加山に電報打つね。

 「海軍に入ったと思ったんだけど、なぜか陸軍に配属されました。何を言っているかわからねぇと思うが、私も分かりません」

 的な電報をよ。

 その後、歌劇団というのは仮の姿で、本当は帝都を守る秘密部隊ということが明かされ一応、大神君も一安心。護国の精神にのっとって戦いの日々に突き進むのであった。

 よかったね。大神君。


 いやいや、果たしてそうでしょうか。

 そんなに簡単に納得できるでしょうか。

 話の中で大神君は士官学校を首席で卒業した。と出てきます。

 これは海軍兵学校をわかりやすくしたものでしょが、ちょっと待って。海軍兵学校を首席で卒業。まじで。チョーエリートじゃないですかやだー。

 当時。海軍兵学校に入学するだけでも故郷じゃ有名人。村を上げてのお祝いですよ。

 地元の有力者が次々とお祝いに来ますってば。

 今の防衛大学校も難関として有名ですが、当時なりたい職業ぶっちぎりナンバーワンであったろう士官になるための学校。競争率だけでもすごいことになっていたでしょう。その学校を首席で卒業って。どんだけー。

 帝国大学(東大)を首席で卒業するかそれ以上の栄誉ですよ。

 さらに兵学校の卒業者のうち上位の者は(2~3人)任官の際に天皇陛下直々に軍刀を賜るという、一般人なら眩暈を起こしかねない栄誉を賜ります。当然大神君もこの栄誉を受けたことでしょう。なにせ首席なのですから。

 大神君は極めて高い誇りと明るい展望に心は燃えていたはずです。

 彼が海軍を志した(志すというところが他の職業とは違う)ということは、彼の頭の中には日本海海戦の英雄、東郷平八郎の姿があったことでしょう。

 国難に対して大艦隊を率いて敵艦隊を撃滅する。そんな姿を想像しても妄想ではないのが大神君の立ち位置です。

 それなのに同じ国難と言っても、なんか蒸気で動く変な甲冑を着てよくわからん怪物と陸で戦う。

 「思っていたのと違う」

 と、さぞ挫折したことでしょう。

 しかも、普段は帝国劇場の改札で、もぎりやってんだぜ。

 同期の桜には絶対に見られたくない。嫌すぎる。そんな姿を見られたらお嫁に行けなくなる。

 とりあえず秘密部隊の隊長職という、はたから見ればよい立場を手にした大神君でしたが心境は複雑だったでしょうね。


 もう一度陸軍に戻りますが、当時陸軍でもっとも有名だったのは乃木希典です。

 この方は近年の研究によって名誉が回復されつつありますが、当時の評価で言えばとても良いとは言えないものでした。旅順要塞で大量の死傷者を出したときは家に投石されたこともあるぐらい非難された人です、この人への非難が弱まったのは要塞を落とした事より、自身の息子さんも戦死したからだと思われます。

 そして、この人は戦争後、学習院のトップに就任。教育に力を入れたのですが、そこで行われたのがいわゆる「精神教育」簡単に言えば根性論です。

 これが海軍、特に上層部は大っ嫌いな教育でした。

 ある士官のことばを紹介しましょう。

 「精神力で艦が進むか」

 この一言でい表していると思います。

 兵隊の命を愚かな突撃で浪費し、科学ではなく精神力で戦争をする。と思われていた陸軍。

 大神君には陸軍に対して生理的嫌悪感があっても不思議ではないでしょう。

 同期の桜が遠洋航海実習に出ている中。一人帝都で陸戦。

 「俺。なにやってんだろう」

 サクラ大戦2の冒頭で遠洋航海から帰ってきたというくだりがありますが、大神君は一年遅れで遠洋航海。ということは兵学校の後輩たちと共に行ったんですか。あんまりじゃないですか。なんかダブってるみたいで周りもさぞかし気を使った事でしょう。

 本当に海軍兵学校首席?

 泣いてもいいんやで大神君。



 さて。ここまで大神君のネガティブな状況について書いてきましたがそれだけではありません。いいこともあります。

 まず、上官。

 大神君はその特殊な職場環境からか極端に上官の少ない立場で働いています。

 作品の中には二人しか出てきません。任官したてなのに先に敬礼しなくてはいけない人物が二人しかいない。これは気楽であります。

 親分は米田中将。直属の上官が中将ってすごくない。しかも、海軍の大神君が名前を知っていたということは実戦部隊の指揮官だったのでしょう。日露戦争での従軍経験があるのはほぼ間違いないでしょうから大神君としても尊敬できる上司と言えます。尊敬できる上司。素晴らしい。ふだんは飲んだくれですけど。

 もう一人があやめさん。ちょっと階級は忘れましたが優しいお姉さんタイプの上官。なんの文句があろうか。ついていきます。


 さてここからがメインイベント。

 部下は全員、可愛い美少女たち。

 ばんざーい。ばんざーい。

 初めはツンツンしている女の子も共に死線を彷徨い、支えあえば親密度は嫌でも上がる。

 なんて素敵な職場なんでしょう。

 恋のお相手は選びたい放題であります。


 色々な作品で主人公の男の子がヒロインたちにモテモテになることがありますが、正直なかにはなんでこいつがモテるんだと言いたくなる男がおります。

 皆さまご安心ください。大神君はそこいらの主人公とは訳が違います。

 若く、さわやかで、優しい、強い、その上将来性二重丸の海軍士官。モテないわけがない。

 

 では、誰が大神一郎海軍少尉にふさわしいか見ていきましょう。

 皆さま一押しのおなごがいるとは思いますが、ここは海軍軍人として誰が一番良いか考察します。


 まずは当時の私の一押しであったマリア。

 人物としては申し分ないのですが、なにせロシア人。

 元とはいえ敵国の女。当時はシベリア出兵とかもあり、ごたごたした状況。良いとは言えません。

 そしてなによりこの人、足を洗ったとはいえ革命派の人物。

 あかん。あかんで。

 当時も共産主義に共感する軍人はマークされ高級将校といえども予備役に回されることもありました。大神君の出世の足かせになる可能性大。残念。


 次は紅蘭。私の知る限り元ネタのある唯一のキャラ。

 関西人枠で中国人眼鏡っ娘、マッドサイエンティスト系と、設定てんこ盛りの彼女。

 うーん。プラスにもマイナスにもならないかな。

 悪くはないと思いますけど、利点も見いだせない。何かすごい発明でもして、第二のエジソンにでもなれればワンチャン。

 同じような立場にカンナがいますね。

 中の人は日本一の出世頭ですけど。


 さらに、アイリス。

 アウト。

 立場がどうとか人物がどうとか関係ない。ガチで人生終了まったなし。

 お巡りさんこいつです。

 大神君を特高警察に引き渡しましょう。

 ああ。これで帝都の平和は守られた。

 15でねぇやは嫁に行きの時代でも。アウト。

 では、10年後ではどうでしょう。アイリスはどうやらフランスでも名の知れた名家出身のお嬢様。なんとなくプラスになりそうな予感。

 しかし、フランスか。フランスなぁ。

 正直言って微妙。これがイギリスの貴族令嬢なら万歳。アメリカの名家の子女でも善し。ですが、ご存じのようにフランスは陸軍国。海軍は頑張っていると言えども陸軍に比べるとねぇ。嫁にしてフランス駐在武官のポストなら狙いやすいとは思うけど、後に書きますが大神君はもっと上を狙える立場。この程度ではプラスとは言えません。

 アイリス。残念だったね。大きくなったら結婚しようと思っていたのに。


 それではメインヒロインにしてタイトルにもなっているサクラ君。

 お父様も帝国軍人。確か中佐だったかで、米田中将の部下。

 コネクションとしては申し分ありません。

 本人も大神君が大好き。さぞかしラブラブな夫婦生活が営めるでしょう。

 大神君がこのまま帝国歌劇団に骨をうずめるならサクラ君。ありだと思います。

 まさに理想的な職場結婚。

 上司の引き。妻の実家の力。そして、霊力の高い二人から生まれるであろう。ハイスペックな子供たち。大神家の陸軍の未来は明るいぞ。

 はい。そうなんですよね。

 大神君が陸軍少尉ならサクラ君でいいんですよ。陸軍少尉なら。問題は彼は海軍少尉。婚家が陸軍の偉いさんでもあんまり意味が無いんじゃないかな。ややプラスか、ややマイナスかのどちらかのような気がします。

 大神君。どうして陸軍を志さなかったんだ。

 そんなに艦娘が好きなのか。私は由良が大好きです。


 そして真打は最後に登場いたしますわ。言わずと知れた帝国歌劇団のトップスター。神崎スミレ。

 いよっ。待ってました。

 日本一。

 そうです。この人。いえ。このお方が大神君の相手に最もふさわしい人なのです。

 日本を代表する神崎重工の元締め、神崎家直系の一族。

 帝国歌劇団の装備一式は神崎重工製。

 当時で言えば三菱、住友に並ぶ大財閥のご令嬢。当然、軍や政財界への太い。ふとーいパイプがあります。大神君の出世にこれほどのものがあろうか。2~3年陸軍に出向していても全然問題なし。すぐにでも取り返せるでしょう。

 では、そんなすごい家の令嬢と大神君が結婚できるのかと言えば。

 大丈夫。全く問題ありません。

 なぜなら大神君は帝国海軍兵学校を首席で卒業。

 当時では恩賜の刀組と呼ばれるトップエリートの卵。ほかの海軍兵学校の卒業生とは昇進速度も段違いに早いのが通例。

 人物に問題が無ければ喜んで娘を嫁に出したでしょう。

 そして、みなさんご存じのように大神君はまれにみる好青年であります。スミレ嬢も大変気に入っておられることですし。婚約だけでも先にやっちゃいましょう。ぼやぼやしていると他にとられる可能性があります。さぁさぁ。

 すいません。取り乱してしまいました。

 このように二人を邪魔する障害はありません。




 では、実際にスミレと他の娘たちとどれぐらい違うが考察しましょう。


 他の娘たちでは大神君の出世は大神君の努力と運にかかっています。

 帝国歌劇団への出向はプラスにはならないでしょう。むしろマイナスの可能性大。なぜなら陸軍特殊部隊だから。

 陸軍でいくら功績を上げたからと言って、海軍からしてみれば「だから何」ってなもんですよ。心狭いなぁ。

 それでもまず。間違いなく大佐まで昇進できるでしょう。当時なら最新鋭の超弩級戦艦長門の艦長も狙えます。長門の艦長であれば大神君の自尊心もさぞかし満足されたに違いありません。

 年齢を考えると、新鋭の航空母艦か大和級戦艦の艦長もあり得る。

 だが、それ以上というと正直分かりません。

 将官に昇進できる可能性は他の海軍士官よりは高いとは思いますが、確実性に欠けます。

 退官間際に水雷戦隊の司令官か軍令部で何らかの役職に就くか。運が悪ければ予備役ということもあり得ます。

 陸軍にある程度顔の利く海軍軍人としてのポジションは得られるとは思いますが、主流派とはいいがたい。ついていく親分次第でしょうか。


 ところが、スミレの場合は違います。

 政財界に顔の利く神崎家がバックにいる大神君にわざわざ喧嘩を売るような人物や勢力もいないでしょう。むしろ皆、大神君を取り込もうと躍起になるはずです。大神君はゆっくりと自分の派閥を作ればよいのです。

 懸念が一つあるとすればスミレは一人娘っぽく描かれているので神崎重工の役員。そして社長への流れがあることでしょうか。(これを懸念と言えるのがすごい。普通なら大成功でしょうが)

 それでも大神君が海軍での足場をしっかりと固め、それなりの勢力であれば大丈夫でしょう。

 落とし穴があるとすれば一つだけ。第一次世界大戦後の軍縮の流れで締結されたワシントン軍縮条約。これをめぐる派閥抗争で海軍は条約を認める条約派と、死んでも認めない艦隊派に分かれます。ここで大神君は条約派に与してはいけません。条約派で生き残った将官は片手で数えるほどしかいなかったからです。ここだけ気を付けてね。

 海軍主流派に与し、婚家である神崎家からの全面的なバックアップがあれば、連合艦隊司令長官。艦政本部長。などの高官から政治家に両足突っ込んだような海軍次官。その上の海軍大臣も夢ではありません。むしろ彼のためのポストと言ってもよい。

 そして陛下のご親任篤ければ内閣総理大臣まで狙えます。これはマジで言っています。

 当時の海軍出身で総理大臣に任命された山本権兵衛。のちに終戦工作に尽力した米内光政などの例を考えれば不可能ではないのです。

 すごいな。大神君。

 内閣総理大臣。大神一郎か。

 うん。悪くない。

 名前も覚えやすいから受験生も安心。

 

 というわけで大神君の嫁はスミレ一択であります。皆様ご納得いただけましたでしょうか。

 長々と私の妄想にお付き合い頂いて誠にありがとうございます。

 それでは私はこれからカラオケ屋にでも行ってサクラ大戦の主題歌を歌ってこようと思います。

 みなさん。さらだばー。




これとは別に小説もUPしております。

よろしければ、そちらも読んでくださいね。

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[一言] 現実の歴史とは異なるパラレルワールドなので多少のひっかかる部分はあれど、すみれ様が出世のベストアンサーなのは間違い無いと思いました(笑) 漫画版とかの情報含めると海軍上層部も伝えられる範囲…
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