あいドルのフェロモン5
【横浜グランデューナ国際ホテル】
「ムキキキッ、万事休すしょ」
走行不能のバイクで歌う浜田未来をプロジェクタ画像が映し出す。
「未来ちゃんの森田プロ移籍の件も、これで発表する状態じゃないしょね」
そう言うと先ほど 飲みかけたワインを口に運ぶ。
「うむ、コンプリート」
「完了という事ですね。」伊藤が会長の傍らで再度ワインを注ぐ
「勿論、ワインの味もコンプリートしょ」
余裕の笑みを浮かべる水上会長
しかし、プロジェクターのTV映像を見て徐々に表情が変わる。
【ピーポォ、ピーポォ!!】
警察が封鎖している国道から救急車が2台のバイクの前に急停車
後部の扉が開くと
中から現れたのは、なんとゴットシン
「麗しき鈴原藍殿、そして永遠の歌姫ハマミク殿 オマタァ☆」
そう言って、白衣の姿のゴットシンがコマネチのモノマネ
「バカやってないで、早く全員のせちゃってぇ」運転席から婦長さんが叫ぶ
「警官にバレル前に、みんな乗る乗るでゴザル」
3人はイソイソと救急車に乗り込むが、ハマミクは歌ったままライブカメラに向かっている。
2番の歌詞が終わり前奏中の中、ヘルメットを取り白の皮ツナギを脱ぎ捨てると
中からホットパンツ姿のセクシーな衣装
そして、クチパクで「オ・マ・タ・☆」さらにコマネチの動作
今までクールなイメージで通してきた浜田未来には有り得ない行動。
「ハマミクさん間に合わなくなるから早く!!」鈴原の呼びかけで浜田も飛び乗る
救急車の中で歌う浜田未来の表情は晴れやかだ。
【ジャガジャガン♪】そして歌が歌い終わると鈴原も一緒にカメラにカットイン
「突然ですがぁ 私、浜田未来と鈴原藍は森田プロに移籍することになりました」
「理由は森田プロの社長が鈴原さんのお父さんだったからでぇす。」
「はいっ、念願叶ってお父さんを見つけることが出来ました、皆さんありがとうございます!!」
「えっ何で私まで森田プロに? なんて思ってません?!」恍けた顔でハマミクが言うと鈴原は
「思ってます!!思ってます!!」と間髪入れずに答える。
「私と鈴原藍が仲良しだからでーーーす!!」
「そうなんです★」
「こんな2人ですが」
「移籍しても応援してくださいね♪」
「おねがいしまーーーーーーーーす!!」
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【ブッハッ】
「何がおねがいしまーす だしょ」
口に含んだワインを吹き出し仁王立ちの水上
「かっ会長ぉ、あまり興奮すると血圧がぁ」
「うるさい!!」
「しっしかし・・・・」
「これで完全にミクちゃんも森田のところ決定しょね」
「もともとお嬢様が決めていた事ですよ会長」
「里香の話はするんじゃないしょ、ところで伊藤っ!! ちゃんとテレビ局に人を送ったしょかぁ」
「はいっ、そろそろスタジオに着いたころかと・・・」
「ならイイしょ、念のため長谷川の所に手を打っておいて良かったしょ」
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【スタジオのモニター室】
「良かった、どうやら間に合いそうだな」
鈴原と浜田が映る中継モニターを見ながら長谷川が
生前に録画しておいた星野愛のDVDを機材にセットし
何時でも再生出来る状態にスタンバイ
『ガチャ』『バタン』『バタバタッ』
そこに黒尽くめ男たちが数名が足早に入ってくる。
「誰だ!?」
無言のまま男たちはモニター室を物色
「なッ何をするっ!!」
「これが放送予定のディスクなのかな」
リーダー格の男が、先ほどセットした機材からDVDを取り出してしまう。
「やめろぉ!!」3人に取り押さえられた長谷川は制止することすら出来ない。
「こちらにも、もう一枚有りました。」
長谷川の鞄を物色していた男が、もう一枚のディスクも見つけてしまう。
「頼む!! 頼むから返してくれぇ!!返してくれたら何でもする、お願いだぁ!!」
「残念だが、この2枚のディスクはこうしろと言われているんでね・・・」
『バキッン!!』 『バキッン!!』
リーダー格の男は2枚のディスクを長谷川の目の前で次々と割ってしまう。
「なっなんてことを・・・・・・・・・・・・」
床に手を着き、うな垂れた長谷川の目の前には
無惨にも真っ二つに割られたディスクがあるだけだった。