第70話『覚悟があるなら』続続
今日の21時に修正します!
「な、何しに来たの!」
まるで敵を見るような目でシャルが俺に言ってきた。
シャルにこんな目で睨まれる日が来るとは思っていなかったから、正直ショックである。
「話をつけに来た」
「え?」
ショックを胸の奥に隠してシャルに言い放つ。
そのまま俺はロイグとロミナさんの前まで歩を進めた。
足を止めて、禁断の恋を患っている兄妹と向き合う。
「あんた達の覚悟を聞かせてもらおうか」
「なに?」
ロイグが怪訝な顔をする。
「シャルから話は全部聞いている。国王さまには、俺から話をつけといてやる」
「え!?」
「レヴァン!?」
ロミナさんとシャルが驚きの声を上げた。
シャルに至っては、俺の心変わりがよほど意外だったに違いない。
当のロイグは「どういう風の吹き回しだ」と疑心の目を向けてくる。
「言っただろ。まずはあんた達の覚悟を聞かせてくれ」
「覚悟を‥‥‥」
「無事に国王さまの許可がおりて結婚できても、世間はあんた達を冷たい目で見てくるだろう。異端としてな。それに死ぬまで耐えられる覚悟はあるのか?」
「バカにするな! そんなもの最初から覚悟の上だ!」
ロイグの真剣な眼差しを見てから、俺はロミナさんの方を見た。
ロミナさんもロイグに同意らしく、深く頷く。
「永遠に、理解されないかもしれないぞ?」
「それでもいい。ロミナと一緒にいられるなら構わない!」
「私もです! お兄ちゃんと一緒なら、大丈夫!」
「そうか」
良く分かった。
二人の覚悟は本物だと。
ならばせめて、俺とシャルくらい理解者になってもいいだろう。
「わかりました。ロミナさん。ロイグ先輩」
「せ、先輩?」とロイグ先輩が気味悪げに俺を見た。
「二人の覚悟はよく分かりました。全国制覇を達成したら、必ず二人の事を国王さまにお伝えします」
「な、なんで急に敬語になったんだお前」
見直したからだよ。
同時にロイグ先輩のことを好きにもなった。
さすがに恥ずかしいから口には出さないが。
「まぁそこは気にせずに。ロイグ先輩。ロミナさん。まずはこの獅子王と死神の戦いに勝ちましょう。でないと先に進めません」
「ぁ、ああ。そうだな」
「もう無理して倒れないでくださいよ?」
俺は念を押すようにして言った。
「わ、わかっている!」
「ならいいです。さぁ、今日も特訓がんばりましょう!」
そう言って俺はロイグ先輩とロミナさんから離れ、シャルの方へ向かっていく。
「レヴァン‥‥‥どうして急に?」
「俺もシャルが妹だったとしても、ロイグ先輩と同じでお前を愛してたって、わかったからな」
「え?」
「きっと今と同じで、法律と戦ってたと確信したんだよ」
「レヴァン‥‥‥」
「ごめんな。答え出すの遅くなって」
「ううん、ありがとう。あの二人のために来てくれて本当にありがとうレヴァン!」
「バカ。礼を言うのは俺の方だよ」
「そうなの?」
「そうだよ」
ロイグ先輩を好きになれたこと。
そして、俺もシャルをどんな形でも愛してたことが分かったから。




