フェロモンの香り17
【フェロモンの香り の巻】
星野さんと長谷川さんが病室から出て行くと入れ替えで
正徳がやってくる。
「どーよぉ筋肉痛になってねーかっ?」
「筋肉痛よりも筋力が少なくなってるのに驚いてるよ」
「俺もあんなに苦戦すると思わなかったよぉ 退院したら筋トレすんぞぉ」
「ああっ 望むところだっ」
「と 言うことで、夜のトレーニングで必要な? 本日のDVDの登場ぉ」
鞄からDVDをもったいぶる様にゆっくり取り出す。
何時もはコピーされたDVDだが、今日のはパッケージングされた正規品の様だ。
「グラビアもの 持ってくるなんて目面しいじゃん」
「バカにしちゃいけないよぉ拓都くん」
「別にバカにはしてないけどね」
「確かに今までのブツより刺激は少ないかもしれない、しかし しかしだっ!! 今話題のグラビアアイドル 星野 愛 ちゃんのDVDだっ どうだ驚いたか!!」
「ほっ ほしの あいっ★」
「おっ さすが拓都くん、既にご存知だったかなっ?!」
「いやっ 最近ワイドショーで賑わしてる人だなぁ〜ってね」
この病院に星野愛さんがいるんだぜと、一瞬 正徳に話しそうになるが思いとどまった。何処からマスコミにばれるかわからないからだ。
「その通り、ワイドショーのおかげで秋葉もネットもお祭り状態なのだよ明智君」
「んーイマイチわからんのだが、星野愛さんのイメージビデオが入ってるだけなんだろ?」
「入ってるだけってっ カァーーーこれだから素人は駄目なんだよね〜」
(なんだよ素人って、じゃプロがあるっつーのぉかよっ!)
「マズは、この星野愛ちゃんのDVDは入手困難で増発の予定もないレア物なんよ」
「なるほど」
「ここ1年ブレイク後に色あせないグラビアアイドルのオーラ、そして」
「そして・・・?!」
「強烈なフェロモンの香り」
「ふぇ ふぇろもんのかおり? なっなんだそりゃ?」
「そっ フェロモン 男を虜にする香りだ!!」
「なんだよ それ?! どういう匂いがするってんだよ フェロモンって」
「具体的な匂いとかではなく五感で感じる香り、それがフェロモンなのだよ拓都くん」
「・・・正徳が違う世界にいっちゃってるわ・・・・」
「このパッケージの星野愛くんを見たまえ」そう言って正徳が僕の前にDVDのパッケージを差し出す。
パッケージ上部にタイトル【二度目に会ったら星野の恋人】と印刷されており
その下に黒のビキニ姿の星野さんが笑顔で笑っている。
写真で見ても星野愛さんの笑顔はとてもキュートだった。
「この大きな胸の谷間をよ〜く注目したまえ!!」
「胸の谷間?・・・・・・」
「ほらほらほら、じわじわと胸の谷間からフェロモンが漂ってくるのがわかるだろ?」
「ふんふん 微かに男を虜にする香りがじわじわとぉーってオイッ!! パッケージの匂いしかしねーつーのぉ ホント意味わかんねっ」
「フェロモンがどーかしたのかしら★」
病室の扉が【ガガー】と勢いよくひらくと聞き覚えのある高い声
鈴原だ。
「まさくんっ拓都をたぶらかさないでっちょーだい!! 昨日の件も含め、危ない道に進んでいるんじゃないのぉ2人ともっ(怒)」
そう行って星野愛のDVDをあっという間に取り上げる。
「ちょっちょっと、それだけは勘弁してくれよぉー鈴原ぁ〜」すがるような声で正徳
「拓都が退院するまでの間、私が厳重に保管させていただきます」
苦虫を潰したような顔の正徳をよそに鈴原は、恒例の授業を写したノートを取り出す。
「明日と明後日が土日だから、その分の宿題も入ってるわよっ
夜中にモリモリ頑張ってちょーだいね♪」
「モリモリって、何だよそれっ・・・勉強で満腹にはなりたくないね。」
「そんなこと言わないで、ほらっ夜食作ってきたんだからぁ」
差し出された弁当箱は、3段重ねの重箱だ。
「おおっスゴっ!! 稲荷飯と肉が入ってんなら頑張っちゃうかも僕」
「もちろんお肉も稲荷も大漁よっ★」
「ズルゥー拓都ぉ 1段ちょーだい♪」
『ダメェーーー』僕と鈴原が同時にかえす。
その夜、正徳と鈴原と一緒に消灯まで勉強することに
鈴原は母さんと喧嘩をした様で、直ぐに帰りたくなかった様子
正徳は、もちろん肉目当てで残っただけだ。
3人で勉強しながら正徳の言っていた
【フェロモンの香り】の事が何時までも頭から離れる事はなかった。
現実に会った星野愛さんからは、フェロモンの香りは漂っていたのだろうか?
記憶を辿るが、香りらしい記憶は思い当たらない
思い出すのは嬉しそうに微笑む星野さんの顔だけだった。