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神様に媚びていく異世界転移  作者: 無駄無駄
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1話 嫌いなものほど縁がある

「異世界転生…しませんか?」

四方八方が白で埋め尽くされる異様な空間の中、タナカは超絶美人な女性としか表現しようがない人物?に声を掛けられていた


タナカはネット小説をよく嗜む、一般的な大学生である。

そんなタナカは例のごとく異世界もの小説をよく読んでいるが、その中でも「神様」が出てくる系は大っ嫌いだった。

なんで転生もとい転移させるのか、なんで主人公に甘いのか、神様に何の得があるのか、そもそもミスするな、主人公は神様なめすぎ、などなど違和感を挙げればキリがない。

もちろん、突発的に転移したり転生したりする奴は説明が全くないが、神様とかいうメタ的な異常な存在が出てくるよりは説明がないほうがいいと考えていた。


そんな自分の前にきた異世界チャンスがよりによって神様ものだとか最悪な気分にタナカはなっていた。

そして、まだ神様と確定していないが、これ見よがしな目の前の存在にどうせこんな思考も読まれてて「無礼な!」とか「わしは本物の神様じゃぞいww」とかなるのかと考えさらに気が沈んでいた。


「その…なんか言っていただけると…」


神様的な存在が殊勝なことを言ってきた。

これはもしや主人公に頭上がらない系神様か?とタナカは少し喜びかけるが、こんな思考をしてしまったのに神様がどんな行動するかわからないので、何も言えない。


「あ、思考は読んでないので安心してください!」


信用できるか!と内心タナカは思う。言い出すタイミング的に思考を読んでるのではと益々疑念を深めるが、ふとタナカは気が付く。

思考リ―ディング抵抗できないんだから利口にふるまったほうが良いのではと、

そう考えると、この十数秒間の自分の振る舞いは大変失礼ではないのかと思い直し、タナカは慌てて行動を始める。


「す、すいません、何を言えばいいのかわからなくて…少し黙っちゃいました」


嘘はどうせばれると考え、なるべく言い方をよくするようにタナカは考えた。

すると、おそらく神様的存在は、またしてもタナカを困惑させることを言い始める。


「いや、こちらこそすいません。マニュアルに、思考を読んでいないことを先に伝えろって書いてあったのに、すっかり忘れちゃってて」


マニュアル!?タナカは内心驚愕する。

え、異世界転生って一般的なの?てか神様なんだからミスするなし、マニュアルとか使うなしと、タナカはまだ神様とは確定していない存在にイラつく。

しかし、そんなことを表面に出してはいけない。一応、相手は思考を読んでいないと言っているのだ。その手前、どんな失礼なことを考えても、言っている手前、思考に対して何か言ってくることはないと思っているが、表面に出して不快にさせたら何が起こるかわからない。

タナカは急いで考えを修正し、このパターンの転生は情報収集が大事であると気持ちを切り替える。


「いやー、仕方ないですよ。僕もマニュアル覚えるの苦手だったので、忘れちゃうのはすごくわかります。ところで、いくつか質問とかしてもいいでしょうか…?」


心にもないことを言いながら、タナカは顔色を窺いつつ質問タイムの流れにもっていく。


「ホントにすいませんね。なにぶん転生させるのが初めてなもので。それで、さらに申し訳ないんですが、質問の前に基本の情報を伝えさせてもらってもよいでしょうか?」


タナカはなんか普通に対応してくれる神様的存在に、少し安心しつつ問題ないと頷いた。


「はい、では手短に基本情報を伝えますね。

まず、転生先は、そちらが分かりやすいように言うと、剣と魔法のファンタジー世界です。えーと、ただ、文明レベルに関しては、分野的に差があり、発展してる部分は未来レベルで、未発達部分は中世レベルらしいです。

そして、転生の際には、私と相談は必要ですが、ご希望のスキルをいくつか持っていくことができます。

とりあえずこれが基本情報になりますね。」


タナカは、聞いた内容が一般的な転生ものであることを確認しつつ、気になることを整理し、質問していく。


「はい、いくつか質問させていただきます。

まず、あなたのことはどのような存在と考え、どのように呼称すればよいでしょうか?」


「あ、そうですね、それも伝え忘れてました。私たちは、あなた方が考える神様と表現するのが一番適しています。呼び名に関しては、えーと、そうですね、Aと呼んでください。」


「はい、わかりました。そうしましたらA様、今回の転生はどのような目的のもとに行われるのでしょうか?」


「えーと、転生先の世界をいい感じにかき回してもらうというか、楽しんでもらうというか、そんな感じのが目的ですかね」


「…」

神様の緩い回答にタナカは思わず黙る。

なんというか、たどたどしいというよりは、やる気が感じられないのだ。

この神様、いやA様は…。

初めて転生をさせてるらしいから、新人の神様とかいうやつなのかと思ったタナカ。

上司がいるなら教育しろよと思いながら、この感じなら色々ぶっちゃけてくれるのではないかと期待しつつ、ちょっと深く聞いてみようとタナカは考えた。


「あの、本当にそれが目的ですか?ほんとにホントですか?どんな理由でも面倒なことはしないので、正直な目的を教えてもらえたら嬉しいのですが…」


沈黙

別に動揺した様子もないが、A様は少し考えた後、考えることが面倒になったかのように言った


「あー、わかっちゃいますか。とりあえず率直に言うと、

我々が楽しむためらしいですよ。」


最悪、最悪だ。転生物の中でも最悪の部類のヤツ、神様のおもちゃパターンだこれ。

タナカは一気に気が重くなる。

このパターンの奴は、だいたい、転生者は一人じゃない。

それで色々な人間模様を見て神様は楽しむのだ。


「なるほどー、もしかして転生者って僕以外にもいたりします?」


「そうですねーいますよー」


素を出してきたのか緩くなってく神様に反するように、タナカはどんどん固くなっていく。

タナカは自分自身の能力に一切自信などない。所詮、一般人だ。物語の主人公のように、頭を使い、神様のスキを突くとか、誰もが思いつかないような能力を思いつくとか無理だ。

間違いなく、持ち込むスキルが重要になると思うが、いい考えが思いつかない。

もしかしたら、タナカが想定しているような、転生者同士がぶつかり合うようなバトルロワイヤルになることはないかもしれないが、神様たちのオモチャとしてしっかり楽しませないと碌なことにならない可能性がある。


タナカは思う。

ハーレムを築けなくてもいい、俺tueeできなくてもいい、

ただ惨めに死にたくはない、踏み台転生者にはなりたくない、

ネット小説で読んだ哀れな奴らにはなりたくないと。


どうする。どうする。どうする。

タナカは考える。

もっと情報を収集すべきなのだろうが、今の固くなったタナカは気が回らない。

どういう情報を手に入れるべきなのか。

どのようなスキルを得られるようにするべきなのか。

そんな曖昧な浅い思考が脳内を流れていく。


「ほかに質問はありませんかー?」


「あ、いや、まだあります…ちょっと待ってもらっていいですか…?」


「はーい、大丈夫ですよ」


眠そうなA様にタナカはついつい気を取られてしまう。思考が纏まらない中で一応超絶美人なA様を見ているとタナカはある事に思い至る。

そういえば、この神様がやる気がないのは、こういう非人道的な遊びに乗り気ではないからでは?

希望的観測がタナカに生まれた。

タナカは一般人だ。頭が回っていないときに希望が見えればすぐに飛びつく。


「もしかして、A様って今回の転生には反対だったりしますか?」


「いや、そういうわけじゃないよー」


タナカの希望は一瞬で打ち砕かれる。

終わった。

やる気ないように見えて、A様、実は外道パターンをなぜ考えなかったのか

タナカは自分の思考の甘さを悔やむ。

これでもうA様に怪しまれたのは確定だろう。タナカは王道パターンを諦めた。


そしてタナカは、結局、媚びた。


「なるほどー、じゃあ神様が面白くなるようなスキルだといい感じですよねー」


「そうだね、それだと助かるかも。一応、他の神様と競争みたいな側面もあるっぽいし」


「へ~ぇぇ、き、競争ですか。ど、どんな競争なんですか?」


「担当した転生者の中で誰が一番面白いかみたいな」


「……じゃあ頑張らないといけませんね。どういう系の展開が好みの神様が多いとかってわかりますか?」


「うーん、いままでこういう系の話、あんまり興味なかったんだよね。後輩からどうしてもって誘われたからやってるけど」


「…いろんな展開にこたえられるスキルにしますか」


もう色々突っ込みどころが多すぎて、タナカは嫌になってきた。

早く転生したい。

そこで、こんな能力を提案してみた。


「1日に3つ能力を貰える能力ってどうですか?これなら、A様が好みで後から色々介入できますしね」


「ちょっと待ってね、マニュアルで問題ないか確認してみる…」


マニュアルがとても気になるタナカであったが、やはり神様、マニュアル本のようなものは全く見えず、すぐに


「直接介入はダメって決められてるけど、武器・武具の転送はありだし、

1日に3つかー、ちょっと多いかな。1つならいいと思う。

私たち側からの誘導でなければスキルの縛りは緩くてOKらしいから、OKでしょ」


「よかったです。もしよかったら、細かい部分はA様が好きに決めてください。面倒だったら色々やりますけど。」


「大丈夫よ、方針さえ決めれば、ほらパパっと。これで能力が付いたはずだよ」


もはや、最初の口調は何だったのかというくらいに緩いA様だが、タナカは突っ込まない。


「ありがとうございます。じゃあこれで転生ですか?しっかり楽しませられるように頑張ってきます!」


とりあえず勢いのまま敬礼をし、細かいところは転生してから考えればいいやとタナカは、ダメダメ転生者特有の思考放棄をする。


「いやー、転生は最初が一番めんどくさいって聞いてたけど、すごい楽で助かったよ。ありがとね。じゃあ、いってらっしゃーい」


タナカの足元に穴が開き、タナカは落ちていく。そしてだんだんと意識が沈んでいくのを感じる。

最初のスタートは転生者としての関門だ。よくある展開なら神童として祭り上げられるが、他に転生者がいる以上それは慎重になるべきだ。

他にこれが神様による遊戯であると気が付いている転生者は、きっといるはずである。

とりあえず、普通に生き、転生者グループの中でもある程度重要なポジションを自獲得することを目指そう。だけどリーダーはいやだ。

などとぎりぎりまでタナカは考える。先ほどは思考放棄したくせに。

気が重くなる相手がいないほうが、思考はできるというのは当然かもしれないが。


次に気が付けば、赤ちゃんか。お母さん美人だったらいいな。

そしてタナカは意識を失った。



そして気が付いたら森だった。しかも、なんか体が重くて動けない。

あれ、転生じゃなくね?

タナカの異世界転移物語が幕を開ける


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「いってらっしゃーい」

手を振り見送ったA様はすぐに後輩に連絡を入れる。

その姿は、先ほどの超絶美人な女性ではない。人の輪郭だけが存在しているといった形か。

転生者には受けがいいから、できるだけ美人な姿であったほうがいいというアドバイスを受けて、美人を取っていたが、もうその必要はないと判断したのだ。テクスチャ部分だけをはがしていた。


(Bくん転生終わったよー)


すぐにイケメンが現れる。金髪できれいな鼻、ぱっちりとした目、美しい輪郭、まさにTHEイケメンといった人物が現れる。


「なかなかに早めに終わりましたね先輩。結構テキトーな人材だったみたいですね。

普通は質問やら能力精査やらで時間を食うのに」


「いやー、締め切り過ぎてたから助かったよー。ほかのみんなとの誤差は2分くらいで済んだし」


「ホントっすよ!あれだけ締め切り守るように言ったのに!!

でも転生者の子はかわいそうですよ。一番早く転生した子から10年遅れてるんですよ。転生スタートダッシュで10年の差はでかいですよー」


軽い口調でしゃべる二人、眠そうなAに対しBは輝かんばかりにニコニコした顔で話しかける。


「そーれーでー、どんなスキルを頼んできたんですか相手はー?A先輩の力なら最強の強度ですよー。無敵になるような奴はやめてくれましたかー?」


「うん、大丈夫だよ」


「ほんとですかー?めんどくさいからって言ったものそのまま採用してませんか?

転生者ってうまく最強のスキルを得ようとしてくるやつらばかりですから、ルール違反にならないためにもマニュアルを見ながら…」


「まだ実際には与えてないからねー」


Bの言葉を遮って言ったAの言葉にBは慌てる。

A先輩が自分の思い道理に動くわけがないと思ってはいたが、想定していなかったBは急いで問いただす。

Aは普通に事情を話した。


「え、ありなのそれ、っていうか話しちゃいけないこと話してませんか!?」


転生が、神々の遊びの一環として行われていることは、転生者には言ってはいけないということは基本中の基本である。

Bはしっかり注意してた。問いただされたら色々うまくごまかすように話していた。テンプレも教えていた。

実は、他の神は、そもそも転生者に目的に違和感があるようには伝えないし、問いただされても皆うまく返すので、今回の転生の目的が神々の遊戯であることに気が付いているのはタナカしかいない。


Aがしっかりやれば、転生者がそもそも伝えた目的に疑念を抱くことはないので、BはAのやる気がそこまで削がれていることに、再び危機感を覚えた。


「まあ問題はないと思うよ、そういう資質はなかったし」


「……信じますけど、ルール違反ですからねそれ

ちょっと心配なので今のタナカくん確認しますよ」


そういって、手をかざし出現させたスクリーンにタナカが映る

映ったタナカは森に横たわり、動けず、なにより 成人の姿 をしていた


「ちょ、ちょっと!転生じゃなくて転移じゃないですか!?」


「あ、間違えてたごめん」


「ちゃんと話してましたけど、転生にしたのは転生者のためなんですよ!?

ほら見てください彼!そのまま転移したから、重力でへばってますよ!死んじゃいますよこれ!!」


「あわわわわわわわわわわわ」


眠そうな顔はそのままながらAは慌てる。ちょっとだけだが、先ほど自分に都合がいいようにいろいろやってくれた彼が何もせずに死ぬのは嫌だと感じていた。


「えええええ、普通なら!もう見捨てますけど!!先輩は転生初めてですし手助けします!!

だから他の皆さん特例で許してくださいね!!!

先輩急いで、1日目のスキルあげちゃいましょ!…って『能力』!?

先輩―!『スキル』ってマニュアルにありましたよね!?『能力』扱いで渡すのはダメって――「だって彼が能力っていうから…」-----ああ、もういいや、とりあえず『これ』を渡しましょう!!

他の転生者のスキルに比べればかわいいものなのでいいです!!ほら急いで死んじゃう!!!」


こうしてタナカの最初の能力が決まり、タナカの物語が始まった。




スキル:現地人が対抗可能

能力:対抗手段なし

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