ラブソング11
【再び、森田プロ事務所】
エムベックスに電話する森田社長
「もしもし会長に繋いでもらえるか?!」
『申し訳ございませんが、会長へ直接のお電話はお繋ぎできかねます。』
「森田プロの森田からだと言えば分かるはずだ」
『ですが、お繋ぎすることが出来ないことに・・・・・・・・・・・』
「そんなハズないだろ!!」
【ガサ・・】電話機から雑音
『あら、森田さん!!お電話代わりました里香(社長)ですぅ、お久しぶりですわ』
「おっお嬢さんですか、お久しぶりです。実はお父さんと話がしたいんだが・・・」
『お父様と? ワタクシでは役不足ですかしら』
「・・・お父さんと重要な話があるんだが、繋いでもらえんかね」
『重要な話なら社長のワタクシが承りますわ、お父様より確実にワタクシが適任と思われますしぃ』
「お嬢さんと話す内容ではないんでねぇ、お父さんには代わってはもらえないかい?」
『あっそうだわ、電話でお話もなんですので今からお食事でも如何かしら?』
「おっお食事?」(相変わらず人の話を聞かんのか・・・)
『そっお食事しながらがイイわ、ヒルズに美味しいお店がござますの』
「う~んっ、困ったな水上くんと重要な話をしたいんだが・・・・・」
『お店の予約は・・・今取れましたわ、森田さんの事務所に今すぐ車をまわしますぅ』
「はっ!?よっ予約っ???」
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六本木ヒルズ内 スローフードレストラン 【αグリーン】
「どういうことなの?」
「鈴原教授のお嬢さんが、先ほどムジテレビの番組に出演なさっていたと言う情報が入りまして・・・」
「へぇ?!嘘でしょ」
「番組の中でエムベックスに所属していると公言しております。」
「冗談言わないで、娘からそんな話聞いてないわよ」
「しかし、教授の出演している番組プロデューサーからの問い合わせでしてぇ」
「ドッキリか何かなのぉ、そんなの流行らないわよぉ」
「間違いならいいんですが、年恰好もソックリでしたし名前も同じのようでして・・・」
「年恰好も名前も一緒の偶然もあるでしょ」
「間違いならイイんです。本当だったらマスコミの格好のネタにされますので・・・」
「・・・・」(まさか別れた夫が芸能界に誘ったなんてこと無いわよね)
鈴原藍の母、鈴原碧は不安な面持ちで食後の紅茶を口に運ぶ
「ふぅ~ 美味しいダージリンだわ・・・有機栽培された茶葉は違うわね」
「鈴原教授に気に入ってもらえい光栄です。」
「そうね、またこのお店使わせてもらうわ。 そろそろ帰りましょう」
鈴原碧と助教授の男が立ち上がると
レストラン入り口から、どやどやと業界人らしき人物が数名来店
とりまきの中心にいるのは
森田プロの社長・森田毅とエムベックス社長・水上里香だった。
「頼むから君のお父さんを呼んでくれないか?」
レストランまで来てしまった状態にうろたえながらの森田
「その話は後後、先ずはお食事いたしましょうよぉ♪」
森田とは裏腹に楽しそうな水上里香
「って言うか・・・どうして食事することになってるんだ?!」
「ここの食材は全てスローフードですのよっ
だからとっても美味しいくて体にイイですの、毅さんもきっと気に入ると思うわ!!」
そう言って、森田の腕に絡みつく水上里香
「ふふっデザートも頼まなくっちゃ♪」水上里香はそそくさと店内に注文しに行く
その状況に困った顔の森田毅
「そうね た・け・し さんもきっと気に入るわ」そう言って現れたのは鈴原碧
「みどり?!」
「復縁の手紙をよこしておきながら、デートとは筋金入りの詐欺師だわね!!」
「ちっ違うっ!ご誤解なんだ」
「あら、この状態で誤解もなにも無いわよねぇ」
「今日は水上会長と話が・・・・」
「会長? 何処にいるのかしらねぇ?! 嘘をつくならもっとマシな嘘ついたらどうなの!!」
「くっ」
「まさか藍まで嘘つくように誑かしてるんじゃないでしょうね」
「嘘?・・・・タレント事務所の件は聞いてなかったのか・・・」
「えっ! もしかして、本当だったのぉ!!・・・なんて事なの・・・・・」
「だから水上会長にその話をつけようとぉ・・・」
「藍が、あなたと同じ世界・・・芸能界に憧れていたなんて信じられないわ」
「俺も今知ったばかりだよ」
鈴原碧は携帯電話で何処かにかけはじめる。
「絶対辞めさせてやるわ!」
そう捨て台詞をはいて鈴原碧はレストランの外へ
「辞めさせるか・・・エムベックスに入った以上、そう簡単にいかないんだよ 碧」
ポツリと森田がつぶやいた。