大脱出
何本かの鍵を差し入れして、ようやく鍵の開く音がした。そして鉄格子の扉が鈍い音をして開く。
「ほら、ここから出よう」レインは手を差し出すと女の子の手を引っ張る。
「名前はなんて言うの?僕はレイン」
女の子は驚きと涙混じりに「ア……アンリ」と答える。
二人はバレない様にこっそりと裏道へ抜ける。
その時だった。
二人の前に国王が立ちはだかった。
「父上、この子を村に返して上げてください」レインは今までに見せたことのない必死な顔をしている。
「やはり、不吉な子か……。我がレインにまで何か呪いをかけたのか……」国王の顔が徐々に強張ってきている。
「違います!父上!これは僕の意思です!」
その言葉を聞いた国王は笛を鳴らす。一斉に多数の兵士が一斉に押し寄せてきた。
「不吉な子を殺せ!」兵士達は剣を抜きアンリに近寄ってくる。
兵士が剣を振り下ろし怯えるアンリを見た瞬間だった、レインの心臓が大きく鼓動したかと思うと時間が止まった。
(レイン……聞こえるか……)レインの心に誰かが語りかける。
「だ、誰?」今起きている事が理解出来ないレインは動揺する。
(私は……お前の心にいる悪魔だ……。どうだ……取り引きをしないか……?)
「と、取り引き?」
(お前と……そこの女を逃がしてやる……その代わりに……お前の……大切な物を……1つくれればいい……)
「大切な物って……」
(ちょっとした物だ……命をくれと言っているわけではない……)
「わ、わかった。約束する。だからアンリを逃がしてあげて!」
(契約完了だ……)
大きな光が全体を包み込む。しばらくすると何かが弾けたような衝撃があり光は消えた。
「ここは……」
明るさで眩んだ目が慣れてくると、目の前には青年の女性がいる。
「だ、誰?」レインは、何が起きたのか理解出来ていない。
「私はアンリ……も、もしかしてレイン?」アンリも青年になったレインを見て驚いている。
「あれ?あの木ってもしかして……」アンリは近くに1本だけ立っている大きな木に向かって走った。
今のアンリの半分くらいの所にナイフで線が入っており、アンリと刻まれていた。
「ここは何年後の世界なの……この線はパパと半年前に旅で来た際に書いたものなのに」
それを聞いたレインに悪寒が走る。
「まさか…」嫌な予感がしたレインとアンリは一度アンリの村に行くことにした。