第70話『覚悟があるなら』続
「レヴァンならわかってくれると信じてたんです。‥‥‥やっぱりもう一度レヴァンにお願いしてみます!」
「やめろ!」
止めてきたのはロイグさんだった。
短気なイメージが強いロイグさんだったが、シャルを止めてきたその時の目は真摯だった。
「俺たちのせいであんたとレヴァンが仲悪くなってしまったら困る。もう俺たちのことはいい。あんたはレヴァンを大切にするんだ」
「で、でも! それじゃあ二人はどうするんですか?」
「大丈夫。昨日お兄ちゃんと話し合ったの。成人したら、ひっそりと一緒に暮らそうって」
「そんな‥‥‥」
ひっそりと暮らす‥‥‥。
好きな人と一緒に暮らすだけなのに、胸すら張れないなんて。
大した価値もない血のために。
こんなの、あんまりだ。
「こうやって決心がついたのはシャルのおかげだよ?」
「え?」
「あなた言ってたでしょう?『一緒にいて幸せならそれでいい』って。あの言葉、凄く納得できたの。だから、別に無理に結婚なんて考えなくてもいい。お兄ちゃんと一緒にいられれば、それでいいって思えた。あなたのおかげよシャル。ありがとう」
「本当にありがとう」
ロミナとロイグが、揃って礼を言ってきた。
シャルは、その二人の顔を見て絶句する他なかった。
二人の顔は、まるで幸せそうではなかったからだ。
外面は笑っている。
けれども内面は泣いている。
そんな切ない顔だったのだ。
無理矢理折り合いをつけて、無理矢理自分を納得させているだけの、妥協した顔だった。
そんな二人の顔に、シャルはもらい泣きしそうになった。
どうすれば、この二人の愛を救ってあげられるのだろうか?
どうすれば‥‥‥。
「やっと見つけた」
いきなり背後から、聞き慣れた声が響いた。
ロミナさんとロイグさんの目が見開かれ、シャルも後ろを振り向いた。
赤い頭髪とエメラルドグリーンの瞳。
シャルより顔一個分は高い身長の男が立っていた。
青い学生服を着こなす彼は。
「レヴァン!」
シャルはおもわずそう叫んだ




