アイドルの価値5
【秘密の巻】
翌日は、日曜日
休日はリハビリや回診が無い、あるのは朝昼晩の3度の検温だけだ。
朝の検温の後
昨日の件を星野さんと長谷川さんに改めてお詫びしようと
1Fの病院内にあるカフェでアイスコーヒーを3人分購入して
婦人科病棟に向かう。
「そう言えば、何科の病棟か聞いてなかった・・・」
近くにあったナースステーションの看護婦さんに調べてもらう。
「星野愛さんですか?」
「そうです、スラッとした感じの人で・・・」
「星野・・・・? あっ 星野愛のソックリさんの佐藤さんねぇ」
(げっ ここでは佐藤愛さんだった・・・)
「あっあああぁー そっそう 佐藤愛さんです。」
「佐藤さんなら、病院を移るとかで先ほど退院の手続き済ましたよ」
「えっ そうなんですが?!」
(退院? こんな急な退院なんて、絶対 僕のせいだ・・・・・)
まだ居るかもしれないと思い
星野さんのいた病室に行くが、既に姿は無い
病院の正面玄関まで行くが、やはり見当たらなかった。
(携帯電話・・・)
長谷川さんにかけるが、電源が入っていないか電波の届かないエリアのメッセージ
仕方なく自分の病室にもどると鈴原が待っていた。
「おはよー鈴原っ 朝早くどうしたの? 」
「おはよう拓都ぉ! ニヒッ☆」
「なんだよぁ その笑顔 気持ち悪い ・・」
拓都の手元にあるアイスコーヒーに目を向ける鈴原
「そんな沢山のアイスコーヒー、1人で飲むのぉかしらっ」
「あっあはっ すっ鈴原が来ると思ってさっ 日曜日だし・・・」
「へぇ〜3カップあるようですが、1つ あまっちゃうじゃないのぉ?」
「へっ?! あっ あれ〜」
「あれ〜じゃないわよぉ☆」
「まっ 正徳のぉ分だよぉ」
「ふぅ〜ん」
拓都の手から黙ってカップを取って
拓都の目を窺いながらストローからアイスコーヒー飲む鈴原
「まさ君のぉ分ねぇ〜」
「あっああ そうだよぉ」
「ふぅ〜ん★」
「そうそうっ 今日はバッチリ宿題仕上げといたぜぇ」
嘘を誤魔化すようにベットに座り、何時ものノートを差し出す。
「今日はノートチェックしに来たわけじゃなかったのぉ」
「何かあったん?」
「相談したいことがあったんだけどぉ もぉイイわっ★」
「えっ なんでぇ?」
「クスッ(^^)」
「なんだよっ クスッ ってぇ〜」
「解決しちゃったから★」
「解決??? 僕に相談する事が?」
「そっ解決★」
「どーやってぇ」
「フフッ 秘密よっ」
「なんだよっ それ」
「だって、拓都も秘密にしてるみたいだから」
「秘密ってなんだよ?」
「いろいろよ・・・色々な秘密(笑)」
僕はこのとき、鈴原の【相談】したかったことを
もっとよく聞いてあげるべきだったのかもしれない。
そして
星野さんたちが病院から消えて数日後、僕は程なく退院した。
梅雨明けした夏の盛りのことだった。