フェロモンの香り9
【ドナルドの巻】
気がつくと夕食の時間
今日の夕食は、相変わらず
豆と葉っぱ系の食材、通常の僕なら一言
「若者の夕食なんだから肉をオカズに付けろってんのぉ」
てなぁボヤキの一つは吐いていたはずだ。
今の僕には、そんなボヤキの言葉など吐く余裕はなかった・・・
昨日の晩の出来事や先ほどの出来事など
連続して起こる現実離れしたことに整理がつかないほど頭がイカレていたのだと思う。
そんなボーッとしていた顔がニヤケていたかどうかは定かでないが
食事が終わるころに、正徳が病室に入ってきて
一言目がこれ
「何、ニヤけてんだよ」
ハッと我にかえると大きな荷物を抱えた正徳が立っていた。
「正徳っ 何時の間に・・・」
「何時の間にって、ちゃんとノックして入ってきただろ、エロイ事でも妄想してたなっ拓都」
くぐっ図星だ、さすが正徳
「それよりワルイッDVD 鈴原に持ってかれたぁ」
「学校で聞いたよ、鈴原に・・・」
「ごめん!!」
「いいよ別に、沢山あるから」
「・・・・・・たくさん(汗)」
「夕飯前の時間に来なかったから、今日は来ないと思ったよ」
「色々と支度があってなっ」
「支度・・・・?」
「ところで、拓都 もう歩けるのか?」
「松葉杖なしでか? 大丈夫だと思うけど ちょっち不安かなぁ〜」
「そうか・・・」
「まっ松葉杖1本あればカナリ安心して歩けるけどなっ」
「ヨシっ なら行くか!!」
「行く・・・?」
そう言うと正徳は持ってきた荷物の布袋を取り始める。
中から出てきたのは、マクドナルドにあるドナルドの人形だった。
「なっなっなんだぁ〜」
「ドナルドだ!」
「みりゃわかるよっ こんな特徴ある人形」
「マニアなら飛んで喜ぶ、直立型のドナルド様だ!!」
「へっ・・・・・・」
「現在のドナルドは、ベンチに座っているタイプのドナルドがほとんどなんだ」
「だから なんだってんのぉ」
「いまや直立型は入手困難、だから超レア物なのよぉ〜」
「ん〜? レア物はワカルけど。その等身大人形を病室の置物にするってんですかい正徳殿」
「まぁ見てなって!!」
僕がベットから降りると、正徳は
そのドナルドをベットに寝かせて、掛け布団をかける。
「どうだっ 拓都が寝ている様に見えるだろぉ エッヘン!」
「おおっ確かに・・って何でだよ(怒)」
「病室脱出計画だ!」
「病室脱出計画・・・?」
「病室で一人モンモンモンしている青少年を清く正しい精神に戻すためサァ」
「おぉ それはアリガタキ幸せ」
「だったら、サッサと着替えて この幸せヘルメットを装着しなっ!!」
「ラジャー★」
着替えながら
正徳のスポーツ推薦取り消しの真相を確認
正徳の親父さんの体調が思わしくなく
家業の酒屋を早々継ぐことが決まったのだそうだ。
早々に後継ぎが決まった親父さんから
欲しかったバイクをプレゼントされたってわけ♪
そのバイクで僕を迎えにきたのだ。
僕も正徳も中型の免許を持っていたがバイクまでは買えなかったから
超嬉しいはずだ。
えっ サッカーの部活しながら中型免許取ることなんてムリでしょてっ?!
意外と無理じゃないんですよ これがっ
部活しながら免許取る話は、ちょっち長くなるので
また別の機会に
今日の夜勤看護師は、裕子さん
無断外出が、ばれることは無いと思ったが
ドナルドの顔に0時まで戻りますと念のためメッセージを貼り付け
消灯前に病室を出る。
「何だよ正徳っ バイクって400じゃねーのかよ」
「ウチの親父のヘソクリじゃ 100 CC 止まりじゃねぇ」
「ん〜まっ2コ乗り出来るだけましか・・・・・」
マフラーの音とは反比例してスピードが出ないバイクにまたがり
正徳が向かった先はライブハウスだった。