第71話『大切な幼馴染』続続
遅くなって申し訳ありません!
さて、説得と言ってもどうすっかな。
そもそもマールってどんな性格してんだろ。
ほとんど女にしか見えない容姿をしている事以外、なんにも知らない。
マールの個室へとレニーに案内されている間に、エクトはそんなことを考えていた。
レニーの歩調に合わせ、ホテルの32階にある廊下を歩いていると。
「いつまで『レイリーンさん』なんだ! 昔は呼び捨てだっただろう!」
「今と昔は違うんですよ! 僕とあなたはもう『終わった関係』じゃないですか!」
本日二度目の怒鳴り合いが聴こえた。
それも丁度近くの扉から。
レヴァンとシャルもそうだが、今日はいったいなんだってんだ。
幼馴染カップルが口喧嘩する日なのか?
あ、でもレヴァンとシャルは気のせいだったか?
「お前が勝手に終わらせてるだけではないか! 強くなってレヴァンとエクトを倒すんだ! そうすればお父様とお母様も認めてくださる!」
エクトとレニーは顔を見合わせた。
なんか物騒なこと言われてる、と。
「見たでしょう!? 僕がエクトさん相手に、どうなったか‥‥‥」
オレとレヴァンの名前が出て来ておもわず耳を扉へ近づけた。
気になるのか、レニーも耳を澄ませる。
「あなたにも勝てない僕が、レヴァンさんやエクトさんに勝つなんて、夢のまた夢なんですよ。だから‥‥‥」
「だからなんだ? 私を諦めるのか!? せめて私を拐って逃げるくらいの気迫を見せたらどうだ! 私は嫌だぞ! お前以外の男の嫁など! 絶対に嫌だからな!」
扉の内から駆け足でレイリーンが駆け寄ってくる音が聴こえ、エクトはレニーを引っ張って扉から離れた。
バタンと荒々しく開かれた扉からはレイリーンが飛び出してきた。
レイリーンがこちらの存在に気づいて顔を険しくするが、すぐさま走り去って行った。
蒼い瞳から涙をこぼしながら。
「あ、レイリーンさん! 待って!」
レニーが追うつもりのようで走り出す。
とっさにエクトの方を見てきたので、エクトは行けと顎をしゃくって見せた。
レニーは無言で頷いて、レイリーンの後を追って行った。
エクトはやれやれと溜め息を吐いて、開かれっぱなしの扉からマールの個室へと入っていく。
奥へと進めば、ベッドにへたれ込んだマールの姿があった。
「邪魔するぜ」
「え? っ!? エ、エクトさん!」
マールがベッドから弾けるように立ち上がった。




