アイドルの価値1
なんだよっそれ!! の巻
翌日の土曜日
朝食後に母さんが何時もの着替えを持って現れる
「拓ちゃん病棟で何かあった?」病室に入るなり母さんの言葉
「えっ別になんもないけどぉどうして?」
「婦長さんを含めて、看護師さんたちが怖い顔してナースステーションに集まってるのよ、土曜日に婦長さんがいるのも珍しいでしょ?」
「へぇ〜」
素っ気無い言葉をかえしたが、星野さんが病院にいることが知られたのかとハラハラしてしまう。
「来週には退院なんだから、安静にして毎日過ごすんだよ」
午前中に妹の詩音のピアノの発表会があるとかで
母さんは病室を出て行く。明日ゆっくり父さんと詩音とで来るようだ。
母さんの言葉が気になり、ナースステーションに様子を見に行くことに。
何時もなら、この時間には看護師の申し送りも終わりナースステーション内は落ち着いてる筈だった。
(あれっホントだ、土曜なのに看護師のほとんどが顔をそろえているぞぉ)
物々しい雰囲気ではあるが
マスコミが押しかけている様子でもなく、星野さんとは別件なのだろうか?!
婦長とベテランの美香子さんが、身支度をしてナースステーションを出て行く。
2人の顔は血相を変えているので、やはり只事ではなさそうだ。
「そんなとこに隠れて何やってるのぉ」
「うおっ!! よっ吉田さん」
「えへっ 今日退院なんですぅ(☆o☆)/」
ミニスカートの端と端をもって、お辞儀しながら吉田さんが喋る
「えっ今日だったのぉ おめでとう!!」
「ありがと川崎くん」
「吉田さんが退院したら、整形外科も寂しくなるなぁ〜」
「えへっ♪」
「身支度すんでるってことは、もう行っちゃうんだね」
「うぅうん、それが会計の手続がすんでないのぉ」
「どうして? ナースステーションから退院の書類もらえばすぐでしょ?!」
「何かあったみたいで、朝からミーティング中のまま」
「なにがあったのぉ?」
「急に婦長が来て主任の美香子さんと話しこんでたけどぉ、内容はわかんない」
「ふ〜ん・・・」
「それより会計が終わったら、後で病室に行くね 川崎くん」
「ああっ待ってるよ」
病室に戻り、程なくして看護師の青木さんがやって来る
検温の時間だ。
「青木さん 病棟でなんかありましたか?」
青木さんなら、何があったか教えてくれると思いジャブを入れてみる。
しかし、何時に無く口が重い青木さん
直ぐに話題を変えられてしまい内容はわからずじまい。
何時ものマシンガントークは不発の様だ。
青木さんが病室から出て行くと
星野さんから貰った携帯電話から着信を知らせるベルが鳴る。
着メロは【スターウォーズのダースベーダのテーマ♪】
どうやら長谷川さんからの電話ではなさそうだ。
液晶画面を見ると相手は【如月英治】と表示されている。
きっ如月英治!! (どっとうしよう?)
まさか電話に出るわけにいかないので鳴らしっぱなしにすると
そのうちに留守番電話に切り替わった。
(参ったなぁ・・・)
暫く考えてマネージャーの長谷川さんに電話することにする
携帯電話のメニュー画面からアドレス帳をひらくと
ずらずらとカタカナと漢字の項目が羅列される。
(なんで同じ項目が漢字とカタカナであるんだよ)
その中からマネージャーを探し、早速 長谷川さんに電話
「はい長谷川です。」
「もしもし川崎ですが・・・」
「おっ川崎君かっ 愛は検査で今いないだが、どうかしたか?」
「星野さんの携帯電話に着信がありまして・・・」
「あーっ 着信音がダースベーダーだったら無視していいぞぉ」
「でも相手が如月英治さんの様でしてぇ・・・」
「無視無視!! アドレスの項目がカタカナで入っている奴らは全て愛の嫌いなやつらだけだからさっ」
「嫌いってぇ如月さんを星野さんがですか・・・?」
「テレビと現場では印象が違うってこと解かるかな、川崎くん」
「はぁ〜 そんなもんなんですね・・・」
「夢を壊して悪かったカナ?!」
「じゃ カタカナの項目はダースベーダーの着メロなんですか?」
「そっ、自分の場合はサッポロ一番!!」
「だったら 漢字の場合の着メロはっ」そこまで言った時に吉田さんが病室に飛び込んでくる。
「たったたたたた たいへん!! 川崎君っテレビつけてみてぇ」
「えっ どうしたのぉ?!」
「はちっ8チャンネル!!」
言われるままテレビの8チャンネルを点けると
画面上部に臨時ニュースが表記されている。
【港区のマンション 如月英治さん宅 浴室で藤川裕子さん28歳自殺未遂 意識不明の重態】
裕子さんて、この病院の藤川裕子さん?・・・自殺??・・・如月英治のマンションで???
なんだよっ それ!!
