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アイドルの価値9

【誘拐の巻】



一方 店の外にいる長谷川修


「愛が時間内に来ないなんて初めてだ、何かあったのかな・・・」


店の周りを確認するが、それらしいタクシーは到着していない。

左腕の電波時計に目をやると23時10分

既に梨木の言っていた繋ぎの時間 10分間を経過している。


「病院に確認したほうが良さそうだなっ・・・・」


ジャケットのポケットを探り携帯電話を探すが見当たらない。


「しまった カウンターの上に置いたままか?!」


バツが悪そうに、店内に戻る長谷川




「あっ オサムっち」店内に入ってきた長谷川修をみつけて、坂本あけみ


「長谷川君っ星野君は来たかねっ!?」梨木が声を張り上げる。


「いえっ途中、何かトラブルでもあったらしく遅れている様です。」




「それじゃ困るんだよっ、星野愛の独占特番組んで本人がイナイじゃ済まされんぞぉ」


「大丈夫です、今すぐ確認しますんで・・・」


そう言ってカンターテーブルの携帯電話に駆け寄る長谷川




長谷川の顔を見るなり不機嫌そうな藤原紀子

「ちょっとぉ長谷川ぁ、どう言う訳よぉ 愛の独占特番なぁんてぇー!!」


「紀ちゃんっ、そんな怖い顔すんなよぉ イロイロあったんだって・・・」




すると、後ろでタイムキーパーから声がかかる


『CMあけでぇ間もなくカメラ戻ります!! 3・2・1・Q』


左後ろに陣取ったスタッフのTVカメラのランプが赤から青へ切り替わる。




すると梨木が、TVカメラの前に長谷川修を引っ張り出す。


「星野愛さんのマネージャー 長谷川さんが到着です!!」


スッポンの梨木らしいアドリブで生放送中に長谷川修を巻き込む




「こっこれはこれは、梨木リポーター偶然ですね(汗)」


カンターの携帯電話に手をかけるが、突然マイクを向けられ携帯電話はそのまま




「見てらんないわね〜」


そのやり取りを見て、藤原紀子がカクテルを飲み干す。


「ちっょとぉ 梨木のおっさん」




TVカメラの前でやり取り中の2人が、その声で振り返る。


「一緒に飲むって言ったわよねぇ(怒)」


そう言って藤原紀子が梨木と長谷川をカンターテーブルの両脇に据わらせ、肩組をしだす。



「 ! ! ! 」



新橋で飲んだくれたサラリーマン調のノリに、梨木も長谷川も一瞬言葉を失った。


「両手に華ってこのことかしら♪」


そう楽しげに言った後、藤原紀子はバーテンダーにカクテルを注文


「ギムレット強めに3つほど、大急ぎでお願いね☆」







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国道246号線外苑通り交差点 手前





「あのタクシーの後ろに止めて!!」


「何なんだよ拓都ぉ」




「いいから早く」




【キキーッ】


路肩に停車中のタクシーの後ろに停止するバイク




「やっぱりだっ」後部座側の路肩にしゃがみこんだ女性に近づく



「ほっほっほっ ほしのあい さん☆」正徳が驚きで後ずさり。




「星野さん大丈夫ですか?」


「あらっ偶然 川崎君じゃない、こんな夜に散歩でもしてるの・・・・・」




「なに冗談言ってるんですか、顔 真っ青ですよっ」


「少し休めば大丈夫よぉ」




「そんな様子に見えないんですけどぉ」



「あんちゃんもそー思うだろ、病院に行ったほうがイイって言ってんだけどね 知り合いなんなら後は頼むよ」

タクシーの運転手はそう言うと、あまり関わりたくないらしく料金も取らずに行ってしまう。




(何で星野さんが拓都のこと知ってんだよ・・・・・)


拓都と星野愛のやり取りに、呆気にとられる正徳






『どうかしましたか?』


後ろから声をかけてきたのは、年配の女性


何処かで見かけたことのある顔だ。




「あらっ 先日退院した川崎君、そちらの女性は婦人科にいた佐藤さんかしら」


「あっ整形外科病棟の婦長さん?!」




「よく覚えてたわね 正解よ」


「どうしてここに?」




「ちょっと待って川崎君、偶然の再会でイロイロお話したいところだけど そう言う状況じゃなさそうね」


「佐藤さんの腕を持ってちょうだい川崎君。 そこのお兄さんもこっちの腕持って」




「えっおっ俺がですか?」キョットンとした顔で正徳が答える。


「そっ貴方よ」




「病院に連れて行くんですか?」僕が婦長さんに聞く


「もちろんよ、このままじゃマズイわ」




「やめてっ!! 私を六本木まで急いで連れて行くのよ川崎君」


正徳と僕の腕を払いながら星野さんが叫ぶ。


すると、体勢を崩し倒れそうになった星野さんを婦長が抱きとめる。




「如何しても行くつもりだろうけどぉ、脈も乱れているし このままでは無理ね」

瞬時に脈や顔色などを判断する婦長



「すぐそこに私の夫がやっている病院があるわ、一旦治療しましょう。」


「ダメよっ 長谷川もファンも裏切れないわ・・・だから行かなきゃ・・」


ふらつきながらも歩こうとする星野愛を再度抱きとめてる婦長




「判ってるわ。でも、そのままじゃファンの知ってる星野愛になれないでしょ」



『何で知ってるのぉ婦長さん!!』



「その話も後よ川崎君、早く運んで」





婦長の旦那さんが経営している病院


神谷医院に到着するなり、看護師にテキパキと指示をだす婦長さん




星野さんの左腕にはあっと言う間に2本の点滴

そして肩に大きめの注射が打たれていた。


薬のせいか、星野さんは眠ったようだ。




「さてと、これで星野さんはひと安心」


「ありがとうございます、婦長さん」




「でも、点滴2本が終わるのには早めても30分はかかるわよ」


「さんじゅっぷん」正徳がガッカリした口調で言うと




「そーねー特ダネ特捜部隊が始まって20分は経過しているから、ここから行くのは時間的にも難しいわ」


「どうして知ってるんですか? そこに行くって」




「息子から聞いたのよ、もちろん佐藤さんが星野愛だってのも病院にいた時から知っていたことよ」


「病院って拓都のいた病院なのかぁ!!」正徳が仰け反りながら驚く


「ごめん正徳っ 星野さんに口止めされてたんだよ」




「そんな話してる場合じゃないわよ、時間はどんどん過ぎてるわ」


そう言いながら婦長が病室のTVをつけ、8チャンネルに合わせる。




そこには、スッポンの梨木と歌手の藤原紀子、人気ダンサー坂本あけみが映っている。


(あれっ もう一人、男の人がいる・・・はっ長谷川さん!!)




「取り敢えず、星野さんの状況をマネージャー知らせます!!」僕は携帯電話から長谷川さんに電話をかけた。




普通に電話をかける僕を見て、正徳も婦長も驚きだ


「拓都って、マネージャーの電話番号知ってるんだ・・・」怪訝な表情の正徳






--------------------------------------------------------------------------------





バー ギロッポン内では


藤原紀子が梨木リポーターに悪態をついている。





「だからねぇ〜あんたがフライデーに乗せた記事は嘘っぱちだったわけよぉぉ・・あの2人ともただの食事相手ってわけっ、そんなわけっ、寂しいわけっ、ワケワケなわけっ」


「長谷川君っ 藤原ちゃんを何とかしてくれ!!」


「紀ちゃん、少し冷静になって」長谷川が言うがお構いなしの藤原紀子




「あ〜ん さみしーよぉ〜ぉぉ〜 ホントに寂しいんだかぁらぁ〜」


泣き出した藤原紀子を慰めるフリをして坂本あけみが耳打ちをする。


(藤原さん、今度は私がやるから泣真似しながら次のネタ考えてて・・・)

すると、藤原紀子が泣きまねをしたままウィンクする★



坂本がカンターテーブルから梨木の前にやってくると「ミルク・ザ・Dカップより緊急発表ですぅ」と右手を上げる。


「どっどうしたぁ坂本君」




突然立ち上がった坂本あけみに驚いて、つい聞いてしまう梨木


「来月っ ミルク・ザ・Dカップが歌をリリースいたしまぁーす♪」




「なっなんとぉ でっその曲名は?」梨木が坂本あけみにマイクを突き出し曲名を確認


「【恋のフィンガーテクニック】9月1日iTunesStoreで先行配信です!ヨロシクね(微笑)」




「はいっ有り難うございます、ミルク・ザ・Dカップの歌のリリースのお知らせでした。」




(ヤバッ 早くも無難にまとめられてしまった。)




坂本あけみが、横目で藤原紀子を確認すると泣いたままの状態で目が怒っている。


バダバタした店内が一瞬静まり返ると

カンターテーブル脇に置いてある携帯電話が鳴り出した。




「あっすいません、私の携帯電話です。」そう言って 長谷川修が電話を取ろうとすると


携帯電話の液晶画面に表示された着信名【星野愛】を確認した梨木が先に電話を取ってしまう。




「ハイッもしもし梨木隆弘です。」




(くっなっなんで梨木が電話にでるんだょ(焦))


僕は、長谷川さんじゃない通話相手に声が出せない。




「もしもし星野君っ ? ! 今日はバーに来ないのかね」


(どっどーする ? どーする ? どーすればイイんだ ! !)




「星野君は約束をまもる人だと思ったんだがね〜」




その言葉を聞いて僕の頭に血がのぼったからなのだろうか?


それとも潜在意識が得策と考えたのだろうか?


僕はどうしてこんな行動を取ったのか、僕自身でもわからない。


だけど必死だった。


後先なんて考えられなかったんだ。


左手で自分の鼻を摘み、声色を変えて僕は梨木にむけてこう言っていた・・・・・。





『星野愛を誘拐した・・・』



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