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生活保護課長・森山直樹2  作者: 泉北亭南風
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7 結婚自立する立花さん

 お盆を過ぎた頃、阿部主査から相談を持ちかけられた。


 「課長。高山団地に住んでいる立花理恵さんなんですが…近々結婚されるそうです。相手はネットで知り合った男性で、札幌市に住んでいるそうです。男性は会社員で、立花さんを養えるだけの収入があるようですので、ケース移管の必要もないんですが…問題は転居費用なんですよ。大阪から北海道…とんでもない費用になると思うんですよね。一応男性に援助してもらうようには伝えたんですが、それが難しい場合、移送費として支給することは可能でしょうか?」


 立花理恵さん…今年の3月、雇い止めのために保護を開始した30歳の独身女性である。就労阻害要因はなく、古田さんが継続的に就労支援を行ってきたケースである。


 「立花さん、結婚か…。そんなこと一言も私には言うてなかったけどなぁ…」


 横で話を聞いていた古田さんが苦笑いしている。


 「私が心配することではないのかもしれませんが、そんなリアルでの交渉が薄い人と結婚して大丈夫なんでしょうか? また舞い戻ってくるとかいうことはないでしょうねぇ…こないだの東山美香さんみたいに…」


 私は思わず唸った。


 「…うーん。立花さんには、もう一度意思確認はしておこうと思います」


 阿部主査は腕組みをしながらそう答えた。


 「阿部主査。婚約者の支援がないということであれば、移送費は理屈上支給可能です。立花さんに、運送業者3社に見積もりを取るように伝えてください。間違いなく高額になるので、できるだけ安いプランで見積もってもらうよう念押ししてください」


 「課長。わかりました。立花さんにそう伝えます」


 1週間後、立花さんの引っ越し代の見積もりが出揃った。一番安い会社で15万円、高いところは22万円を越えている。


 「課長。『ハート引越センター』が一番安そうですね。ここで決めてもよろしいでしょうか?」


 「そうですね。ただ、運送会社は引越日当日の支払いを求めてくることが多いです。ハートさんは、これまでウチから現物支給した実績がありません。債権債務者登録も必要ですし、手続き上支給は月遅れになるので、そこを了承してもらえるかですね」


 「畠山主査。申し訳ありませんが、ハートさんと調整してもらってもよろしいでしょうか?」


 「課長、わかりました。見積書に書かれている担当者に連絡してみます」


 「移送費」は、現金でケースに直接支払う場合と、業者に直接支払う場合がある。通院交通費等少額なものはケースに直接、引越し代等高額なものは、業者に直接支払うことになる。理由は明白、目的外使用を防止するためである。


 「課長。ハートさん、現物支給了解してくれました」


 しばらくして後、畠山主査が私に報告してくれた。


 9月10日、立花さんは札幌へ旅立った。転出の翌日付けで保護は廃止になる。元気にやってくれたらいいのだが…。


 「自立」にはさまざまな形がある。独身女性の場合は、意外とこういう形も多い。

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