ラブソング24
【川崎拓人の自宅】
「拓ちゃん!! 拓ちゃん!! 正徳くんが来てるわよ」
「帰ってくれって言って」
「帰ってって言っても、今日で3日連続でしょ」
「いいから帰ってもらってぇ」
【ガチャ】
「うわぁぁ」
「何が うわぁ だよっ、何時まで学校休む気だ」
「勝手に入ってくんなよぉ」
「一週間も理由無しで学校休んだら、心配するだろうよぉ」
「心配したからって、部屋に入るかフツウ」
「お前がフツウじゃないんだから俺だってフツウじゃないよ」
「正徳は初めからフツウじゃないもんなっ」
「ああっだからフツウじゃなかったのにフツウじゃなくなったらフツウなんだよ!!」
「何だそれっ」
「プッ」
「クックククッ」
「バーカ」
「うるせぇ バーカ」
「・・・・・・・。」
「何かあったのか?」
「ん・・・まぁ・・」
「鈴原か・・・・・」
「そんなトコ・・・」
「やっぱりなっ」
「なんだよっやっぱりってぇ」
「最近のテレビ番組は鈴原だらけだ」
「だからって何だよ」
「あいつ全然笑ってなくてさ、作り笑いの一つもしないんだ」
「嘘だろっ? 史上最強のスマイルガールなんだろ アイツ」
「ああっマスコミの格好のネタになってるよ」
(・・・・・・・・・・・鈴原。)
「ただ一人肯定的な意見を言ってるのが、意外なことにスッポンの梨木だけ」
「スッポンの梨木だけ?!」
「ああっ、ゴットにその話を聞いたんだけど 【今にワカルでゴザル】 って内容までは教えてくれないんだ」
「ゴットシンは何でもお見通しかぁ」
「鈴原に会いに行くか?」
「えっ鈴原んとこに・・・」
「喧嘩してんだったら会って話すが一番だろ」
「う~ん・・・そんなんじゃ無いんだ」
「お前が原因じゃないのか? だったら鈴原だって誤れば、【何の話だっけぇ】なんて言って許してくれるよ」
「誤って済む様なことじゃないんだよ正徳」
「・・・そっか」
「うん」
「そうだ!!星野さんは実家に帰ったって、ゴットが拓都に伝えてくれって」
「希望通り芸能界引退できたってことか・・・」
「もったいないよなっ引退なんて」
「イイじゃん、本人の希望なんだし」
「引退するんだったら生で【ラブソング】聴きたかったな」
「?」
「お前がギター弾いて星野さんが歌うとこ見たかったよ」
「はっ? 僕のギターで星野さんが一緒に歌う???」
「なんだよ、本人が知らないって事あるのかよ」
「言っている意味がわからん?!」
「嘘だろ、ウチの店(酒店)の有線でお前と星野さんの曲流れるぜ!!」
「僕と星野さんの曲?」
「ああっ」
「なに寝ぼけた事言ってんだよ正徳」
「寝ぼけてなんかいないよ、お前が何時も病院で弾いていたフレーズだったぜ」
「僕の弾いていたフレーズ?」
「そうだよっ、だいたいユニット名が【アイコンタクト】だぜ間違いないよ」
「アイコンタクトって、愛コン拓都?」
「なんだよ知ってるじゃん」
「いや知らん、言ってみただけだ」
あれ以来、テレビもラジオも聞いていない僕にとって
鈴原の活躍も、星野さんと僕の曲の話しなど知るよしもなかった。
久しぶりにラジオをつけると正徳の言っていた通り
僕の曲に星野さんが歌った楽曲【ラブソング】が頻繁に流れている。
「何時の間に録音したんだ」
録音する環境となると、星野さんの誕生日に弾いた時しかなかった。
僕のギターに星野さんの優しい声が柔らかにのる。
リリック(歌詞)はもちろん星野さん。
アイドルブロガー・ゴットシンお墨付きのリリックだ。
謎のユニット【アイコンタクト】
巷ではそんな見出しで騒ぎ立てる
ボーカルが星野さんだから、当たり前だが
星野愛ネタを追い続けていた
スッポンの梨木が大人しいのが気がかりだった。
そんな事もあり
楽曲の件を聞こうと森田プロに連絡するが
星野さんの全てを任されている長谷川さんが長期休暇中で
詳細はワカラナイまま
僕は事の成り行きを時間に委ねるしかなかった。