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第68話『血という呪縛』続続

 けれども、兄妹での恋愛を経験していないシャルには、ロミナの抱え持つ悩みを本当に理解してやれるかというとそうでもない。


 血の繋がっていないレヴァンとの恋愛しか知らないシャルが何かを言ったところで、ロミナにどう響くと言うのか。


 それが分からないシャルでもなかった。

 人間は、口だけならなんとでも言えるのだ。

 それが他人事なら尚更だ。


 現にロミナさんの視線は疑心に染まっている。


 でも、それでも、ロミナさんの秘密を知った人間として、彼女の理解者になってあげたい気持ちも沸いていた。


「なんで兄妹でも愛していたって、断言できるの?」


「レヴァンだから、としか言えません。レヴァンだって、私が妹だったとしても愛してくれたと思います」


「‥‥‥どうかしらね」


 やはりロミナの反応は良くなかった。

 同じ立場に立てない以上、シャルには共感する術がない。

 だけど。


「ロミナさん。私はこのままロミナさんの理解者になりたいです」


「え?」


「誰にも言えないで、辛かったんじゃないですか?」


「そんなこと‥‥‥」


 口ずさむロミナの手をそっと握って、シャルは正面に立った。


「私はロミナさんとロイグさんのこと応援したいです」


「な、なにを言ってるのよ」


「本当です。レヴァンに相談してみます。私とレヴァンだって、16歳で結婚したいからこんな全国制覇を目指して、法律をねじ曲げようと頑張ってるわけなんですよ。だったらそれと同じように兄妹の婚約も認めてもらえるように法律をねじ曲げてしまいましょう」


「‥‥‥あなた、本当に変わってる」


「そ、そうですか?」


「そうよ。普通、私とお兄ちゃんの関係を知れば、ほとんどの人はドン引きする」


 そうかもしれない。

 それが世間というやつだ。

 理解できないものを弾くのは、いつの世にもあることだろうし、それにとやかく言っても仕方ない。


「私はロミナさんの事を知れて、本当に良かったと思っています。今日から友達ですよ!」


「と、友達って‥‥‥」


「嫌ですか?」


「あなたが嫌じゃないの?」


「愚問です。私はロミナさんのこと、受け入れますよ」


 禁断の恋をしているロミナを、それを知ってなおシャルは友達になりたいと思った。

 彼女が素をさらけ出せる友達になってあげたかった。


 どうか信じてくださいと、シャルはロミナを抱き締める。


 抱き締められたロミナはピクリと震えた。

 息さえも震わせて。

 

「シャ、シャル」

「大丈夫。私には隠さなくていいですから」

「‥‥‥‥‥‥ありがとう」


 泣き声混じりにロミナは言って、シャルの背を抱き返してくれた。


 自分の苦しい部分を理解してくれる人がいる。

 それだけのことが、どれだけ救いになるか。

 シャルは知っているのだ。







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