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第73話『やれることをやる』

 今回のソルシエル・ウォーに勝つことが、この上なく不可能?


「おい。この上なく不可能ってなんだ? 今回のソルシエル・ウォーには勝てないみたいな言い方じゃねーか」


 おもわず突っかかるように言ってしまった。

 しかしマールは特に臆することもなく、さらには苦笑さえした。


「まさかエクトさん。今回のソルシエル・ウォーに勝ち目があると思ってるんですか?」


「なんだと?」


「相手はグランヴェルジュの正規の軍人達ですよ? こっちは素人同然の学生です。根本的に戦闘力に差がありすぎます。勝てるわけないじゃないですか」


 ベッドから立ち上がって肩を竦めるマールは、冗談を言っているようには見えなかった。


「ボクはエクトさんとレヴァンさんが『暴君タイラント』を相手にしてギリギリで勝っていたのを知っています。それなのに今回は二人も将軍が出てくるわけじゃないですか。どうするんです? 二人がかりでギリギリだったのに」


「わかってるよ。だからこれだけの人間を巻き込んで強化合宿なんてやってんだろうが」


「‥‥‥そうですね。エクトさんやレヴァンさんはこの合宿でうんと伸びると思います。でもボクたちは違う。将軍どころかその部下たちにすら歯が立たない可能性だってある。魔女の魔法レベルの差だって埋められない」


 随分とネガティブな発言だが、現状の的を得ているので否定する気にはなれなかった。

 こちらが力不足なのは、誰がどうみても明白だし。

 だからと言ってこんな合宿の序盤に諦められても困るのだが。


「グランヴェルジュ側の魔女たちは全員魔法レベルを最大まで覚醒させています。しかも『獅子王リベリオン』と『死神サイス』の魔女は『スターエレメント』なんていう特別な魔法も所持してるんですよね? シャルさんが『獅子王リベリオン』の『スターエレメント』対策をやっているそうですが、それだって成功するとは限らないし、『死神サイス』の『スターエレメント』なんてどんなものかも解ってないんですよね?」


 下向きで弱々しいマールの言葉に、さっきまで一発殴ってやろうかと思っていたが、急にそれがバカらしくなった。

 理由は、このマールって男があまりにも無欲だったからだ。


「軍人とやりあって形になるのはエクトさんとレヴァンさんくらいでしょう。他はボクも含めて話にならないと思います。こっちの魔女たちだって、今のところは『魔法第三階層詞サードソール』が使えるシャルさんだけが最高レベルです。魔法火力もない。戦闘力も負けている。こんな戦いに勝算なんてないですよ」


 エクトは更にマールという男に冷めた感情を持った。

 つまりこいつは100%勝てる見込みがないとヤル気が出ないタイプだ。

 可能性に喧嘩を売る度胸もない無欲なバカか。


 言ってることは正論でも、戦う気のない言い訳にしか聞こえない。

 

「つまんねぇ奴だなお前。勝てる勝負しかできないのか?」


「な! 勝てなきゃ意味がないのは事実でしょう!?」


「勝てる努力をやるだけやってダメならそれはそれでいいんだよ」


「‥‥‥どういう意味ですか?」


「わかんねーか? やるだけやってダメならいい。それは1つの結果なんだよ。所詮オレたちはここまでの人間だったってな」


「‥‥‥そうなるのが、みんな怖いから‥‥‥」


「怖いとか言ってんじゃねーって。レイリーンを見ろよ。お前との結婚をまだ諦めてないみてーだよな? お前にオレとレヴァンへ挑ませようとするのを見るに」


「それは‥‥‥」


「オレとレヴァンに勝つことが今回のソルシエル・ウォーに勝つことよりも容易に見られてるってのは気に食わねーが、まぁそれは仕方ねぇとして、それよりも少しの可能性に賭けようと必死になってるレイリーンの姿を少しは見習った方がいいぜ?」


 エクトは椅子から立ち上がった。


「あーだこーだと論ずる前に、やるだけのことやれって話だ。少なくともオレとレヴァンはやってきたと思っている。昔も今も、これからも」


「‥‥‥」


「一人の女のためにマジになってやってみろよ。今みたいにウダウダ腐ってるよりよっぽどマシになるぜ?」


「そんなこと言うってことは、エクトさんはレニーさんのためにがんばってるってことですか?」


 マールの問いに虚を突かれたが、エクトはフと笑って「いや」と一言置いてから口を開いた。


「レニーのためじゃねーよ。あいつは黙って付いてきてくれりゃそれでいい」


「じゃあ誰のために?」


「一人の女のために成り上がろうとしているバカのためさ。あいつに付いていけるのはこのオレくらいだろうからな」


「どうしてそんな」


「親友だからに決まってんだろ。どうでもいい奴のためなんかに頑張れるか。レイリーンだってお前が大好きで仕方ないからあんなに必死になってんだぞ? そのへんわかってんのか?」


「わ、わかってますよ! ボクだってそれくらい!」


「だったらウダウダ言ってねーでやれることやれよ」


 言うだけ言ってエクトは玄関まで歩いていく。

 マールは個室でまたベッドに座り込んだ。

 まだ決心がつかないのか、大きく溜め息を吐いている。

 

「‥‥‥マール。今回のソルシエル・ウォーに関してだが」


「え?」


「オレとレヴァンに賭けてみろ。それしか言えねぇ」


 それだけ言い残して、返事を待たずにエクトは部屋を出た。


次回の更新は明日です。


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