第71話『大切な幼馴染』
「はぁ? レイリーンがなんだって?」
エクトは心底面倒くさそうに頭を掻きながら答えた。
まだ朝の7時だというのにレニーがいきなりエクトのスイートルームを訪ねてきたのだ。
朝から何事だと思って玄関で聞いてみればこれだ。
「だからレイリーンさんとマールさんが大変だからちょっと手伝ってって言ってるのよ」
何がどう大変なのか。
まったく説明されてないからさっぱり分からん。
「知らねーよ。てか、んなもん放っとけよ。ただでさえこっちはシェムゾさんでまいってんのによ」
「そう言わないでよ。エクトしか頼れる人がいないんだから」
そう言われて悪い気はしないのだが、レイリーンとマールという面識の薄い二人のために動く気にはなれなかった。
「あ、レニー! レイリーンさんの方は大丈夫? 昨日は結局練習に来なかったみたいだけど」
廊下の奥から現れたのはシャルだった。
なんだが妙にご機嫌だ。
今朝はレヴァンと怒鳴り合っているのを部屋越しに聴いたんだが、どうやら気のせいだったようである。
仮にレヴァンと喧嘩したのなら、シャルがこんなに機嫌が良い筈がない。
そして当のレニーは慌てた様子でシャルに返事をしていた。
「ぁ、ああ大丈夫よ! 大丈夫! まだちょっと時間かかるけど大丈夫。こっちでなんとかするわ。エクトにも手伝ってもらうし」
「いやオレ手伝うなんて言って‥‥‥」
ボキィッ!
「ぐおああああ―――――っ!」
なんでだああああ! なんで!
なんでコイツはいっつも人差し指を折るんだ!
トリガー引く大切な指だっつーの!
「とにかくこっちは心配しないでシャル。大丈夫だから」
「そ、そうなの? なら任せていいかな? さすがに何度も練習から外れるわけにはいかないし」
「ええ任せて。シャルは企画者なんだからそっちに集中してあげてね」
「ありがとうレニー。助かるよ」
エクトの意見はお構い無しに勝手に話が進んでしまった。
※
「ったく。なんでオレがあいつらのために動かなきゃならないんだ」
スイートルームのサービスを利用し、自室で朝食を食べていたエクトが盛大に愚痴った。
「ごめんって言ってるでしょ? パートナーなんだから助けてくれてもいいじゃない」
テーブルの向かいで椅子に座るレニーが、ムスッとしながら言い返した。
彼女はエクトのパンにバターを丁寧に塗りたくると、それを皿に乗せて差し出した。
エクトはそのパンを手にとって食べる。
「で、何があったんだ? そろそろ説明しろよ」
「うん‥‥‥実は」




