何も変わらないから
「ん……」アンリはゆっくりと目を開ける。
「アンリ!」サナはアンリに抱きついた。何が起きていたのかさっぱり分からないアンリは少し困惑する。
「ちょっ、サ、サナ?」
「心配したんだから……」困り果てたアンリはレインの方を見る。
「何も覚えてないのか?」流石のレインも少し驚いていた。
「――それで私、眠っちゃってたの?」レインは黙って頷く。
「でも信じられない、狼が一斉に飛び掛ってきた時に、もうダメって思ったら気を失っちゃってたから」
「けどさ、アンリが無事ならよかったよ、レインなんかアンリーって言って抱きかかえちゃって」ニヤニヤした顔でレインを見る。顔を赤くするレインを見て、アンリも赤面する。
「冗談、冗談、今日はここで野宿しようよ」アンリの疲れきった顔を見てサナはここで野宿することに決めた。三人は昨日サナが作ったワニの燻製を食べて、寝るために横になった。
暫くするとレインは起き上がり川原の方へ向かう。それを見たアンリもレインの方へ歩きだす。
横目で二人を見てニヤ付くサナは少し嬉しそうだった。
「眠れないの?」そう言うと、アンリはレインの横に座る。
「ちょっとな……あの時のアンリは正直怖かった、俺が悪魔だとしたら俺も消滅してたかも……そう思うと震えて……」アンリはレインの手を握る。
「らしくないよレイン……昨日、私を守るって言ってくれた時、凄く嬉しかった。レインは悪魔なんかじゃないよ、私にとっての天使なんだから」
「アンリ……」見つめ合う二人はを赤らめる。
その時だった。枝の音が鳴り、背後に気配を感じたレインはとっさに身構える。
「誰だ!」レインは長剣の鞘に手をかけたまま様子を伺う。
「アハハ……ごめん、ごめん、二人があまりもいい空気だったから……」申し訳なさそうにサナが茂みから顔を出す。
「サ、サナ!聞いてたの?」アンリは恥ずかしそうに聞く。
「その、ごめん……」サナの顔を見て呆れた顔をするレイン。
こうして長い夜は過ぎていった。